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自重しない元勇者の強くて楽しいニューゲーム  作者: 新木伸
20.巨人の国でジャイアントキリングする
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巨人の国の隊長さんは美人だった 「最強とやらを試させてもらおう」

「冒険者、というのは、お前たちか」


 酒宴もたけなわ。

 エイルとアミィをお馬さんにして、尻をぺちぺちと叩きながら、ほれー進めー、とかやっていた俺は、入口のほうから響いてきた、凜とした声に顔を向けた。


 切れ長の目で、長い髪の、美人さんがいた。

 声が聞こえたときから、美人だと思った。その予感は当たった。


 鎧を着て完全武装だが、その下の体も素晴らしいことがわかる。鎧の金属の上を這うストロベリーブロンドの髪が素晴らしい。


「おー、美人ー」


 俺は思わずそう口にしていた。

 自分でも、相当、酔っ払っていると思う。


 アルコールは毒の一種と認識されるようで、毒耐性や毒無効のスキルを発動させれば、一瞬でしらふに戻れるのだが、酩酊状態をあえて楽しむようにしている。


「こちらに私の部隊の兵が二名、来ているそうだが」


 凛とした声がそう言うと、俺の馬になっている二人が、びくんと物凄い反応を見せた。ていうか、直立不動になっている。


「任務放棄により、脱走の嫌疑がかけられている」

「た、隊長――! ちがうっす! ちがうっす! これは――!」

「そうなのです隊長! このオリオンさんがぜんぶいけないのです!」


 エイルとアミィの下っ端コンビは、声を揃えてそう言った。

 アミィのほうは、盛大に俺を売りはじめやがったな。この腹黒ロリめ。あとでおしおきだ。


「俺の仕事のためにな。二人を使わせてもらった。文句があるなら俺に言え」


 酔っ払って、へべれけになっている場合じゃないな。俺はしらふに戻ると、美人さんにそう言った。

 いい感じに酔えていたのだが、あー、もったいない。


 だが「隊長さん」とやらは、それだけの価値のある美人だった。きりっとした感じが、すげえそそる。


「まーたオリオンの悪い癖がでたぁー」

「うるさいぞ。駄犬」

「ひゃん」


 駄犬め。そんな声で鳴いたって、可愛くなんてないからな。


「〝伝説の冒険者〟とやらが現れたことは聞いている。そんなに小さいのに、相当、強いそうだな」

「相当――ではないな。最強だ」

「ほう?」


 俺は事実を告げたのみだが、あちらは、大言壮語と思ったらしい。目が細まる。


「私は軍の中でも相当の腕だと自負している。――最強というならば、当然、私にも勝てるのだろうな?」

「もちろん」


 俺が答えると、女隊長は、獰猛な笑みを浮かべた。

 美人が冷酷に笑うと凄みが出る。


「私が勝ったら、おまえたちは偽物ということだな。騎亀のエサにしてやろう。たいした量にはならなさそうだがな」

「俺が勝てば――」


 俺は彼女の肢体を、上から下まで見ていった。意味は伝わったか、隊長は眉を歪めて不快そうな顔をする。


「た、たいちょー……、や、やめたほうがいいっすよー……」

「そ、そうなのです……、いくら隊長でも、この化け物は……」

「部下に信頼されていないとは、哀しいな」


 俺が挑発すると、隊長は怒ったか、無言で剣を抜き放った。

 ぶおん、と風が巻き起こる。軽い竜巻ぐらいが発生した。


「普通にやっては面白くないからな。俺の手下が相手をしよう」

「えっ? ちょおっ!? ちょおーっ!?」


 俺の意図を察して、駄犬が騒ぎはじめる。


「またわたしに振るうぅ! 自分のケンカなんだから、自分でやりなさいよ!」


 なにを言っているんだ、この駄犬は。

 負けたら騎亀とかいう(どんなんだ?)のエサになるのは、おまえも一緒だろうが。


「あとこのあいだの腕相撲のときのご褒美! もらってない!」


 そっちかよ。


「あーあー。ラブラブエッチだったな。今回のと合わせて、二回分、約束してやる。なんならエッチの前にラブラブデートもつけてやってもいい。しっかり働くならな」

「やるっ!」


 現金な駄犬だ。


「先に配下を戦わせて疲れさせるという、姑息な作戦か? 残念だがそんな鍛え方は――」

「こいつに勝てたら、おまえの勝ちでいい」

「――承知した」


 巨人の女隊長さん(美人)とうちの駄犬の一騎討ちが、冒険者ギルドの真ん中で執り行われることとなった。


 椅子やテーブルがどかされ、円形の空間ができあがる。

 周囲を巨人の壁によって囲まれた、決闘のための空間だ。


 その中央で、隊長とアレイダとが向かい合う。

 人とフィギュアとが向かい合うようなもので、見た目的には、勝負にもなりはしない。

 だが冒険者ギルドに集まる巨人たちは、アレイダの勝利を疑っていないようだ。掛け率は二〇対一だ。もちろん、隊長側の倍率のほうが二〇倍だ。


 この浮遊大陸に来たばかりの時、下っ端兵士のエイルと戦って、こてんぱんにしていたが、そのときはパーティ総掛かりで戦った。


 今日一日の狩りで、レベルはかなり上がった。

 それ以外にも、巨大生物との戦いにおけるノウハウを積みまくった。


 勇者御一行の一員が、自分よりもデカいというだけでビビっていたのでは話にならない。

 中ボス以降は、みんな巨大生物なわけだし。


 一日、鍛えまくってやったおかげで、アレイダは自分より何十倍もデカい相手を前にして、平然と構えていられるようになっていた。


「では、参る――」


 隊長は大上段から剣を振り下ろした。

 アレイダはそれを受け止めた。――手で。


「なにっ――!?」


 驚愕する隊長に、アレイダは、にやりと笑い――。


「真剣白刃取り! からのぉー!」

やいば砕きっ!!」


 隊長の剣が、折れ――るのではなく、砕けた。

 ひねって折るのではなく、膂力をもって、無数の破片に粉々に砕いた。


 ブーストスキルの正しい使い方(、、、、、、)を教えてやったのだ。


 |《狂化(バーサーカー)》、|《竜神降臨》、|《悪魔化(デモナイズ)》――と、三つのブーストスキルを使えるアレイダであるが、いざ使うときには、三つをずっとONのままで、力を垂れ流すような使いかたをしていた。


 常時発動させていると、体への負担が大きくなる。

 パッシブではなくアクティブスキルである意味を知れ。――と、教えてやったのだ。


 いまの一連の攻防のなかでは、力が必要なのは、攻撃を受け止める瞬間と、そして刃をへし折る瞬間だけだ。その二つの瞬間だけ、ごく短時間だけスキルをONにするようにすれば、体への負担は最小限になる。

 そして負担が減ったということは、そのぶんだけ、強化倍率を引きあげても大丈夫ということになる。

 アレイダのさっきのあれは、瞬間的にではあるが、一〇倍くらいには届いていたはずだ。そして三重ブーストだから、それぞれの掛け算で、一〇×一〇×一〇であって――。


 隊長なのだから、当然、下っ端よりも強いだろうが……。それは果たして、何倍も強いのか?


 答えはすぐに目で見ることができそうだった。


「オラ! オラ! オラアァァ!」


 アレイダは飛びかかって斬りつける。

 剣に闘気を纏わせて、巨大な刃を生みだしている。ブラックドラゴンを頭からシッポまで一刀両断して半身にできるぐらいのエネルギー刃だから、巨人サイズの剣と同じぐらいのスケールとなる。


「くっ――!!」


 刀身が砕けて短くなった剣で、隊長は必死に防戦する。


「隊長! 剣っす――!」


 エイルが自分の剣を隊長に投げ渡している。

 おい決闘でそれって反則負けなんじゃないのかー? 予備の剣を持ってきていなかったうぬが不覚、というやつじゃないのかー?

 まあいいが。


「くっ――! まさかこんな――!」


 剣があろうがなかろうが、短くなっていようが長かろうが、あまり関係がなさそうだった。


 アレイダの振るうのはエネルギー刃。受ける隊長のほうは物理剣。

 こちらは、がっつんがっつんと、遠慮なしに打ちかかれるのに対して、向こうは下手に受ければ剣が砕けてしまう。そうならないためには、繊細な技が必要となってくる。

 エイルとアミィあたりを見ていて気づいたことだが、巨人族は、えてしてLvとステータスのゴリ押しに走るきらいがある。


 剣を折らずに受けきるために必要なのは「技」であって、ステータス値ではない。


 がきーんと、剣が折れる音が響いた。


 くるくると回った刀身が、床へと突き立つ。

 俺たちの目から見れば、ビルぐらいある巨大な金属塊だ。


「私の負けだ」


 隊長は、そう言った。

 だから一本目が折れた時点でおまえの負けだってーの。


「俺ともやるか?」


 俺はそう言った。


「その娘よりも強いというなら、やるだけ無駄だろうな」


 隊長は諦めた。床に膝をつき、うなだれる。

 凛とした美人もいいが、絶望してアンニュイな美人もいいな。


「よし!」

「うわっ……、おいちょっ……」


 俺は座りこんだ隊長のお尻の下に潜りこむと、ふんぬ――と、ばかりに、その巨体を担ぎあげた。


 お持ち帰りだ! おーもちかえりー!


「ああっ! そんな! ダメっす! 隊長まで毒牙にかかるなんて! 隊長のかわりに身を挺して――わたしが犠牲になるっす!」

「わ、私もっ! さあ! 私をかわりに連れていくです!」


 エイルとアミィの二人が、なんか言ってる。

 おまえら自分がヤリたいだけだろ。


「ようし! おまえらもお持ち帰りしてやる!」

「あーれー♡ ――っす!」

「きゃあきゃあ♡」

「せ、せめて部下は許してやってくれ――! 私はどうなってもかまわない!」


 ぜんぜんわかってない隊長が、部下思いのことを言っている。

 だが心配するな。こいつらは美味しい目を独り占めしたいだけだ。

 武人肌だし、そっちの経験はないのか。ひょっとしたらゼロなのかもしれない。堅物をとろかしてやるのも一興だ。


 ちらりと肩越しに振り返ってみれば、「あーっ、いいなぁ」という顔を受付嬢のエレナがしていたので、ついてこい、とばかりに指先で招く。


 すっかり色情に染まった顔で、エレナがカウンターを飛び越えてついてきた。

 ……仕事は?


「ちょっとおぉぉ――! 人に戦わせておいて――! わたしとの約束――っ!!」


 駄犬がひゃんひゃんとうるさい。

 「ラブラブデート券」「ラブラブエッチ券」という、二枚綴りの券を作って、投げてやった。


 美人の女隊長と、下っ端兵士二名と、受付嬢のエレナとを連れて、俺は冒険者ギルドをあとにした。


 このあと滅茶苦茶セックスした。

ジャイアントキリング|(大物食い)、どんどんいきますー!!

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