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自重しない元勇者の強くて楽しいニューゲーム  作者: 新木伸
14.海賊と女神と女あそび
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船首の女神 「霊力、いただきたいんですけど~」

 いつもの上甲板。いつもの青空。そしていつもの大海原。


「オリオーン……! ごはん、できたわよー!」

「ああ。いま行くー」


 そう答えた俺は、自分が乙女像のケツを撫で撫でしていたことに、ふと気がついた。

 いかんな。

 最近、船首で海を見ていると、無意識のうちにケツを撫でてしまっている。


 それだけ、船首にある乙女像――フィギュアヘッドの造形が素晴らしいからなのだが……。


 この乙女像――。

 単なる乙女というよりは、神的な雰囲気を感じる。

 誰が作ったのかもわからないが、モチーフは人間ではなく、神的な存在なのではあるまいか? 

 たとえば――「女神」であるとか。


 俺の知る「女神」といえば――。転生時に会ったJK女神が、まず真っ先に思い浮かぶ。

 あれにはカタチというものがなかった。ぴかぴか光る球体でさえない零次元の光点でしかなかった。

 このフィギュアヘッドを彫りあげた彫刻家が、〝神〟の姿をどのように幻視したのか――。それはこの木の彫像に、余すところなく写し取られている。


 この世のものとも思えない美しい少女。神のケツを持つ少女として――。


 なでなで。


 ケツを撫でる手が止まらない。アレイダがもう一回くらい呼びにくるまでは、こうしていようか。


「あのう、あんまりお尻ばかりを撫でられていますと。そのう、困ってしまうのですけどー?」

「俺はべつに困らんが」


 急に話しかけられたが、ケツを撫でているときの俺は、つまり仏像を彫ってる彫り師みたいなもので、明鏡止水の心境に非常に近いところにあるので、驚いたりはしない。


 ちなみに、ありのまま、今起こった事を話すと――。


 乙女像が喋りだした。

 手から伝わる感触も、固い木の感触から、柔らかな肉の感触に変化している。


 乙女像はあいかわらず船首に固定されている。

 姿勢のほうも、足ピーン、の状態で固まったままだ。


 しかし……。なぜ突然、喋りだしたのだろうか? 驚きはしないが疑問には思う。


「オリオンさんがー。神木から切り出された木で彫られたこの彫像にですねー。霊力を込めて、撫でつづけておられたのでー」

「霊力? しらんな? 煩悩なら込めていたかもしれないがな」


 撫でながら、このケツが生身だったらなぁ……。と思っていた。祈っていたといっても過言ではないかもしれない。

 そういう意味では、祈りとともに霊力とかいうものを込めていたかもしれない。


「それで、ついたったいまー。神霊値が閾値を突破しましてぇー♪ ぱんぱかぱぁん♪ 受肉することが可能となったわけでぇす♪」

「そうか。よかったな」


 まあよくはわからんが、こいつはつまり心霊的存在で――。しかしいまは肉を持った存在でもあるということだ。


 しかしさっきから、尻の感触が柔らかいんだよな。

 柔らかいといっても、ぐっと押しこむと脂肪の下に筋肉の存在を感じる。骨もある。いい尻である。まさしく神のケツ。


「あのう、慌てて出てきちゃったのでぇー、受肉が中途半端なんですよぅ。この姿勢から動けなくてぇ……。もうすこし霊力を頂けると助かるんですけどー?」


 霊力っつーたってな……。意識して注いでいるわけではないのだし。

 尻はこっちに向いているわけだから、べつにそのままでもいいんじゃないか?


「えー……? 困りますよぅ。わたし、人間の世界に来たらー。ぜひ! やってみたいことがあるんです!」


 さっきから聞いてもいないのに、乙女像は、ぺらぺらと喋る。

 しかも声に出していないのに、心の中の声で会話ができてしまえる。


「あっ。それはわたしー。これでも神族ですからー。脳内シナプスの電気の動きを読み取って思考をトレースするぐらい、カンタンですからー」


 馬鹿っぽい喋りかたなのに、いきなり専門用語が飛び出てくる。

 神的存在には、あのJK女神も含めていくらか知りあいもいるのだが、知的レベルと知能レベルが噛みあっていないことが多い。

 アタマわるいのか、良いのか、わからないってことだ。


 しかし、このアホの子っぽいしゃべりかた……。

 あのJK女神を思い起こさせる。


「ジェーケーってなんですかー? あ? ググリました。女子高生のことですねー。オリオンさんは、他にも女神のお知りあいがいらっしゃるんですねー。お友達多いんですねー」


 そういや霊力を注ぐんだっけな。


「はい! おねがいしまぁーす」


 んじゃ、手早く、どばー、と、注いでやるか。

 煩悩を込めて撫で撫でしていて霊力が溜まったのなら、たぶん、こっちの方法でもいいはずだ。むしろ大量でさらに良いはずだ。


「んじゃ」


 俺は手早くズボンを下ろした。ケツは目の前にある。


「ばっ――バカっ! なにやってんの! ズボンも――パンツまで脱いで!」


 罵る声に振り向けば――。アレイダが顔を赤くして突っ立っていた。


 しかし……。なぜ赤くなる?

 もう何度も見ているだろうに。見るだけでなく、触ったり、もっとスゴいこともしていただろうに……。

 なぜ下半身露出程度で赤くなる?


「ひとりでするなんて! わたしたちがいるのに――!! し、失礼ね! お――終わったら! きなさいよ!」


 なにか激しく勘違いをされてしまった。

 乙女像は船首に固定されたままだし、彫像だと思ったのだろう。ついさっきまでは彫像だったわけだしな。


 まあそれはともかく――。


「えっ? あっ、あのっ――? ちがくって――? そういうのじゃなくて、霊力を――?」


 うんわかってる。すぐに注いでやっから。


 俺は身動きもできずにケツを向けてる乙女像を、ご使用になった。

 えっほ。えっほ。

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