魔大陸に上陸 「ウサギさんも、ついてゆきますよ」
この連載小説は未完結のまま約3ヶ月以上の間、更新されていません――を、ようやく解除できました~。
連載再開です。
第5パート。魔大陸編。およそ20話ぐらい。10万文字少々。毎日更新を目指しますー。
港が見える。
大海原を航海すること、数十日目――。
俺たちは、〝魔大陸〟と呼ばれる大陸に、到達した。
「オリオン! ほら! 陸! 陸がみえるわ! 陸だってば! ほら! オリオン!」
「うるせえ。駄犬」
興奮して同じところをくるくる回る駄犬の、そのケツに、俺は蹴りを入れた。
前のめりに突っ伏した駄犬は、顔を押さえて起きあがると、文句のひとつも言うことなく、船縁へとダッシュした。
「もー! 陸地! ひっさしぶりーっ!! はやくはやく! はやく着けてーっ!」
はしゃぎすぎ。無邪気すぎ。
俺は苦笑を浮かべた。
もういっぺん蹴ったろか、という俺の毒気も消え失せてしまう。
上空には、ぴーぴー鳴いてるハーピーの群れがいる。海のほうでは、人魚たちの群れが随伴している。人魚姫を先頭に、水面を次々と跳ねて、俺たちの船に併走してくる。
見送りに来ているわけだ。
そういえば、ハーピーのほうとも、人魚のほうとも、何度か乱交したっけな。それでか?
海賊船とは、沖合で別れた。
ここへは海賊は入港禁止である。
海賊の女は熱いキッスを残して、水平線に消えていった。
最後まで、いい女であった。
「陸~♪ 陸~♪ 陸地~っ♪」
アレイダは、はしゃいでいる。鼻歌など歌っている。
「スケ。おまえも陸が恋しかったりするか?」
マストから糸でぶらさがっているスケルティアに、俺はそう聞いた。
「ん。スケは。どこでもいい。よ。」
スケルティアは、糸にぷらーんとぶら下がって、逆さまになったまま。
こいつの場合、船の上だと立体で動けるから、むしろ、船上生活のほうが良いのではなかろうか?
俺が、じーっと見ていると、スケルティアは、もういっぺん、口を開いた。
「おりおん。が。いれば。どこでも。いい。よ。」
かわいいことを言ってくれる。あとで特に可愛がってやろう。
「ミーティアはすっかりやる気ですねー」
いちばん最近、俺の女になったエイティが、御者台からそう言った。
甲板には馬車を載せている。ミーティアはとっくに馬となって、馬車を牽く態勢になっている。
かっかっかっ、と、蹄で甲板を蹴っている。
海の上にいるあいだ、馬車を牽く仕事がなかったので、張り切っているわけだ。
愛いやつ。愛いやつ。あとで特に可愛がってやろう。
船は港に入っていった。
ここは東の大陸から最も近い港なので、入港する船も多い。出る船と入る船とが入り交じり、ちょっとした渋滞となっていた。
「さて。魔大陸に着いたわけだが……。これでお別れってのは、すこし残念だな」
俺はバニー師匠の腰を抱いて、そう言った。
この大陸まで、という約束で、彼女を船に乗せていた。彼女がどこに向かう旅なのかはわからない。聞いていない。
俺に抱かれていながら、俺のものになりきらない女というのは、はじめてで――。俺は彼女にちょっとした興味を持っていた。
抱いている、というか、彼女とのセックスはいつも、俺のほうが抱かれているという感じになってしまうのだが。
このまま別れてしまうのも惜しい。
最後に一発。――という意味合いで、腰を抱いて誘ってみたわけだったが――。
彼女は俺の顔を見上げてくると、くすりと微笑んできた。
「ご一緒させてもらいますよ。――オリオンさんが、お嫌でなければ、ですけど」
「お、おう」
俺の側に嫌はない。
しかし彼女が旅に一緒する理由というのは……、なんだろう?
俺とのセックスが忘れられなくなったから――ではないのだろうなぁ。
どちらかというと、彼女とのセックスを忘れられなくなっているのは俺の方だし。
「ウサギさんは、おもしろいことを追いかけているんです。いまこの世界で、一番おもしろいことは、オリオンさんのもとで起きているんですから、ご一緒しないはずがないですよ」
ああ。そっちの理由ね。
俺は納得していた。
そして、これまで仮のお客さんだった彼女が、正式な仲間になったことに、ちょっと喜んでもいた。
「えっちなことも、おもしろいことのうちですけど。……いま、します?」
あどけない顔に、一瞬だけ、凄まじい色気が現れる。
「いや。……夜でいいな」
これが最後でないのなら、べつにいまでなくともよかった。
もう入港するし。
「じゃあ、あとでいっぱい、してあげますからねー」
「お、おう」
してあげる、なのか。俺がするのではないのか。やっぱりバニー師匠は〝師匠〟であった。
「よし。あそこに着けろ」
港の一角に空いている桟橋を見つけ、俺は手をあげて指示した。
舵輪を握っているコモーリンが、くるくると思い切りよく舵を回転させて、船を一発で横付けした。
この船の操舵長はコモーリンである。舵輪を握って離さない。モーリンではなくてコモーリンのほうだ。二人は同一人物のはずなのに、なんでか、コモーリンのほうが舵輪を握って離さない。
「ほい。お疲れさま」
船が完全に停止したところで、コモーリンの脇の下に手を差し入れて、椅子から持ちあげる。
ぶら下げられたコモーリンは、しばし、じたじたと暴れていたが、やがて観念すると、手足を伸ばして、ぷらーんとぶら下げられるままとなった。
子供扱いしてやると、めずらしい〝照れ〟が見られるので、わりとよく子供扱いしてやっている。
「ねえ? まだー? まだ下りちゃだめー?」
港の労働者が、もやい綱を結び、桟橋と船の甲板との間にスロープを掛け渡す。
馬車が下りられるようになった。
「さて! 上陸するか!」