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アピール合戦!

 遊園地から帰った後、俺の周りである変化が起きていた。

 それは、振替休日を挟んだ月曜日の翌日、学校でのことだった。


「お父さん! お昼ごはん一緒に食べよ! はい、あーん」

「夏彦さん、週末空いてらっしゃる? オペラのチケットが余っているので、よろしければ一緒に行きませんか?」

「夏彦くんの匂い、くんかくんか、すぅはぁ」


 夏穂や愛歌が前以上にベタベタしてくるようになった。それと最近影を潜めていた茜の変態が再発した。


「弁当もオペラも遠慮しておく。あと茜はいっぺん死んでこい」

「もう恥ずかしがっちゃってえ。あ! それとも口移しがよかったの? それならそうと早く言ってくれればいいのに」

「あら、残念ですわ。じゃあ代わりに結婚式に使うチャペルの下見なんてどうです。この間私達二人に相応しいプランを見つけたのですわ」

「あ、夏彦くんの体操服発見! さっそくぺろぺろ……」

「どうしてそうなった!? あと茜は地獄に落ちろ!」


 一体何がどうしたと言うんだ。

 三人は俺が拒絶してもひっつくのをやめない。

 このままではらちが明かないので、不本意ながら目の前のいけ好かない男に助けを求めることにした。


「おい、神田! お前からもなんとか言ってくれ!」

「はいはい、ノミヤくんは女の子がよりどりみどりでようござんしたねえー。こっちは愛するミサキさんとL○NEすんのに忙しいからまた後にしてくれる?」

「くっ、このリア充め!」

「お前がそれを言うか」


 俺の恨み節に対して神田は呆れた視線を返してくるが、知ったこっちゃない。

 俺と神田の今の状況を比べれば、どう考えても神田の方がリア充だろう。


 一昨日の遊園地の帰り、新幹線の中で神田とミサキさんは二人だけの桃色空間を生み出していた。

 なんでも、ナイトショーを見終えて別れたあと、神田が告白正式に交際することとなったらしい。

 晴れて彼女持ちとなった神田と、頭を抱えたくなるような変人女たちに翻弄される俺。

 違いは一目瞭然だ。


 しかも、神田がリア充ライフのレールに乗った途端、変人たちの攻勢は苛烈さを増すと来た。

 あ、さてはこいつら、神田とミサキさんが恋仲となったことに感化されたか!

 とすると、俺が今困ってるのは神田のせいじゃねえか。


「ということで、神田。やっぱりお前が責任取れ」

「話の繋がりが見えないんだけど!?」


 ふん、貴様の理解など俺は必要としていないのだ!

 神田には必ずやこの状況を打開してもらうぞ。


 俺は作戦のために、一瞬気を抜いた神田の手元からひょいとスマートフォンを抜き取り、我が手中に収める。


「すでに人質は取った。このスマホを返して欲しくば要求に従え」


 人じゃないから正しくは物質ものじちだが。そんなことはどうだっていい。

 ミサキさんとのL○NEに忙しいというのなら、通信手段を奪ってしまえば言い訳もできまい。


「チッ」


 神田は為す術がないと理解するやいなや、ようやく重い腰を上げて三人の説得に乗り出してくれた。

 神田は俺にミサキさんとの甘い時間を邪魔されたのがよほど腹立たしいのか、こちらへの抗議かのように指で机をとん、ととん、と叩きながらも、三人へと弁舌を振るう。

 最初は三人とも聞く耳持たずといったようだったが、やがて茜が夏穂と愛歌に耳打ちすると、さっきまでの密着っぷりが嘘のよう夏穂と愛歌は自分の席に戻った。

 それを見届けた茜も、何故か上機嫌で自分の教室へと帰って行った。


 放課後、俺は憤慨した。

 神田の野郎、大人しく従ったかと思えばその実、俺を売ってやがったのだ。

 そのせいで今も俺のスマートフォンにメールやL○NEのメッセージやらがひっきりなしに届いている。

 内容はというと、心当たりのない悪事に対して責任を取ってあれしろこれしろといった脅迫じみた物だ。

 主に証人は神田。というか全件だが。

 今も要求の一つとして、夏穂と腕を組んで下校させられてる。


「同年代の美少女とこんな密着できるなんて、役得だねお父さん! どう? ドキドキする? なんなら触っても……いいよ」

「自分で美少女とか言うなよ……」


 夏穂はこんなゴリ押しで俺がオチると本当に思っているのだろうか。

 いや、ドキドキはするけどね。

 例えば、すぐそこの電柱の影にいるストーカーさんと血みどろの惨劇を繰り広げるんじゃないかと肝を冷やしたり。

 っつーことで、夏穂はあまりにも肉食系過ぎてときめかない。そもそも娘なので女として見てない。

 それどころか、父親と結婚するために過去に遡って同年代であるところをオトそうしたり、邪魔なライバルを始末しようという発想が、若干ヤンデレ染みてて怖いとさえ感じる。

 でもまあ、さっさと元の時代に追い返すつもりが、いつの間にか馴染んじゃってる自分が一番怖いかな。

 けれど、恐怖の対象は今も俺の弱みにつけこみ、腕を掴んで離さない。

 くそ、神田め。


 それにしても、神田はどうやってあの場を収めたのだろうか。

 彼奴の説得を聞く限りおかしなところはなかったが、他に違和感があるとしたらやけに机を叩いて……あ。

 まさか、モールス信号か何かか!?

 どうしてもそんなもん使えるんだよ……。

次回本編更新は少し間が空くと思います。何卒ご容赦ください。

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