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一撃必殺

「タイマン?」


 俺は妙蓮寺の提案に疑問を感じ、思わず聞き返した。

 大軍を率いているのにわざわざタイマンを選ぶのは数の利を捨てている。

 それに奴は人をいたぶるのが趣味の下衆野郎だ。先ほどの発言との整合性がない。


「ああ。たしかにこの人数でお前をリンチにするってのも悪くねえ。が、混乱に際して俺の兵隊が女を傷付けちまっても困るんでな。それに……俺はこいつら全員合わせても俺一人の方が強いしな」

「へえ、そいつは大きく出たな」

「怖じ気づいたか?」

「いや……やろうか、タイマン」


 丸子のようにまた突っかかられても面倒だ。

 金輪際手を出してこないっていうなら、この提案に乗るしかないだろう。


「ほう、見た目に反して結構漢じゃねえか。構えろよ」


 そう言って妙蓮寺もファイティングポーズを取った。

 自ら強いと豪語するだけあってなかなかに隙がない。

 俺も妙蓮寺に言われるがままに戦闘態勢に入る。


 さて、様子見と行こうか。


「ん? 来ねえのか。じゃあ、こっちから行くぜ」


 俺が仕掛けてこないと見るや、妙蓮寺は先制を打って出た。

 何のひねりもない右ストレート。

 それだけに速さも威力もあると見える。

 先手必勝で一気に決めにきたようだ。……が、温いな。


 俺は妙蓮寺の右ストレートを払いのけ、その勢いを利用して肘鉄を喰らわせた。

 顎にクリーンヒットだ。

 脳震盪のうしんとうを起こしたであろう妙蓮寺は、たまらずその場に倒れこんだ。

 ……………………弱っ。


「う、嘘だろおい……」

「妙蓮寺さんをたったの一撃で倒しちまいやがった……」

「バケモンだ……」


 妙蓮寺は舎弟たちによほど厚い信頼を寄せられていたみたいだな。

 信頼していたボスが一発で沈んだことに対して、雑兵どもが戦慄している。


「うろたえてんじゃねえ!」


 狼狽ろうばいする集団を一喝したのは丸子だった。


「相手はたったの三人だろうが。まさかてめえら、頭がやられてただ尻尾巻いて逃げ出す恥知らずたちじゃねえよな!?」


 丸子が辺りを見回すと、不良の一軍はハッとなって顔をあげた。

 その顔には皆、闘志がみなぎっていた。

 意外だな……ただの小悪党と思いきや、丸子にこんな力があったとは。


「てめえら、するぞ……弔い合戦!」

「う、うおおおおおおおぉぉ!」


 野太い雄叫びと共に、集団が襲いかかってくる。

 これは面倒なことになった。……いや、むしろ好都合か。


「茜。丸子には手を出すなよ」


 敵の攻撃をものともせずに屍の山を築いていく茜に声を掛ける。

 せっかく柳生にトラウマを克服させるチャンスを茜に潰されたら台無しだ。


「わかってるって。元々そのつもりだもんね」

「ならいいが……生きてるよね? そこに倒れてる人たち」


 屍の山と形容したが、本当に死んでたら洒落にならないんだけど。


「大丈夫。上泉流意識根絶術、名付けて気力の鎌で気絶させてるだけだから。痛みを感じる間もなくおねんねしてるよ」

「そ、そう……」


 技名が物騒すぎて安心できないんだけど。

 まあ、茜のことだし平気だと信じよう。大層な名前つけてるけど、ただのボディーブローにしか見えないし。

 そう自分に言い聞かせたところで柳生の方を向く。


「聞いてたな。雑魚どもは俺たちがなんとかする。柳生は丸子の所へ行ってこい。過去の自分に打ち勝つんだ」

「お、おう」


 柳生はうなずきながらも足が震えている。

 大丈夫だろうか。


「柳生さん、これを!」


 そんな柳生を見て、茜は小さな瓶を投げ渡した。


「上泉、これは?」


 とっさに瓶をキャッチした柳生が尋ねる。


「ほら、昨日話してた。上泉家直伝精神高揚剤だよ。一回の服用は二錠、水無しで飲めるよ。ほら、ぐいっと」

「あ、ああ」


 茜の勢いに圧され、柳生は薬を飲み込んだ。

 さて、どうなるか。


「震え、止まった……」


 柳生の足はもう震えていない。

 本人も驚いているようだ。


「言ったでしょ、即効性の優れものだって。さあ、早く行ってきなよ」

「おう……ありがとよ、上泉」


 柳生は茜に背中を押され、戦場から離れ静観する丸子の元へと走っていった。


「すごい効き目だな。本当に変な物入ってないんだろうな、あの薬」

「もちろん。だってあれただのラムネだし」

「えっ!?」

「ほらプラシーボ効果ってやつだよ」

「あー……」


 思い込みで偽物でも本物と同じ効果が得られるっつーあれか。

 にしたって効きすぎだと思うが。


「催眠術も一緒に掛けておいたから本物と遜色ない効き目だと思うよ」

「本物あるのかよ!」


 ラムネのプラシーボ効果で済ませようなんて、ケチ性なのか。

 幼馴染の知らぬ一面を垣間見た気が。


「あ、勘違いしないでね。一応門外不出の秘薬だからやすやすとは他人に渡したりできないんだよね。体への悪影響はないけど、訓練を受けてない人が服用するとハイになりすぎて突飛な行動する可能性があるし」

「それ悪影響って言わないの?」


 ああ、茜と話してると不安になってきた。

 柳生は大丈夫だろうか、ラムネの力なんかで。

 いや、むしろ本物じゃなかったことに安堵するべきなのか。

 ああ……でも、どっちにしろ俺の胃が痛くなることには変わらないんだなって。

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