大所帯 「はじめまして、アイラです」
キャラ紹介回です。長いです。
いつもの昼すぎ。いつものリビング。
「ねえ、オリオン――」
いつものソファで俺がくつろいでいると、アレイダのやつが話しかけてきた。 しっかし、こいつ、俺のこと呼び捨てにしてくるよなー。
まあ呼び捨てといえばスケルティアもそうだが、あれは「おりおん」だし。なんとなくニュアンスが違う。
こいつの場合には、普通にタメ口における呼び捨てのほうだ。
「なによ? 変な顔して、にらんできたりして?」
「べつに。おまえも昔は〝オリオン様〟とか言ってきて、かわいかったときもあったのになー、と、ふと思ってな」
「む、昔のことでしょ――!?」
「それがどうしてこんなになっちまったんだろうなー、と。世を儚んでいてな」
「こんな、ってなんなのよ? どーゆー意味よ?」
「だいたい、おまえな、奴隷のくせに、ご主人様を呼び捨てに――」
「――それはもう買い戻したでしょ? わたし、自分で自分を――。もうオリオンの奴隷じゃないよね? 忘れたの?」
「そういや、そうだな」
俺はそう言った。
ふむ。確かに。
「……とすると、おまえは俺のなんなんだ?」
至極当然の疑問を口にする。
アレイダのやつは、顔を赤らめて――。
「こ……、こいび……、かなっ?」
「ん? なんて言った?」
ごにょごにょ言っているので、ぜんぜん、聞こえねえ。
俺は耳に手を当てて、聞き直した。
アイベックユアパードン?
「仲間……、よ!」
アレイダは、そう大声で叫び返してきた。
……日和りやがって。このやろう。
「ああそれで思い出したわ。――最初の話なんだけど」
「最初の話もなにも、おまえはまだなにも話をはじめていないが?」
「オリオンが変な目でにらんでくるからでしょ?」
「ふん。意気地なしめ。――で、なんだって?」
「意気地なしってなんなのよ!」
「だからなんなんだよ? 用がないなら、寝るぞ? もしくは犯すぞ」
俺がそう言うと、アレイダのやつは――。
「え……? あっ……。……する?」
とろんとした目になって、ちょっとポーズを取って、ミニスカートの裾をぴらっとめくってきた。
「おまえは本当になんの用で来たんだ?」
一秒で発情するのは、まあ俺的にウエルカムではあったが、いちおうそっちを聞いておく。
「あっ、そうだった」
正気に返ったアレイダは、居住まいを正して、ミニスカートの裾も直して、お澄まし顔で俺に向かってきた。
「アイラさん。――紹介して」
「……は?」
俺は思わず聞き返していた。
紹介もなにも、仲間として、もう一ヶ月以上も、一緒にいるわけだが……?
「リムルちゃんやクリスさんは、毎日一緒に稽古してるし、ごはんも一緒に食べてるけど。でもアイラさんって、ずっと、こんそーるるーむ? ――とかいう部屋で座りっぱなしでしょ? ごはんだって食べにこないし」
「ハイエルフは霞を食うって、ほんとだったな」
いま俺たちは空の旅を続けていた。
俺たちは浮遊島を失ったが、超古代のコアユニットは無事だったので、それを前から持っていた船に移植した。
海の旅で使った帆船は、いま空も往ける飛行船へと進化していた。
……だが、魔法に熟達した人間が常にコントロールしていないとならない仕様はそのままで、アイラはずっとコアと繋がったまま瞑想を続けているのだった。
「アイラさん。ずっとあそこに座ったままだし。おしゃべりもできないし。あたしがあの部屋に遊びに行くと、オリオン、怒るし」
「おまえが変なスイッチを押すからだ」
「しらないわよ。手をついただけよ」
「天罰砲をぶっ放しやがって。下に島があったら――いや大陸があったら、吹き飛んでたぞ?」
天罰砲というのは、コアに直結させた超兵器で、船の下方に向けて設置してある。
なぜそんなものがついているのかというと――。男のロマン的な?
ちなみに発射スイッチには、カバーをつけた。
ガラスのカバーをブチ割って押さない限り発射できないように改修した。ロマン度が増した。
「射精砲のことは、どーでもいいから」
「おまえ……、いま……、なんつった?」
俺は目を見開いて、問い返した。
「みんな言ってるわよ。男のロマンだとかいって、溜めてからどぱっと出す巨砲が大好きなのって、やっぱアレのメタファ? とかなんでしょ?」
俺は手を振って、あっちいけ――とやった。
「おまえに言っても無駄だな。女子供にはわからん」
「ほら。女と子供にわかんないっていったら、やっぱ、アレじゃない」
ほんとにおまえ、あっちいけ。
「だからアイラさんがぁー」
ああ。そっか。そうだっけな。
「じゃ、ちょっと待ってろ。連れてくる」
俺は話題を終わらせるために、立ち上がった。
◇
船を海の適当なところに着水させる。久々に大海原を進ませる。
空を進むときはともかく、海を進むだけなら自動航行が可能だ。もともとは魔法船なので、自動航海機能もついている。
そしてアイラを連れてリビングに戻ってくる。
「ええと……、皆様、はじめまして的な……? ええと……、アイラです」
アイラは皆に、ぺこりと頭を下げた。
これまで数回、顔を合わせたり、一緒に戦ってたりはしていたものの、そういえば、きちんと対面したことはない。
俺個人は、瞑想している彼女のところに足繁く通い、睡姦ならぬ瞑想姦をエンジョイしていたわけだが、ほかの皆は、これがほとんどはじめてとなるわけだ。
たしかに皆にとっては、仲間というよりは、知人程度の関係だろう。
そしてアイラにとっても……。
挨拶の言葉が〝はじめまして〟であっても、おかしくはない。
「もー、オリオンってば、ひどいわよねー! ずっと閉じこめっっきりで」
「いえ。オリオン様は、よくいらしてくださいますので、そんなに寂しくはないんですよ」
言ってから、アイラは「あっ」と口許を押さえる。
自分の言ったことの意味に気付いた顔だ。
「もー……! オリオン~っ……!」
アレイダのやつが、じとっとした顔で、俺をにらむ。
なんでこいつは、文句を垂れているのだ?
いつ誰のところに通おうが、俺の自由ではないか。
そんなアレイダを見て、アイラはくすくすと笑っている。
前に思念での会話を多くやっていた。モーリンクラスになると思念の会話も完璧で、伝えるべき情報だけを完璧に選別することができるのだが、俺の場合には、ちょっとだけ余計な情報が混じってしまう。余計な情報というのは、たとえば〝アレイダ〟に関する話をしているとき、俺があいつのことをどう思っているのかという〝本音〟の部分などだった。
アイラは「オリオン様はアレイダさんのことが、ひどくお気に入りなんですね」と言ってくる。……まあ、間違いではない。気に入っているのは確かだな。いちばんアタマのおかしいアレイダとのセックスが、いちばんキモチイイからなーっ!
「えーと……、アレイダ・カークツルスです。なんか……、あらたまって自己紹介すると……へんな感じね」
しきりに髪を撫でつけながら、アレイダは言う。
「おまえがやろうって言いだしたんだろうが」
「そうだけど……」
「続けろ」
俺が言うと、アレイダは自己紹介を続けた。
「えーと、わたしは、いちばん最初からオリオンのところにいます」
「違うだろ」
「ええーっ? そうでしょ? だってスケさんの前から、わたし、いたんだし?」
俺はお茶の用意をしているモーリンの尻に向けて、顎先を振ってみせた。
「あっ……! モーリンさんが……、最初です。でもモーリンさんは別格っていうかぁ……」
なんかごにょごにょ言ってる。
「おいモーリン。順番飛ばしされてるぞ」
「だからわざとじゃないって……」
俺に呼ばれてモーリンはこちらを向いた。
「モーリンです。大賢者などと呼ばれておりますが、ここではただのメイドです。オリオン様の身の回り一切をさせていただいております」
モーリンについては、じつはその正体が世界の精霊だとか、おなじくメイド姿でちょろちょろくっついているオプションのコモーリンとは、じつは精神を共有する同一人物であるとか――。色々とあるのだが。
それは他の娘たちも知らないことだし、ここで説明することでもないな。
「あっ、わたし、職業は聖戦士で――
アレイダの職業は、正確にはギガンティック・聖戦士だ。盾系の上級職が、なんと、巨大化もできるようになった。
星界の魔物あたりにも通用する、うちの盾役だ。
「おまえの番。もう終わってるからな」
「ひっどーい!」
俺とアレイダのやりとりに、アイラはくすくすと笑っている。念話を交わした相手だからな。かなわんな。
「つぎは……、すけ、の、ばん?」
きゅるんと小首を傾げたのは、スケルティア。
二つある目と、額に四つある単眼とで、俺を見つめる。
スケルティアは、もともとハーフ・モンスターの孤児だった。
俺の財布を盗んだことをきっかけにして、俺が引き取ることになった。生まれてからずっと一人で、人に疎まれるハーフ・モンスターとして、盗賊まがいのことをして生きてきていたが、うちにきてからはだいぶ丸くなったと思う。
もう一人じゃないしな。
兄弟姉妹みたいな関係の娘たちがいるし、俺もいる。
「つぎは、スケだぞ」
俺がうなずき返してやると、都合六つの目を、一斉にアイラに向けた。
「すけは、すけるてぃあ、だよ」
「スケさん、もう進化したでしょ」
「ちがた。いまは。あらくね。これがほんたい。」
スケルティアは〝人〟の擬態を解いた。
人間形状の脚が、パーティクルラインに沿って展開していき、大蜘蛛の下半身となる。
普段は折り畳まれて、人の脚の形を取っているのだ。物理的に体積が合わないような気もするのだが、なにか、魔法的なあれやこれで、帳尻を合わせているのだろう。
頭蓋骨を掴む要領で、ぐりんぐりんと頭を撫でてやっていると、スケルティアはうっとりと目を細めて気持ちよさそうにしている。
そんな様子を、アイラも目を細めて見つめている。
「ええと……、私などが自己紹介とかおこがましいのですが」
クザクが控えめに声をあげる。
ふむ。これは仲間になった順番ではなくて、俺の女になった順番のほうでやっているわけか。
じつは仲間になった順番でいえば、クザクよりもミーティアのほうが先だ。しかしミーティアは、最初は馬車を引く馬だった。働き者の賢い馬が、じつは呪いを掛けられた美少女なのだと判明したのは、ずっとあとになってのことだった。
「主のために、密偵みたいなことをやってます。特技は呪い系です。天井裏が定位置なので、私のことは、あまり気にされなくてよろしいかと……」
もじもじ、そわそわと、落ちつかなげにクザクは言う。本人の言うとおり、普段は天井裏に隠れている。だがいまは皆と一緒に顔を並べている。ついに天井裏にいないと落ちつかなくなってしまったのだろうか。
つぎはミーティアだ。
「ミーティアです。オリオン様の馬車を牽かせていただいております」
「……?」
ミーティアの自己紹介に、アイラが小首を傾げる。
そういえば、魔大陸を出たときから馬車は牽かせていないな。
「昔、悪い魔女に魔法をかけられまして、それで馬になって、国を追われて売られていたところを、オリオン様に拾っていただきました」
「……はぁ?」
アイラは要領を得ない顔。
まあ、いきなり「馬です」とか自己紹介されたってな。
「ちょっと見せてやれ」
「はい」
俺が言うと、ミーティアはうなずいた。まず服を脱ぎはじめる。
もともとかかっていた呪いの魔法を解析、修正して、自由意志で変身のできる変化の魔法にコンバートしたが、変化するのは本人だけで、服と装備品は対象外だ。
綺麗に畳みおえた服の上に、ミーティアは、二つ折りにしたパンツをのせた。
準備が完了する。
「お待たせしました」
ミーティアは言う。
個人的には、すごくエキサイティングな時間だった。 もういっぺん、着て脱いでもらってもいいくらいだ。
女の子の脱衣シーンというのは、なかなか見られるものではない。だいたい俺が自分でむしってしまうし、半脱ぎ半ずらしで結合っていうことも多い。
モーリンとの行為はしっぽりと落ちついた展開になることが多いが、なんでか、脱ぐところだけは、あまり見せてもらえない。
こんど無理にでも見てみっかなー。
「では、変わりますねー」
ぼふん、と、煙があがる。煙の奥の人影が、ぐぐっと体積を増す。
煙が晴れたときには、白い毛並みの牝馬がそこにいた。
「ヒヒーン!」
「まあ……。なんて綺麗な毛並み……」
アイラが言う。
「こんど遠乗りいたしません?」
背中をさすりながらアイラが言うと、ミーティアは喉の奥で声を出しながら、首をすり寄せていった。
いまは大海原だから、あとでどこか陸地でも探すか。
「えーと、ミーティアのつぎは……」
俺はバニー師匠を見た。
俺の女にした――というか、彼女の場合には、俺が彼女の男にされたという感じなのだが――。
彼女とヤッた順番よりも、加入自体が早かったのが、もう一人いるのだが……?
「コモーリンです。モーリン様のお手伝いをしています」
「つまりオプションだ」
「オリオン。その説明、たぶんみんな、わっかんない」
アレイダが言う。
コモーリンは、じつはモーリンと意識を共有する存在だった。
体が二つあるだけで、意識のほうは一つなのだ。以前、モーリンの〝里〟に行ったとき、世界樹の枝に生る無数の〝実〟を見た。その実の一つ一つに、年齢がまちまちのモーリンたち《たち》が入っていた。
その秘密が、スペアボディの存在だった。
本体である世界樹の意識を接続している限り、どのボディであっても、それはモーリン自身なのである。
このことは、まだ皆には話していない。
べつに秘密というほどのことでもないのだが、わざわざ話すことでもない。俺だけが知っていればいいことだ。
「コモーリン……、です」
みんなの視線を受け止めていたコモーリンは、おずおずと、お辞儀をした。
「~~~~! ……!! ~~!!」
アイラがなにかエキサイトして、飛びついていった。
コモーリンを、ぎゅーっと抱きしめる。
そういえばエルフは長命種族だった。ということは、〝幼女〟というものは非常にレアな存在なのだろう。
抱きしめられたコモーリンのほうは、困った顔になっている。
……ん?
――これはスタンドアローンのほうだなぁ、と、俺はそう判断した。
さっき、たどたどしく挨拶をしたほうも、いま困った顔をしているほうも、どっちもモーリン自身ではなくて、この年相応の幼女の体に芽生えた〝個性〟なのだった。
自我とか自己認識とかは、どういうことになっているのか、当事者でない俺にはよくわからない。
外道を自他共に認める俺だが、唯一、コモーリンにだけは手を出していないのも、おもにそれが理由だった。
さすがの俺も、この年齢の少女を抱くわけにはいかない。
せめてあと三年、いや二年……、せめて一年……。
そんな思いを目線に込めて、貧相な胸やらくびれの少ない腰回りやら、小さいヒップやらを見ていたら……。
コモーリンが、俺の目線のしっぽを捕らえてきた。
「……コモーリンは、こどもをうめる、からだです」
いきなり、ぼそっと、ぶっそうなことをつぶやいた。
その一声に、おー!! と、皆は沸き返る。対して俺は苦い顔をしている。
せめて、あと二年……、いや一年……。
「えーと……、つぎは、だ、だれだったかな?」
「あ、逃げたこいつ」
アレイダがなんか言っている。無視だ。無視。
「つ、つぎはバニー師匠だったなっ!」
「はい。オリオンさんにこまされちゃった順番だったらー、わたし、ですよねー」
意味深な流し目を向けられる。ぞくっとなった。思わず勃っちしてしまいそう……。
彼女は、船を手に入れて大陸を出るときに、大武闘会で知り合った。バニーさんの姿で司会進行をしていたが、なぜかそのあと、娼婦たちにまじって俺に抱かれにやってきた。
試合の解説をやっていたとき、ずっとお尻を撫で回していたのだが、それが上手だったから、とのことだ。
「ねえ? 前から思っていたけど、なんで師匠なの? バニーのほうはわかるけど」
アレイダが言う。
「よし。じゃあいまから俺とおまえとバニー師匠とで3Pしてみっかー!」
「あっ……! なんとなくわかった! 実践しなくていいっ!!」
バニー師匠は、男も女もイケるクチ。アレイダも何度か巻きこまれて、そのテクニックを思い知っている。
「つぎは、おまえだな。――エイティ」
俺はロングヘアの美少女に顔を向けた。さらさらストレートの金髪が美しい。装備も白青黄のトリコロール勇者カラー(ガンダムカラーともいう)で揃えたので、神々しい感じの勇者オーラを放っている。
「なぜ泣く?」
勇者オーラを放つ美少女が、えぐえぐと泣いているので、俺は聞いた。
「いえ嬉しくて……。昔だったら、絶対、ボクなんて、スルーですよね……」
「誰だそんなことをするやつは?」
俺はそう聞いた。アレイダあたりから、じとーっと湿度の高い視線が向けられてきていたが、無視だ、無視。
もともとこいつは、単なる村勇者で、男で、さらに密航者であった。
手元に置いて磨いてやったら、ずいぶんと光った。
美少女になって、さらには国勇者にもなった。
海に放りこんでサメのエサにしないで、本当に良かったと、そう思っている。
「あっ……、そういえば、ボク、このあいだ大陸勇者になりましたー」
なんですと!
「そういえば浮遊大陸も〝大陸〟の一つでしたね」
大賢者モーリンが言う。
勇者という職は、特殊な職だ。
村勇者からはじまり、街勇者、国勇者、大陸勇者と、ランクアップしてゆく。
クラスチェンジをする場合には、ランクアップに見合う英雄的行動が必要であり……。
「なるほど……。たしかに、〝大陸〟ひとつを、救ったっけなぁ」
だから大陸勇者へのランクアップ条件を満たしたわけか。
ちなみに大陸勇者のさらに上にある――〝真の勇者〟に関しては、一つの世界に一人きりという制約がある。
つまり俺だ。
「ボク! がんばります! もっともっと頑張って、きっと〝真の勇者〟にもなります! だから見捨てないでください! 師匠!」
「お、おう」
いやぁ……。俺がいるから、〝真の勇者〟には絶対になれないんだけどなー。
さて、お次は――。
「おいリムル。……リムル」
「……はっ!」
ゆらゆらと船を漕いでいた竜娘は、はっと、目を覚ました。
「自己紹介」
「じこしょーかい、とは、なにをすればよいのだ?」
「そのまんまだ。自分を紹介するのだ」
「なるほど」
竜娘は、アイラに向くと、ちっぱいを張った。
「我は竜魔将ドラゲドスが娘――リムルなるぞ! 最大最強の竜人族なのじゃー!」
リムルは魔大陸奥地に棲息する「竜人族」という種族だった。竜種の因子と、人の因子を併せ持つ、割と最強の側に位置する種族である。
生まれつき力を持っているので、傲慢だ。実際にリムルの場合、負けたことがないのだろう
うちにきてからも、このあいだまでは、わりと、ナチュラルボーンの猛威を振るっていたが……。
「ちょぉ~っと、リムルちゃん? 最強はないんじゃないかなー?」
「あと最大もないのではないかな?」
アレイダとクリスが、聞き捨てならじと、リムルに詰め寄る。
かたや純正巨人族。かたや巨人化可能な怪物。のお姉さん二人
アレイダのほうは、この前までリムルとの稽古でヒーヒー言っていたクチだが、ギガンティック・聖戦士にクラスチェンジしてから、強さ関係が逆転した。
空中から、謎の巨人の手が出現した。
その巨大な手が、ぐわし、と、リムルの頭を鷲掴みにする。
ギガンティック・クルセイダーのスキルだ。
アレイダは巨大化せずとも、巨大化した自分の体の一部を、好きな場所から呼び出すことができるのだ。
どういう理屈になっているのかは、知らない。巨人の手を呼びだした場合、元の手と大きいほうの手と、手が二本あることになるのだが……? ま、いっかー。
その巨人の手で、リムルの頭を、ごおりごおりと、すり減らす勢いで撫で回す。
「リ、ム、ル、ちゃぁ~ん? 最強は、だれかしらー?」
「う……、うううっ……」
さらには巨人族の隊長、最近の俺のお気に入り――クリスが、眼力を放っている。
風圧さえ感じる眼力だ。そしてクリスの背後には、巨人のオーラが立ち上っている。
竜人族のリムルは変身することができる。
竜魔将モード――〝第二段階〟になったときの大きさは、巨人に比べると、膝下あたり。
サイズ比でいえば、人間と愛玩犬くらいの関係だ。
「さ……、最強は……」
リムルは観念しきった顔で、目を閉じて叫んだ。
「アレイダとクリスなのじゃー!」
「最強の一角として紹介されて面映ゆい。私など。まだまだ未熟者」
最後の一人、クリストファーがそう言う。
クリスはこのあいだの浮遊大陸でお持ち帰りしてきた巨人族の女だ。
巨人の国を救ってやった「褒美」に、なにがいいかと問われた。俺の答えはもちろんひとつで――。
「女」――と答えた。
四将が殺し合いをはじめたので、いちばんいい女だったクリスをさらってくることにした。
誰が俺についてくるかで殺し合いをするような女というのは――、それはそれで良いものであるが、うちの女たちとは馴染まないと思うのだ。
その点、クリスはいい。じつにいい女だ。
自分が軍法会議で死刑になりかけたときにも、俺に罪をなすりつけることもなければ、「助けて」の一言さえなかった。俺が巨人の国を立ち去るときにも、後始末をするために残ると言った。
そういう、いい女だからこそ、かっさらってきたわけだ。
「さて……。これで全員だが。……アイラ?」
「ひ――ひゃい! 聞いてます!」
アイラはコモーリンを膝の上に抱えこんで、トランス状態に陥っていた。
「じゃ、全員の紹介が終わったところで、あらためて、アイラの歓迎会をやるかー」
俺は言った。
「あっ。パーティですか?」
アイラが素直に喜ぶ。ハイエルフかつ王族なので、パーティ大好きなのだろう。
「うん。まあパーティといえば、パーティだな」
「?」
アレイダが「あー」という顔をして、頭に手をあてる。
あいつはわかったほうだな。
ほか、数名、真っ赤な顔になっているやつ。――クザク、エイティ。
意味がわかって、喜んだ顔をしているやつ。――バニー師匠、ミーティア。
意味がわかっていなくて、ぽかーんとしているやつ。――スケルティア、リムル、クリス。
いつもと変わらぬ無表情なやつ。――モーリン、コモーリン。
「じゃ! やるぞー! てめーら服を脱げーい!」
俺が叫ぶ。アイラは頭上に「?」と「!」をいくつも浮かべ、目を白黒とさせている。
総勢――一〇人。
一〇人目となる俺の女を含めて、大歓迎、大乱交パーティが開かれた。
なんと11Pだ!
あ――いや。コモーリンは見学だけなので、正確には10Pだが。
キャラ紹介がわりに、全員紹介回をやってみたら……。終わらない……。終わらない……。
10人になってましたー。