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自重しない元勇者の強くて楽しいニューゲーム  作者: 新木伸
21.巨人の国で鯨狩り
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エピローグ

「それではこの者に勲章を与える」

「いらん」

「ではこの者に領地を――」

「いらん」

「で、ではこの者に騎士の位を――」

「いらん」

「な、なになら受け取るというのだあぁ!」


 四将カドミラルが取り乱している。


 まったく――。

 星クジラ討伐を祝う式典に出て欲しいと、地べたに額を擦りつけて頼んでくるから、出てやったというのに――。


 退屈なこと、このうえない。

 なんもいらんと、ゆーてるのに。くだらないものばかり押しつけようとする。


「おまえはどれだけのことをしたのか、わかっているのか? 我ら巨人族は、おまえの功績を未来永劫語り継いでいかねばならない。それだけのことを、おまえはやったのだぞ?」


 炎将カドミラルの言葉に、他の三将も、うんうん、と、うなずいている。


 大勢の下っ端兵士たちも、首を縦に振っていたものの、その動きはどうにもぎこちない。


 この国の者にしてみれば、四将の全員が揃っているというのは、凄いことらしい。

 なにが凄いのかというと、全員が顔を合わせて殺し合いがはじまらないことが凄いらしい。おまえらどんだけ仲が悪いんだ?

 まあ、四将全員と5Pをキメた俺としては、四人揃って一セットなのだが。


 ちなみに威厳ある建物などは、みんなぶっ壊れてしまったので、式典は更地で執り行われている。それも残念感を醸し出す役に立ってしまっている。


 あー。はよ帰りてー。


「で、では――我ら四将の上に立つ、大元帥としての地位を――」

「いらね」

「だから! なにならもらってくれるというのだあ――っ!」


 あー。はよ帰りてー。

 だけど、なにかもらわないことには、帰させてもらえないようだな。


「そこまで言うなら、女をよこせ。それならもらってやらないこともない」


 あと小さくなれる腕輪もセットだな。

 巨人のままだとアレ……はできるからそっちは問題ないが、衣食住の面倒までみきれない。


 俺がその条件を出した、その途端――。


 殺し合いがはじまった。

 いや。殺し合いにしか思えない喧嘩がはじまった。


 炎将、氷将、風将、地将――が、取っ組みあい。

 全員が、「私がわたしがわたくしが我が」と、褒美で差し出される役を勝ち取ろうと、殺し合いにしか見えない勢いで大喧嘩をはじめた。


「おまえも苦労するな。アホな上司を持つと」


 俺は傍らに立つクリス隊長を見上げた。もんのすんげー、見上げた。


「はは……。なにも言えないな」

「ところで――」


 俺はふと、聞いてみた。


「――おまえは混じらなくていいのか? あのケンカに?」


 こいつとは、けっこういい仲になったと思っていたのだが――。

 奪い合い(奪われあい?)に参加するほどではなかったのかと思うと、ちょっと寂しい気もする。


「おまえは、ここを去るのだろう?」

「ああ。旅をしている」

「おまえを失った我が国を、おまえのかわりに支えていかねばならないからな」


 こいつはいい女だなぁ。

 自分が死刑になりかけたときにも、俺に罪をなすりつけもしなければ、「助けて」の一言も言わなかった。

 別れるときにも、黙って俺の後始末か。


 ………。


 俺は隣に並ぶアレイダを見た。


「なんでこっち見るのよ?」

「いつもぎゃーぎゃー言うだろ。おまえが」

「好きにすれば?」


 俺がなにを聞こうとしているのか、すべて承知している。それでこの答えだ。

 こいつもいい女になったな。


「よし、決めた」


 俺は、クリスに言った。


「おまえ、もらってくわ」

「え?」


 口をぽかんと開いて、カワイイ顔になっているクリスを、俺はひょいと肩に担ぎあげた。


「えっ? あっ――! ちょっ――! 私には役目が――! 任務がっ!」


 しらん。褒美は女だ。それ以外は受け取らない。

 そしてこの国の女なら、おまえが一番いい。俺は自重しない。そう決めている。


 四将たちは殺し合いにしか見えない喧嘩に夢中で、ぜんぜんこっちに気がついていない。兵士たちも四将のバトルロイヤルに大熱狂。


 俺はクリスをかついで、すたこらさっさと、艦に向けて走った。


「オリオン! まったくもー」

「マスターが楽しそうでなによりです」

「おりおん。たのしい? うれしい? いいよ。」

「オリオン様! またお友達が増えてうれしいです!」

「師匠ーっ! まってくださーい!」

あるじ!」

「ダーリン♡」

「オリオン様! どこまでもついてまいります!」

「ぴゅーい!」


 全員がついてくる。

 そこにまじって、なんか変な生物もついてきた。

 なんだか変な生物が飛んできて、クリスを運ぶ俺のまわりを、くるくるとつきまとう。


 なんだこいつ?

 流線型で平たい飛行生物で……。なんかどっかで見たようなフォルムなんだが……? どこで見たんだっけか?

 まあいいか。


「オリオン! つぎはどっちに行くの!」


 艦に乗りこむとき、アレイダが聞いてきた。

 俺は、答えた。


「――もちろん! 太陽の沈む方角に!」

巨人の国編完結です。

しばらく、二週間から1ヶ月ほどお休みをいただいたあと、週一ぐらいのゆっくりとした更新をしてゆきたいと思っています。(他の締切を片付けてきます)

こんどこそー! こんどこそー! 定期更新っ!

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