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自重しない元勇者の強くて楽しいニューゲーム  作者: 新木伸
12.バニーさんといっしょ
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バニーさんのヒミツ 「ウサギって年中発情期だって知ってました?」

 どこまでも続く青い空。

 水平線には積乱雲が成層圏まで立ち上がっている。


 ゆっくりとしたリズムで、船の揺れが繰り返される。それを心地よく感じながら、俺はパラソルの下のデッキチェアでくつろいでいた。


 片手を横に伸ばす。

 リクライニングチェアをフルフラットにして、バニーさんは寝そべっていた。

 そのこんもりと盛り上がったヒップを、俺は無造作に撫でにいった。

 量感のあるヒップは、素晴らしい手応えだった。

 撫でるだけでなく、揉んでみたり、ぷすっと指先を突き立てていたずらしてみたり……。


「あ。わたし。ウサギさんがいいです」


 急になにを言い出すのかと思いきや――。サイドテーブルに置いてあったリンゴのことだった。


「俺がやんのか?」


 お尻にいたずらしているんだから、当然でしょう? という目を、バニー師匠はしてくる。


 まあいいか。

 俺はナイフを手に取ると、リンゴを剥きはじめた。

 ウサギさんね。


 俺はべつに料理も家事もできないわけではない。ただやらないだけである。

 手際よく、八匹ほどこしらえる。


 尻を俺の手に与えたまま、バニー師匠は、リンゴをしゃりっと囓った。


「なあ。あんた。――聞いていいかな?」

「なんですかー?」

「ええと……」


 前々から聞こうと思っていたことの一つが、彼女が転生者かということだった。

 〝あそびにん〟というのは、とある国民的RPGのジョブだったりする。もちろん同名のジョブがこの世界にもあるのは偶然だろうが、彼女が「自分はあそびにんです」と俺に言うときには、なにか秘められた意味がそこにあるような気がしていた。


「JKっぽい女神に、知り合い、いたりする?」


 俺は直接聞くかわりに、そう聞いてみた。


「あー、はい、SNS友達ですけど、なにか?」


 SNSときたか。


 SNSというのは、言い得て妙だった。

 そして〝既読〟とかいう状態は、俺にも理解できた。


 なにか、どこか遠くのほうから、ぼそぼそとつぶやいているような〝声〟が聞こえてくることがある。意識を向けると、あちらがなにを言っているのかわかる。だがはっきりと聞いてしまうと、向こうにもこちらが聞いたということが伝わって、いわば〝既読〟の状態となる。

 俺は〝未読〟にしたままで、なにを言っているのか判別をつける技を編み出していた。


 いや。まあ。わざわざ編み出さなくてもいいわけだが……。

 いちいち相手してると、ウザイ。


「え? 既読つけてやってんの?」

「かわいそうじゃないですかー」

「いや。かわいそうでもないだろ。ウザイだろ。人の人生を覗き見しておいて、あーだこーだと勝手なことを垂れて」

「ていうか器用ですね。未読にしたままでお告げを聞きとれるとか」

「お告げ?」

「いわゆる世間一般的には、あれは〝お告げ〟ということになっていますよ」

「お告げって、巫女とかが神から受ける、アレのことか?」

「はい。アレのことです」

「そっかー」


 なるほど。世間一般では、あのつぶやきは、有り難がられているわけかー。

 しかし、つぶやきのほとんどは、なんの役に立たないものなんだが。

 ただ単に外野がおもしろがってコメント垂れているだけなのだが。ほんとうに役に立たない「つぶやき」がほとんどだ。


 自分の持っているスキル一覧を、ざっと確認してみたら――。

 ああ。あった。〈神のお告げ〉Lv3。


「男性が巫女スキルを取得していることにも驚きべきなんでしょうけど。貴方の場合、いちいち驚いたって、はじまりませんからねー」


 なにか褒められている。

 俺が〝師匠〟と認めたこの女性から褒められていると、なにやら嬉しい。

 だがどうせなら、エッチのほうで褒められてみたいものだが。

 俺が彼女のことを師匠と認めたのは、その方面においてのことだからだ。


「なんですか? オリオンさんは、わたしのことが、気になるんですか?」

「そりゃ、まあ……」


 俺は鼻の頭を掻いた。


「わたしもオリオンさんには、興味がありますねー。なんでそんなに強いんですか?」


 それは勇者だからな。対魔王の決戦兵器である勇者が強くなかったら、大変なことになるだろ。

 魔王もいないこの平和な世界では、ほとんど無駄スペックなわけだが。


「うーん……」


 俺が勇者であることを、バニー師匠に話すか?


 彼女は鑑定スキル持ちであるが、俺に対しては使用してきていない。

 鑑定スキルが自分に対して向けられたときには、それとわかる。だいたいのケースではレジストしたことを知ることになる。相手が大賢者でもなければ、まずレジストが可能だ。


「ふつう、どんなにタフっていったって、三ラウンドか四ラウンドが限度なわけですよ」

「ん?」

「それがあなたは、まるで底なし。昨夜だとか、六人に対して何回ずつでしたか」

「あ、強いって、そっちのほう?」


 俺は勘違いしていたことに気がついた。


「なにかスキルとか持っています? 性的な方面で」

「いや。なにも?」

「じゃあなんであんなにコンティニュー可能なんですか」


 コンティニューときたか。

 やはりどうも、彼女は転生者である可能性が……。


「コンティニューの件については、じつはちょっとだけズルしてる。回復魔法の応用で、ちょっとな」


 俺は悪さを見つかってしまった男の子のように、笑った。

 さすがに六人を相手に悶絶して白目剥くまで責め立てるとなると、途中で一回二回は〝補充〟しないともたない。


「応用?」

「体の一部分で、代謝――細胞分裂を加速させる」


 細胞を急速に分裂させて傷口を塞ぐのと、原理的には、同じ操作だ。

 ただ男子の体内の〝一器官〟に限定してあるというだけのことで――。

 〝一器官〟というのは、つまり、アレである。

 アレを生産するアレな箇所のことである。二つ付いてる。


「それ、理論上は可能であっても、現実的には不可能なはずなんですけど」


 回復魔法は、神聖魔法と呼ばれるカテゴリに入る。魔力の行使を高次元の存在――いわゆる〝神〟に委ねるわけだが。

 その〝神〟というものは、お堅くて杓子定規なものと相場が決まっている。


 おいあのさー、ちょっと撃ちきっちまったんでー、ザーメン補充してくんねー? ――とかいうお願いが、通用するはずもない。


 俺の交渉している〝神〟は、ちょっと特殊だからな。

 転生時に出会ったJK女神だ。たぶんあの女神を信仰している神官は、この世界にはいないだろう。


「いろいろと融通の利く神様なんでな」


 バランスブレイカーとなるチート能力をバンバン与えて、魂をほかの世界に移植するような神だ。神聖魔法の「使い道」程度のことで、がたがた騒ぐはずもない。


「それで、どのくらいなんです? 本当に底なしなんですか?」

「ん? 気になるか?」


 俺はバニー師匠に、そう聞いた。

 彼女の目は潤みはじめてきていた。そういう話をしていたから、そういう気分になってきてしまったか……。あまり色気のある話題でもなかった気がするが。


「試してみる気があるなら、つきあうが?」


 俺はどちらともつかない答えを返した。


 彼女は答えるかわりに、俺に流し目を送ってきた。

 ぞくぞくっと、思わず「立っち」してしまうぐらいの、色っぽい流し目だった。


「ねえ。オリオンさん? ウサギって……、年中発情期だって知ってました?」

「お、おう」


 彼女の答えは明白だった。

 俺は彼女をお姫様抱っこで抱き上げて、寝室に連れて行こうとしたが――。


 その場で押し倒されてしまった。

 ワイルドで興奮して発情期となったウサギさんに、俺は激しく、それこそ凄まじいほど、激しい勢いで――〝抱かれて〟しまった。


 ワイルドなウサギさんも、よがった。

 ここ。「よかった」ではなくて、「よがった」のほう。濁点付きのほう。

 すっごく、いがった。


 そして俺は、「底なし」であることを、彼女に対して証明しきった。

 何度も何度も何度も何度も、超絶テクで搾られたが、俺の泉は尽きることはなかった。

 回復魔法の誤った使い方ですべての波状攻撃を乗り切った。


 いがった……のは、確かなのだが。


 もうちょっと、しばらくの間は致したくない、という感じになってしまった。


 ふう。賢者だ。

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