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ベッドに突入、修羅場に突入

 夕食後、就寝の準備も終えた俺と早月は部屋でまったりとしていた。

 早月は本気で俺の部屋で寝るつもりらしい。

 先ほどまでは早月の勢いに押されて部屋に上げてしまったが、よくよく考えるとこれはかなりまずいのでは。

 もちろん、俺だって性に盛んな男子高校生とはいえそれなり自制心は持っているつもりだ。

 なにか間違いを犯して、なんてことにはしない。

 だからといって年頃の異性が同室で一晩をともにするなんて、社会通念上よろしくない。

 少し前に夏穂と同室で寝泊まりしたような気もするが、親族はノーカウントだろう。

 とにかく、早月がなんとか思い直してくれないだろうか。


「早月、本当に俺と同じ部屋で寝るのか?」

「何をいまさら。元々それが目的ですし」


 早月は勝手に読み漁っている漫画から目も離さず答える。

 風呂から上がって髪を下ろした早月はいつもより幾分か大人びて見え、ページをめくる仕草すら色っぽく映る。


 前言撤回、自制心が保てるかどうかわかりません。

 これはなんとしても早月を説得しなければ。


「早月ちゃん? 年頃の男女が同じ部屋で寝るのは良くないと思うのですよ、俺は」

「もしかしておかしなことでもするつもりなんですか? 先輩は変態ですもんね」

「変態じゃねえ!」

「ならいいじゃないですか? あと、先輩にちゃん付けで呼ばれると鳥肌が立つのでやめてください」


 ダメだ、早月はいつも通りツンツンしておられる。

 が、その割にはここで寝ることに頑なだ。

 このツンデレっ娘め!


「そろそろ眠くなってきましたし、寝ましょうか」


 俺が早月をどう説き伏せるか考えていると、早月が先に就寝宣言をしてしまった。

 く、結局一緒に寝るしかないのか。

 大丈夫、俺は我慢のできる男のはず。落ち着くんだ。


「じゃあ俺は布団持ってくるから、先にベッドで寝てていいぞ」

「そんな、悪いですよ。私が布団で寝ます」

「別にいいって」

「まさか私が寝た後のベッドで私の残り香を堪能しようって魂胆ですか!? 汚らわしい!」

「俺がベッドで寝るわ」


 そんな発想ができる早月の方がよほど変態なんじゃ……という感想は心の中に留め、布団がある一階の押し入れに向かった。


 布団も敷き終わると、俺も自分のベッドに入る。

 まあ、気にしなければ早月が横で寝ていても大丈夫だ。

 それに先に寝てしまえばこっちのものだ。

 とは思ったものの、何だか寝苦しい。

 やたらと暑く感じられ、寝苦しさを紛らわすために寝返りを打った。

 すると寝返りを打った先には可憐な少女のご尊顔が――


「あのー……早月さん?」

「先輩、狭いのでもう少し詰めてください。無駄に体が大きいんですから少しは気を遣ったらどうです?」

「あっはい。じゃなくて! なんで俺のベッドで寝てんの!?」


 そこにあったのは早月の顔だった。

 せっかく布団を出してやったのにどうして隣で寝てんの。

 考えが読めなくて怖いんだけど。


「別にいいじゃないですか。それより早く詰めてください」

「狭いなら布団で寝ればいいのでは?」

「先輩は客人を床に寝かせるんですか?」

「じゃあやっぱ俺が下で寝るよ」

「私のせいで先輩が下で寝るのは心苦しいです」

「ならどうしろと」

「なので折衷案です。二人ともベッドで寝れば万事解決です」

「どこが!?」


 むしろ問題しかないんだけど。

 一番迷惑な選択肢なんですけど。


「先輩、役得ですね。かわいい後輩と添い寝できて」

「自分で言うかよ」

「自分で言う分にはいいんです。先輩はダメです」

「どうしてだ?」

「それはその……秘密です!」


 俺の問いかけに早月はなにか言いかけたのを止め、ぷいと顔を逸らした。

 なにこのかわいい生き物。


 距離が近いからか、それとも同衾(どうきん)していることへの背徳感からか、こんな何気ないやり取りがいつも以上にドキドキさせられる。

 どれくらいかというと、もう襲っちゃってもいいんじゃね? ……と、考えるほどにはドキドキしている。

 だって、自分から添い寝してくるなんて誘ってるようなもんでしょ?

 据え膳食わぬは男の恥という言葉もあるくらいだし…………いいよね?


「先輩? どうしたんですか?」

「早月……」


 俺が名前を呼ぶと、早月はこれからされることを察してかぎゅっと目を瞑った。

 そして、俺が早月に手を伸ばしかけたその時だった。


「――もう我慢の限界! さっちゃん、ここから出てってもらうよ!」


 壊れそうなほどに大きな音を立ててドアが開かれるとともに、怒気を(あら)わにしながら部屋に押し入ってきた。


「千秋。どうしたの?」


 早月は千秋の登場を受けて、上体を起こす。


「どうしたもこうしたもないよ! ていうか、なんでお兄ちゃんと一緒に寝てんの!?」

「流れで?」

「わけがわからないよ」


 その意見については同感だ。

 詰問に対して意味不明な返事をする早月に呆れる千秋だが、どうしてこうなったのかは俺にもわからない。

 となると、やっぱり流れでこうなったという説明が正しいのか。

 なんかすげえ(ただ)れた関係みたい。


「さっきからお兄ちゃんの部屋を盗聴してみればイチャイチャ……もう耐えられない」

「おいちょっと待て」

「さっちゃんは私がお兄ちゃんのこと好きなの知ってるはずなのに、どうしてこんなひどいことするの!? 」


 俺の声を無視して千秋は怒り叫ぶ。

 いくらブラコンと言えど、千秋は兄の部屋を盗聴するような悪い娘じゃなかったはずなのに……あ、さては夏穂のせいか。

 ブラコンファザコン混ぜるな危険。


「一学期もお兄ちゃんが朝早くから出掛けてると思ったら、さっちゃんの朝練に付き合ってたっていうし、私のお兄ちゃんを返してよ!」

「返してって……先輩は千秋のものじゃないでしょ。それに、ひどいって言うなら千秋の方こそ私の気持ちに気づいてるくせに毎日のようにのろけて来て何の嫌がらせ!? 私だって先輩が……一宮夏彦先輩が好きなのに!」


 早月は立ち上がって千秋の怒りに言い返す。

 それはは唐突な告白だった。

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