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「ゴブリンスレイヤー? ②」

 俺たちはクザクに案内されて、山の木々の間を移動した。


 クザクは本来の高レベル・レンジャー職のスペックを遺憾なく発揮していた。先行する彼女を追うのは、うちの娘たちでもしんどそうだ。


 クザクは憔悴していたさっきまでが嘘のように活力を取り戻している。

 俺が犯しまくったせいである。

 単に犯していただけではない。性行することでHPとスタミナとMPをすべて回復させる特殊なスキルを、俺は取得していて――。俺のそれらを、それぞれを分け与えて、満タンにしてやっていた。

 いわゆる房中術系のスキルだ。サキュバスか女忍者でもなければ取れないスキルだが、もちろん勇者は取ることができる。外道勇者としては、当然の嗜みだ。


 彼女はもう平気そうだな。

 木々を飛び渡ってゆく尻を眺めつつ、俺はそう思った。


 精神に刻まれたダメージというものは、MPの多寡だけで計れるものでもない。

 さっきまでの彼女は、相当にヤバかった。

 目が普通でなかった。行動もまるでおかしかった。高レベルのレンジャー職が、道端でばったり誰かに出くわして驚いているとか、普通ではない。


 あのまま隣町まで行かせていたら、二日間のあいだに、焦燥と憔悴と、そして絶望とで、彼女の精神は完全に破壊されていたことだろう。


 女を落ち着かせるには、セックスに限る。――これは俺の体験から得た結論であるが。


 なにしろ急ぎであったし、あまり可愛がってはやれなかったが――その効果は大きかったようだ。

 彼女は完全に常態に復帰していた。

 動揺は完全に収まっている。有能なレンジャーとして働いてくれそうだ。


 ったく。こんないい女を持っているとか。ニセ勇者のやつ。けしからん。

 もう俺の女になったがなーっ!

 ニセ勇者の名前は――。なんてったっけ?

 モー、モーなんとか? ……モモタロウ? いや違ったな。まあいいか。どうだって。


 ああ。〝クザク〟っていう名は、なんだったのか、いまふと思い出した。

 日本語語であれば、〝孔雀くざく〟と書く。

 やっぱ鳥だな。


 勇者の名前はモモタロウがどうとかいってた気がする。これで猿と犬がいたら、まんま、桃太郎だな。

 そういやゴブリン、漢字で書いたら「小鬼」とかになりそうだな。


 鬼退治に行って返り討ちにあう桃太郎か……。くっそ使えねえ。


 もうすぐゴブリンの里が近いのか――。

 森の中で、一匹。――出会った。


 そいつが、気づいて、目玉がぎょろりとこちらに向く――あたりには、もう致命傷がぶちこまれていた。


 クザクの投擲したダーツが目玉に刺さる。

 スケルティアが長く伸ばした爪で、その首を刈る。木々のあいだを糸を使ってスパイダー渡りをするスケルティアは、高機動を欲しいままにしていた。

 立体環境における、蜘蛛つええ。


「まってまってーっ! 置いていかないでー! どっちだか! わかんなっちゃうーっ!!」


 どたどた地面を走って駄馬が、そう叫んで必死についてくる。

 索敵もなければ、疾走系も軽業系もない。地べたを、どたどたとブザマに走るしか能のない駄馬である。


 カンスト手前のクロウナイトであるアレイダだが、職業クラスには得手不得手がある。ナイト系はガチ物理系なので、その種のスキルには、一切、縁がない。


 ゴブリン密度があがってきた。里が近い証拠だ。


 やがて開けた場所に出た。

 草木のない剥き出しの地面が、広場になっている。そこに十数匹のゴブリンが見えた。


 ほとんど声もあげさせず――。すべてが、倒れた。


 視野のなかのすべてのゴブリンが倒れている。

 だが表にいたのは、全体数からすれば、ごくごく一部。

 洞窟の入口が真っ暗な口を開いている。そちらのほうが、ゴブリンの住処の本体であった。


 すべてをほぼ瞬時に倒したから――。

 一切の警告は、洞窟内に届いていない。


 俺たちは、そのまま、洞窟内部へと侵攻した。


 殺した。殺した。殺しまくった。

 女――メスも殺す。子供も殺す。

 繁殖部屋らしき場所にいた、乳児だか胎児だかなんだかわからないものを、すべて踏み潰して殺す。

 皆殺しだ。

 ゴブリンが人間に対して行うのと、ちょうど同じように――俺たちはすべてのゴブリンを等しく皆殺しにした。


 俺はほとんど手を出していない。

 クザクも数体は倒しているが、実際には、それほどの数を殺してはいない。


 ほとんどのゴブリンは、うちの二人の娘の手にかかっていた。


 たかがゴブリン。アレイダとスケルティアの二人で殲滅できてしまう。

 ホブゴブリンの傭兵がいようが、ロードに統率されていようが、シャーマンが呪ってこようが、ゴブリンはやはりゴブリンである。

 うちの娘たちの敵ではない。


 まず鍛えかたからして違う。

 強さ自体は、同等の上級職であるクザクたちと、それほど変わらないかもしれない。

 だがうちの娘たちは油断しない。助けてもらえるなんて、間違っても思わない。――そう躾けた。


 そして敵に情けを掛けない。いったん〝敵〟と認識すれば、徹底的に殲滅し、破壊し、蹂躙し尽くす。――そう躾けた。


 さらにうちの娘たちは、憎しみなどでは殺さない。

 もう条件反射的に敵ならば殺す。機械的に殺す。殺すことを意識しないうちに殺している。――そう躾けた。

 殺意だとか憎しみだとか。そんな揮発性の有限の心の資源を消費しない。

 そのように躾けた。


「グレーチェル! ――シズル!」


 奥の奥まで侵攻していたときだった。突如、クザクが叫んだ。

 部屋の奥の薄暗がりの中――。醜いゴブリンのオスたちの合間に――白い肌が見え隠れしていた。


 クザクが、戦鬼と化した。


 このときばかりは、うちの娘たちを差し置いて――クザクが大殺戮を繰り広げた。


 クザクの仲間なのだろう。その二人の女を犯していたゴブリンたちは、どれがどれともわからない断片となって、床に散らばった。

 最後の一匹など、五体をバラバラにされる寸前まで、女を貫いたままでいた。女の体内にナニだけが残っていた。


「だいたい。……終わったか?」


 俺はそう言いつつ、広間の隅に隠し扉を感知して――そちらに近づいていった。

 蹴破ると、小部屋が一つあって、そこに怯えて震える大きな体のオスと――、メスが数匹と、あと子が数匹いた。


「やはりロードがいたか」


 俺は巨大な棍棒を、軽くふるって、ぺちゃんと潰した。

 メスと子は、俺の脇を駆け抜けて、逃げだして行ったが――。


「一匹も逃さない」


 クザクが、すべて始末した。


「これで全部終わったな。アレイダ。スケルティア。――その二人の女性を保護しろ。だいじょうぶだ。生きてはいる」


 一人は人狼族の少女。もう一人は蛮族と思われる、やたらと逞しい体つきの女性――。

 二人とも意識はない。意識がなくても、犯され続けていたわけだ。


 あー……。犬と猿。

 うーむ。やはり、これは……桃太郎だったか?


「あと……? 男の人も……、いるんじゃなかったっけ?」


 アレイダが言う。

 ああ。そういや、そうだったっけか。


 男なんて、ゴブリンに捕らえられて、生きているはずがないのだが――。

 女であれば、そして美人ないしは美少女であれば、死ぬまでは犯されつづけてもらえるわけだが――。


 ああ。そこ【そこ:傍点】にいた。

 あったあった。


 桃太郎は、鍋になっていた。


 ゴブリンの大好物の鍋がある。獣肉も煮込むが、材料として最高とされるのは、人間の肉であるらしい。


 獣の肉を食うように、ゴブリンは人の肉を食う。

 人とゴブリンの戦いが、殲滅戦となる理由である。


「さて。帰るか」


 ニセ勇者が鍋になっていたのを見届けて、わだかまりなく、すっきりしゃっきり、気分よく、引きあげようとすると――。


「彼も……、助けて」


 クザクが言っていた。


 いや無理だろ。鍋の中味になってるし。半分以上はゴブリンどもの腹に収まってるし。そのゴブリンどもは、たぶん、床に堆積する肉片になってるし。


 だいたい。俺の女になったというのに。まーだ、前の男なんかを引きずっているのか。


 まあ……。俺の女の頼みだ。


「スケ。――モーリンを呼んでこい」

「おりますよ。ここに」


 大賢者の格好で、モーリンが立っていた。


「いちおう……。やるだけはやってみますが」


 大賢者も、自信がなさそうに、そうつぶやいた。


    ◇


 結局、その後……。

 ゴブリンどもの肉片をかき集めて、たぶん内臓はこのへんだったろ、的な部分を集めて山を作って――。

 それに残っていた鍋の中味も加え――。

 肉を綺麗にそぎ落とされて捨てられていた、白骨も、一人前の本数を集めてきて――。


 そして〝蘇生〟の呪文を使った。


 大賢者の魔力をもってしても、ここからの蘇生は不可能なはずだった。


 ……が。


 なんと、蘇生してしまった。


 あとでステータスを見て、納得だったのだが……。

 このニセ勇者――。桃太郎だか、モータロウスだか、なんかそんなような名前の男は、LUKの値だけ、異常なほどに高かったのだ。


 LUK――つまり、幸運値だ。


 おかげで蘇生することはできたものの――。鍋にされて食われたことによるトラウマは、深刻なようだった。


 なにしろ、狂乱して喚いていた、その叫びの断片からすると、どうやら生きながら鍋に突っこまれたそうで――。食われている最中にも、まだ意識が残っていたそうで――。

 そりゃトラウマにもなるだろう。ちょっとは同情した。ちょっとだけな。


 冒険者としての復帰は無理だろう。

 勇者騙るんじゃねえぞ、と、小一時間くらい説教してやりたいところだったが。

 近くの冒険者ギルドに押しつけて、俺たちは立ち去ることにした。別れ際まで、ついぞ、正気が戻ったようには、見えなかった。


 まあ、男のことなんか、ぶっちゃけ、どーでもよくて……。


 問題は〝俺の女〟となった、三人のことだ。


 そう――三人だ。

 クザクは俺の女にしていたが、残り二人。

 人狼種族の年端もいかない犬娘と、大猿の血を薄く引くクォーターの褐色の女丈夫と――。

 どちらの美女も美少女も、おいしく、頂くこととなった。


 これも人助けだ。

 ゴブリンたちによってたかって輪姦された忌まわしい記憶を、完全に上書きしてやるまで――、なんと、三日三晩もかかった。

 そのあいだ犯し尽く――〝愛して〟やったおかげで、二人はトラウマに苦しめられることもなくなった。

 かわりに、俺は、めちゃくちゃ惚れられてしまったが……。


 さすがの俺も、三日三晩の乱交――〝愛〟の儀式は、きつかった。

 終わったあとには、もう一週間ぐらい、女は抱きたくない――と、思ったりもしたものだったが。

 同じ日の夜にアレイダやスケルティアやモーリンと寝た。別腹ってあるもんだな。


 三人は、冒険者を続けてゆくらしい。

 〝俺の女〟であることは、そのままだが――。思うところあって、彼女は俺たちとは別行動を取ると言ってきた。彼女たちの意思を尊重して、俺は許可を出した。


 彼女たちは、自らを鍛え直すと言っていた。

 あれは自分たちの弱さが招いた事態であると――。


 まあ、その通りなわけだが。

 うちの娘二人は、職業クラスの上級具合もレベルも、彼女たち三人と似通っていたが――。しかし、彼女たちよりも、圧倒的に強かった。


 いまのままでは、俺の女でいる資格がないとか、かわいいことを言ってきた。

 まあ彼女たちは、前衛、中衛、後衛――と、バランス良く揃った上位職のパーティであるから、三人でも各地で無双することができるだろう。

 油断さえしなければ。

 あと、〝お荷物〟であった、ニセ勇者などが足を引っ張らなければ――。


 そして――。ギルドに預けた、廃人ニセ勇者のほうは――。

 風の噂では、その後、冒険者へと復帰したそうだ。ゴブリンだけを専門に狩るハンターとして復讐を続けているらしい。

作品のレーティングを「残虐描写あり」に変えました。

人肉鍋と、バラバラ死体。ちょっとエグいなー、と思ったもので。


三人の娘たちは、しばらく別行動です。しばらくは出番ないかもー?

クザクは「風車の矢七」ポジだと思ってください。

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