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自重しない元勇者の強くて楽しいニューゲーム  作者: 新木伸
8.ふたつめの地 古の王都にて

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50/161

エピローグ 「わたくしは永遠に貴方様の女です」

「行って……、しまわれるのですね」


 夕陽の中。俺たちは別れを惜しんでいた。

 憂いを秘めた顔で、王女は俺を見つめる。

 その純白のドレスがオレンジに染まっている。


 このまま、さらって行きたい衝動に駆られるが……。

 いっぺん、手ひどくフラれているので、二度は言わない。


(ねえなんでオリオン。さらっていかないの? なんで自重してんの? あれって本当に本物のオリオン?)


 うちの娘の失礼なほうが、失礼なことを言っている。

 あとでオシオキだ。今晩は厳しくオシオキだ。


「姫さま。いいにおい。」


 うちの娘の野生生物のほうは、気に入っているらしい。

 こっちはご褒美をやろう。今夜は凄くご褒美だ。


「おまえを残していくのは、正直、気になるが……。ま。大掃除はしておいてやったしな。あといくらか掃除は必要かもしれんが」


 腐っていたのは宰相と騎士団長の二人だが、その周辺にも少々腐敗は広がっている。

 だがそちらは姫の仕事だろう。50年がかりの大事業が、数年未満に短縮されているはずだ。

 それが――俺が、俺の女にしてやれる、たったひとつのことだった。


「オリオンさま。ご安心ください。どこにおりましても、わたくしが貴方様の女であることは変わりのない真実です」

「ああ……、うん……、その……、まあ……、なんだ……、困ったことがあったら……、俺に言え。俺が駆けつけてきてなんとかしてやる」

「お手を煩わせるようなことはないと思いますわ。だって、嫌われたくないですもの」


 王女は、にっこりと花の笑みを浮かべる。


「ねー。ねー。オリオン。オリオン」

「うるさいな。いまいいとこなんだよ。黙ってろ駄犬。――ハウス」


 俺はいま、めまぐるしく考えていた。

 もうすこし、この王都に逗留していようかなー?

 もう一ヶ月近く留まっているが。もう一ヶ月ぐらい、おかわりで――。


「ねー。ねー。オリオン。オリオン」

「うるさいって。駄犬。ハウスしろハウス」

「ねー。空気読んだほうがいいわよー?」


 ん? 空気とな……?


 姫は俺の前で微笑みを絶やさずにいる。


「お近くにいらしたときには、またお越しください。――絶対ですよ?」


 姫はあの夜、俺に言った。

 俺が彼女を連れて逃げたら、彼女は俺をだめにする悪い女になってしまうと。

 では、俺が彼女のもとに留まったら……?

 俺は彼女をだめにする悪いヒモになってしまうのだろうか。


 うん。まあ。そうだな。

 だめな〝ヒモ〟になる自信は、かなりあるなっ。

 まっしぐらだ。賭けてもいい。

 アレイダが飼ってやったら、駄犬になってしまったのと、おなじぐらい確実だな。


 わかった――という印に、俺は微笑み返した。


「ああ。……また近くにきたときには、抱いてやる。部屋の窓を開けて待っていろ」


 王女に見送られつつ――。

 俺たちは馬車に乗った。


 御者台に座る俺の隣にやってきたアレイダが――。


「ねえ? オリオン? こんど、どこに行くっ?」


 俺は、手を持ちあげ、まっすぐに、指し示した。


「この夕陽の沈む方角へ――」

第2部(書籍第2巻)完了でーす。

定期更新はしばらくお休みとなります。

次の更新再開は、3月末~4月末ぐらいの予定です。

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