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自重しない元勇者の強くて楽しいニューゲーム  作者: 新木伸
18.街を救ってみよう!
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オーガ狩り・入口 「あれはオーガ・チャンピオンだな」

「本日、狩るのは、オーガ・ジェネラルというモンスターである」


 洞窟の入口で、俺は作戦の説明をはじめた。


「クザク! バフより前にデバフ入れて! スロウ入れて! スロウ! こいつ! 一撃が重い!」

「はい!」

「アレイダさん! 治療します! 後ろに下がって! エイティさん! 十秒――お任せします!」

「は、はいいぃ!!」


 だが娘たち。聞いちゃいねえ。

 奇襲にあって、その対応に忙しい。


 ちなみにオーガの住み家を強襲したわけだから、当然、反撃がある。

 いま戦っているのは、見張り役のオーガ・チャンピオンが二匹だ。


 魔大陸の住人でも脅威を覚えるモンスターであるからして、相当に強い。

 いまもたったの一撃で、聖戦士クルセイダーのHPを半分ほども持っていってしまった。


 これからジェネラルの首を取ろうというのだから、チャンピオンぐらいで苦戦するなと言いたい。


「スケさん! そっち任せたから!! 信じてるから!!」

「ん。しんじる。」


 スケルティアが強靱な糸で、片方のオーガをがんじがらめに拘束する。

 もう片方の一匹を、総掛かりで、先に倒してしまおうという作戦だ。


 アラクネへと進化したスケルティアの糸は、鋼鉄どころではなく、神鉄にさえ匹敵するほどの強度となっている。

 だがオーガ・チャンピオンの膂力も凄まじい。糸に絡みつかれたまま、スケルティアとの力比べが行われている。


 アラクネの肌は柔肌のように見えるが、じつは滑らかな装甲質の素材である。

 その装甲が、ぱきぱきと割れてゆく。引き合う糸の膨大なテンションに耐えかねて、スケルティアの指と腕とが、細かな破片に変わってゆく。

 糸を操る側にもダメージが出ている。


 俺は特に手出しも口出しもせず、ただ、見守っていた。

 俺とモーリンが、一切、手を出さないということは、すでに話してある。

 骨ぐらいは拾ってやる、と、そう言ってある。

 いつもそうやって躾けているので、娘たちもその気でやっている。


 まあ、なんとかなるだろう。

 ならなかったら、その時はその時だ。


 もともとモンスターというものは、この魔大陸が原産であると伝えられている。

 こちらの大陸での生存競争に敗れた負け組が、他の大陸に逃れてゆき、たいした競争相手もいない楽園で大繁殖したものが、向こうの大陸における、オークやゴブリン、オーガといった連中だそうである。


 つまり向こうの大陸のモンスターというのは、穏やかな環境で退化して、弱体化してしまった種だということだ。普通のオークやゴブリン、オーガなどが、ごくまれに進化して強力な上位種となることがあるのだが、それはつまり先祖返りしているわけだった。


 ダンジョンもまた然り。

 ダンジョン同士にも生物と似た生存競争みたいなものがあるようで、魔大陸での苛烈な競争から逃れていった弱小ダンジョンが、他の大陸で繁殖(?)しているというのが、学者のあいだでの通説となっている。


 魔大陸のモンスターとダンジョンとが、ともに強力なのは、そういった事情である。


 ――と、一匹が片付いた。


「スケさん! いまそっちやるから!」

「ん。……へいき。」


 片腕が使い物にならなくなっていたが、スケルティアは耐え抜いていた。

 皆が一匹目を処理するあいだ、もう一匹の拘束を続けていた。


 拘束されていたもう一匹のオーガは、DOTによるスリップダメージで、HPは半分ほどに減っている。

 フルメンバーとなった全員で、半死の一匹を片付けるのに、そう長い時間は必要でなかった。

 戦闘終了までにはスケルティアの腕も回復している。


 うん。聖女の回復力。半端ない。


 向こうの大陸では、聖女は伝説のジョブであるが、こちらの大陸では、ほとんと必須職ジョブだな。半壊した人体を一発で再生できるくらいでなければ、パーティの回復役は、到底、務まらない。


「さて。つぎ行くぞ。つぎ」


 そう言ったが、返事がない。


「おい。いつまでへばってやがる」


 地面にへたりこんでいるアレイダたちを、ぎろりと見やると――。


「ちょっと休ませてよ……」

「俺は休ませてやってもいいんだがな。あいつらは、そうはいかないみたいだぞ」

「あいつら……って?」


 洞窟の奥から響いてくる無数の足音に、アレイダがぎょっとした顔になる。

 そりゃ、住み家を強襲したんだ。おっとり刀で駆けつけてくるだろうさ。

 単なる〝見張り〟で、〝チャンピオン〟だった。

 〝兵士〟ともなれば、一体、なんになるのだろう?


「いまの二匹でレベルアップしてたろ。スキルポイントの振り分け、やっとけよ」

「やだもう! おうちかえるうぅ!」


 アレイダのやつが幼児退行している。それでも敵はやってくる。


「バニーさんもあそんでいいですかー?」


 俺とモーリンの側にいたバニー師匠が、すっと戦列に加わった。

 うん。まー、そうだな。

 いまの二匹でぎりぎりだったから、娘たちだけだと、本当に死ぬしなー。


 数体のオーガが現れた。

 兵士の皆さんの種族は……。鑑定すると……。

 おー、オーガ・パラディン、きたわこれー。

 元勇者も初めて見るかもしんない。


 数匹のオーガ・パラディンの集団と、うちの娘たちのパーティと、集団戦がはじまった。

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