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自重しない元勇者の強くて楽しいニューゲーム  作者: 新木伸
15.魔大陸ブートキャンプ
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初心者冒険者は薬草採集をする 「この薬草なんで動くの!? 反撃してくんの!?」

「ぎゃああああ! 反撃してきた反撃してきた! この薬草! なんで動くの! 攻撃してくんの! おかしいでしょ! 単なる草でしょ!」

「そりゃあ。魔大陸だからなぁ」

「手え切れた! 痛い痛い痛い! ミーティア! 治して! ギャアア!」

「自分で治せよ。聖戦士クルセイダー


 今日の駄犬は、ほんと、ギャアア、ギャアア、と、うるせえ。

 しかし、魔大陸の薬草(、、)――さすがに攻撃力、あるなー。

 聖戦士クルセイダーの複層魔装結界、ざっくり、だもんなー。

 手え切れたというよりは、指落ちた、のほうだもんなー。


 ひゅんひゅんと葉っぱを振り回して、摘み取ろうとする相手を攻撃してくる。その攻撃には、はじまりの迷宮の階層主ぐらいだったら、一撃で首ちょんぱぐらいの鋭さがある。


「癒やしたまえ治したまえ、英傑に再び戦う力を――! 《復元(レストア)》っ!」


 聖女の治療は、部位欠損を瞬時に復元する。欠損していた指が生え揃う。

 なるほどー。聖女に頼むべきだなー。


 聖戦士クルセイダーのちんまいヒールでちんたら再生治療していたら、最初の傷が治るまえに、新たに受ける傷のほうで、指どころか、両手両足、全部なくなっちゃって、ダルマさん状態だろうしなー。


 初心者冒険者らしく、『薬草採集』のクエストに励んでいた。

 村をすぐ出た森に生えてる〝薬草〟を採ってくるだけという。それわざわざ冒険者がやらなくてもいいんじゃね? ――的なクエストで、お小遣い稼ぎをしているところだ。


 ちなみに『薬草採集』を受けたのはアレイダたち六人だけだ。

 俺とコモーリンの二人は、『討伐』と『狩猟』あたりのクエストを、適当に壁から引っぺがして持ってきている。積極的にやるわけではなく、偶然出くわしたなら狩っていこうか、というあたり。


 バニー師匠はどちらかというと〝こちら側〟になるわけだが、彼女には〝子守〟を頼んでいる。


「おい。タンク。おまえがしっかり肉壁を務めないと、皆が大変だぞー。おまえ柔らかいんだから、せいぜい、血飛沫噴いて肉の壁を務めろ。な?」


 俺は戦っているアレイダにそう言った。

 その途端。


 あ。腸出た。治った。

 しかし、下半身をまるごと失ったりしたら、アソコも再生すんのかな?


 今晩試してみたいので、半身、なくさねーかな?

 さすがに〝薬草〟が相手じゃ、そこまでのダメージは食らわないなー。

 じーっと見ているが、ざっくざっくと斬られて血飛沫はあがっているものの、一刀両断、とまでは、なかなかいかない。

 ちなみに聖女の復元があるので、即死でさえなければ、上半身下半身生き別れ、とかでもなんとかなる。首ちょんぱとなっても、十数秒ぐらいの意識のあるうちであれば、死んだことにはならない。

 それに死んだって、蘇生もあるしな。


「あれは絶対! ヤなこと考えている目ーっ!」


 剣を振るってひたすら応戦しながら、アレイダは文句を言ってくる。

 こっちを見るとか、まだまだ余裕があるらしい。


 とか言ってる間にも、腕の一本が、吹き飛んで――また生え戻った。


「こんのクソおおーっ!!」


 瞬時に治った新しいほうの手でもって、剣を持ったまま切断された自分の古い腕のほうの――その切断面をひっ掴み、古いほうの腕ごと剣を振り回して、薬草の葉っぱをぶった切った。


 ほら。よそ見してるから。そういうことになる。

 ちなみに、聖戦士クルセイダーごときの〝微弱〟な防御結界では、モンスターでさえない、単なる〝草〟の攻撃も防げない。しかしその〝微弱〟な防御結界がなければ、被害はこんなものでは済まない。

 ざっくざっく切り刻まれているが、いちおう、指が飛ぶ、腕が飛ぶ――程度で済んでいるのは、これでも聖戦士クルセイダーの防御性能のおかげだ。


「わっ――!! わたしもそろそろ新しい装備が欲しいんですけどー! ビキニアーマーじゃ! そろそろきっついんですけどー!」

聖戦士クルセイダーに鎧なんていらないわ! ――なんて、豪語していたのは誰だっけ?」

「それはあっちの大陸の話でえええ! 痛い痛い! 足なくなったー!」

「ちいぃ。惜しい」


 太腿の真ん中から両足を失ったアレイダが、ひぎぃ、とか、痛みに目を反転させている。白目をぎょろりと剥いてる。

 もう三十センチほど上だったら、胴体まっぷたつだったんだが。

 頑張れ。薬草。


 俺の応援もむなしく。薬草はその後しばらくして、倒された。


「ふぅ……、ふぅ……、はぁ……、ふぅ……、よ、ようやく……、倒した……」


 傷はないが血まみれのアレイダが、剣を杖がわりにして、かろうじて立っている。

 マゾい聖戦士クルセイダーが全面的に引き受けているおかげで、他の面々は、ほとんど攻撃を受けていない。

 聖戦士クルセイダーのタウント力は凄まじく、他がどれだけ瞬間的な大ダメージを入れようとも、タゲが跳ねることは希で、仮に跳ねたとしても、すぐに取り返して、すべての攻撃を自分に収束させる。

 よって、他の者がアタッカーとして、ダメージを与える役割を十全に発揮できていた。


 まあ。パーティバランスは悪くないな。

 各々、最初のパワーレベリング段階を過ぎたところで、育成方針をパーティとしての総合力に向けてきた。


「倒したあぁ! 倒したわよおおおおぉ!」


 アレイダが雄叫びをあげている。

 死線を越えたためか、ハイになっている。脳内物質がドパドパ出ていることだろう。

 ウサギ退治のときにも、こんなんなってたな。


「さて。じゃあ次にいくぞ」

「はえっ? ……つぎって?」


 マヌケな顔をしているアレイダに、俺は言った。


「決まってる。『薬草採集』のクエストは、薬草、二〇束――だからな。あと一九束。さあ行くぞー」

「待って! 待って待って!! ――死んじゃう!」

「なら死ね」


 俺はゲス顔でそう言ってやった。


「だいじょうぶです。アレイダさん。蘇生魔法でお助けします!」


 ミーティアが素でそんなことを言っている。


    ◇


 初心者冒険者のパーティは、初心者冒険者らしく、『薬草採集』をやった。

 そのあいだに俺とコモーリンは、通りすがりのドラゴンとフェニックスを仕留めて、竜角と竜皮と竜牙と、フェニックスの尾と、素材をゲット。

 採集クエストを達成して、素材を売却して、ギルドにすこし貢献してやった。

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