エイティと風呂 「近い、近い! 近いですうぅ~~!」
いつもの昼過ぎ。いつもの屋敷の中。
ふと思い立った俺は、昼風呂に入ることにした。
がらりと戸を開け、湯気の立ちこめる風呂内に足を踏み入れる。
うちの風呂は、常に湯の沸いている二十四時間風呂である。
もともとそれなりの大きさだったが、さらに改装して大きくしている。
全員で入れるようにと、特別、豪華な作りになっていた。
もちろん、ただ全員で入るだけでなく、入ったうえで、あんなことやこんなことをするためである。
モーリンが土魔法と木魔法とで、石を成形して木を生み出し、ものの十数分程度で改装を完了してしまった。
土魔法はストーンウォールぐらいしか使い道のない不遇魔法とみなされているが、どっこい、レベルをMAX近辺まであげれば、建築用途として神魔法に化ける。大賢者がその気になったら、天空城でも、バベルの塔でも、一夜で大地から生えてくるだろう。
ちなみに木魔法のほうは、エルフの秘術である。にょきにょきと伸びていった木の幹が、壁や柱に育つほうはともかく、ぱきぱきと自分から割れていって木製品に変わるさまは、ちょっとシュールな光景だった。
ちなみに木桶にはなぜかケロリンと書かれていて、椅子のほうは形がスケベ椅子だった。
おい大賢者。通信先から、いったいなにを吹きこまれた。
「お?」
大浴場を奥に向けて歩いてゆくと、人影が見えた。
誰だかよく見ようと目を凝らすと、体を洗っていたその人物は、逃げるようにして、急いで浴槽に移動していった。
「……?」
うちの女たちの中には、俺に裸を見られて恥ずかしがる者はいないはずだが……?
ああ。いないこともないか。
アレイダのやつなんか、いまだに、「きゃー」だの「恥ずかしい」だのと口にして、俺を燃えあがらせてくれるのだが。
俺はそれ以上深く考えず、浴槽に向かった。
かけ湯もしないで浴槽に入るのは本来はルール違反であるが、この屋敷では俺がルールである。よって俺だけは構わない。
「あっ、あっ、し、師匠――」
ざぶりと湯に浸かると、隣からそんな声があがった。
エイティだったか。
なんでか、慌てているのだが。……なぜだ?
「きゃー」の側ではなかったはずだが。
うちには「あっけらかん派」と「きゃー派」とがいる。
まずスケルティアが、あっけらかん派の筆頭。ハダカのどこが恥ずかしいのか、まったくわかっていない派。もともと路上生活をしていたときには、
ミーティアはお姫様育ちのせいか、異性に対してまったくの無警戒。同性に見せるのと大差ない感覚。
モーリンとコモーリンも、鉄壁無表情ではあるが、モーリン学の第一人者である俺の見解では、あれは素のポーカーフェイスであるというだけで、恥じらいを感じていないわけではない。
バニー師匠は男の視線には目ざといほどに敏感で、裸に限らず、胸やお尻を見ているときには、誘う目線で応じてくる。達人の余裕となまめかしさがあるものの、その根底には、基本的な恥じらいが含まれている。
クザクとエイティの二人は、普通に恥じらってはいる。だが俺に対しては、それを示さない。
……はずなのだが。
「いい湯だな」
俺は隣のエイティに話しかけた。
「は、はひっ――そ、そうですねっ!」
返ってくる返事もどこかおかしい。
口元まで湯につけて、ぶくぶくとやっている。
綺麗な金色のストレートヘアが、湯の中で扇状に広がっている。
「どうした? なにを恥ずかしがっている?」
そういえばエイティと風呂に入ったことはなかったな、と、思いつつ、俺は美しい髪を、一房、手に取った。
髪に手の届く、そんな距離に詰めてゆくと――。
「い、いえっ……、そ、そのっ――近い。近いですぅ!」
「なにが近いって?」
またすこし距離を詰める。
こんどは恋人同士の距離。息を交わしあう距離。
「だ、だから、近いですぅ~!!」
ははははは。可愛い可愛い。
なにを恥ずかしがっているのかは知らんが、初々しい反応が新鮮だ。
手首を捕まえて逃げられないようにすると、俺はエイティの身体を後ろから抱きしめた。
「あ、あのっ――!?」
エイティは、まだ、うだうだ言ってる。
「こんな自分でも――、あ、愛して頂けるのでしょうか!?」
「もちろんだ」
俺は即答した。
〝こんな〟が、どんななのか、わからんかったが――。即答だ。
俺の言葉に安心したか、エイティの体に入っていた力が抜ける。
後ろから抱っこする形で、俺はエイティを愛した。
湯の中でセックスした。
しかし……。
なんか今日のエイティは、変だったな……?
なんか体が柔っこくなかった……? 妙に筋張っていたような……?
あとなんか、胸が妙に平たかったような……? ろくに揉ませてもらえなかったので、よくわからなかったのだが……?
あと、前でなくて後ろでと懇願されて……? なんでだろう……?
一回終わって、風呂から上がるとき、ダッシュで洗い場に行って、頭から水を浴びていたのだが……? 冷たくないのか?
まあしかし、風呂から上がったあとのエイティは、いつものエイティで……。
濡れたままの美少女をお姫様抱っこで寝室に運んで、二回戦を行った。
こんどは前を使わせてもらえたし、おっぱいも触らせてもらえた。
なんだったのか、よくわからなかったが……。
ま。いっかー。
クザクいちゃ回があったので、エイティいちゃ回です。