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連行計画

 真冬の説明を一通り聞き終えて、俺は立ち上がる。

 そう、今から俺は世界の救世主となるのだ!

 まあ、元はといえば俺の娘が招いた自体だと考えると胃が痛くなる話だけども。これからきっちり責任を取ってもらおうじゃないの。


「よし、行くぞ夏穂⋯⋯って、いない!?」

「お姉様、逃げたわね」


 いつの間にいなくなったんだ。

 まったく気が付かなかった。


「もしかしてタイムスリップしたのかしら。今の私の説明を聞いたら普通はやらないでしょ⋯⋯」

「それだけ未来に帰りたくないのかもな」

「どの口が言うんだか」

「え、何、未来の俺ってそんな酷いの?」


 これまでの夏穂の発言から所々思い当たる節はあるが、未来の俺の様子は今のいままで聞けないでいた。自分が未来でダメ人間になってるとか想像もしたくないからね。


「いや、別に特段伯父様が何かしたという訳ではなさそうだけれどね。ただ伯母様とのイチャラブっぷりを日常的に見せつけられて、お姉様は自分が蔑ろにされてると思ったのかもしれないわ」

「まじか、未来の俺ってそんな感じなの」


 まったくイメージ湧かないんだけど。でも我が家の両親を見ていたらあながちありえなくもないと思っている俺がいる。

 常日頃ああはなるまいと考えているんだけどなあ。


「ああ、なんて不憫な。未来では二の次にされて、過去では危機感を持たれないお姉様⋯⋯私が慰めに行かなくちゃ!」

「待て待て」


 考えなしに俺の机の引き出しにもぐろうとする真冬を制止した。


「夏穂がタイムスリップしたという確証もないのに行こうとするなよ」

「でもタイムスリップしてないとも分からないわ」

「お前は天才なの? それともアホなの? もしかしてタイムマシンの開発とかいうオーバーワークで脳細胞死滅しちゃったか」

「どういう意味かしら」


 バカにされて怒ったとかではなく、本気でわからないらしく、真冬はきょとんと首をかしげる。


「お前の手元に多次元世界観測装置とかいう便利そうな発明品があんだろうが! それ使えばいいだろ」

「なるほど! 気がつかなかったわ!」


 どれどれ、とよく分からない機械を真冬はいじくり始める。


「うん、お姉様はまだこの時間軸にいるみたい。多次元世界の増殖速度は私がここに来る前と同じだわ」

「そうか、それはよかった。じゃあ探しに行くか」

「あてはあるの?」

「ない。が、真冬も知ってるだろうけど、人探しが得意な人がここのすぐ近くに住んでるのだよ」


 やはり、こういうのはあいつの仕事だろう。


 ***


「――ということで一緒に手伝ってくれ」


 俺は恐ろしくも頼もしいお隣さん、上泉茜を訪ね、仔細を話した。


「やったあ! ついにあの邪魔な小娘を追い返せる日が来たんだね! そういう事ならよろこんで協力するよ!」


 大はしゃぎだった。

 はなから断られるとは思ってなかったが、ここまで嬉しそうにされると引く。

 ⋯⋯あれ、でも夏穂の交友関係って俺を狙ってる女ばかりで、恋のライバルが一人減る意味では喜ぶやつの方が多いのでは⋯⋯?

 純粋に悲しんでくれるのは神田くらいのもんじゃないのだろうか。

 あとはおもちゃが減るという理由で千秋が悲しむかも。

 さすがにちょっと可哀想だな。


 が、さすがに娘一人と世界を天秤に掛けることはできない。

 ここで漫画やゲームとかの主人公なら、「一人の女の子を悲しませてまで救う世界に何の意味がある!」とかなんとか言っちゃうんだろうけど、そこは普通の男子高校生である。

 今の生活の方が普通に大事だ。

 波風立てずにが俺のモットーだからね。


「ありがとう、助かる」

「なんのこれしき。私は夏彦くんのためなら地球破壊爆弾のスイッチだって押してあげるからね」


 胸を張って言うことじゃない。

 相変わらず頭おかしいなこの女は。もう慣れたけど。


「じゃあ見つけたら身動き取れなくして、適当に俺の家に放り込んでおいてくれ」

「わかった」


 一部分だけ切り取るとまるで誘拐の犯行計画みたいな会話を交わし、了解を得たところで俺は一安心して帰宅した。

 そして、自室にて俺は真冬から責めるような視線を送られていた。


「さっきの会話聞いてたけど、伯父様って容赦ないわね」

「何が?」

「あれどう考えても無理やり引っ張ってくる計画でしょ。帰宅を促すとか、もうちょっと手心はないの。仮にも娘でしょ」

「娘って言われても⋯⋯状況証拠が揃ってるから認めてるだけで出会って一年も経ってないし。実感も愛着もないからなあ。まあ、茜に任せておけば大丈夫だよ、プロだから」

「ああ、過去でもこんなぞんざいな扱いなんて⋯⋯お姉様ってばなんて不憫⋯⋯」


 真冬は従姉妹の不遇をただ嘆くのだった。

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