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自重しない元勇者の強くて楽しいニューゲーム  作者: 新木伸
15.魔大陸ブートキャンプ
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魔大陸に上陸 「ウサギさんも、ついてゆきますよ」

 この連載小説は未完結のまま約3ヶ月以上の間、更新されていません――を、ようやく解除できました~。

 連載再開です。

 第5パート。魔大陸編。およそ20話ぐらい。10万文字少々。毎日更新を目指しますー。



 港が見える。

 大海原を航海すること、数十日目――。

 俺たちは、〝魔大陸〟と呼ばれる大陸に、到達した。


「オリオン! ほら! 陸! 陸がみえるわ! 陸だってば! ほら! オリオン!」

「うるせえ。駄犬」


 興奮して同じところをくるくる回る駄犬の、そのケツに、俺は蹴りを入れた。

 前のめりに突っ伏した駄犬は、顔を押さえて起きあがると、文句のひとつも言うことなく、船縁へとダッシュした。


「もー! 陸地! ひっさしぶりーっ!! はやくはやく! はやく着けてーっ!」


 はしゃぎすぎ。無邪気すぎ。

 俺は苦笑を浮かべた。

 もういっぺん蹴ったろか、という俺の毒気も消え失せてしまう。


 上空には、ぴーぴー鳴いてるハーピーの群れがいる。海のほうでは、人魚たちの群れが随伴している。人魚姫を先頭に、水面を次々と跳ねて、俺たちの船に併走してくる。

 見送りに来ているわけだ。

 そういえば、ハーピーのほうとも、人魚のほうとも、何度か乱交したっけな。それでか?


 海賊船とは、沖合で別れた。

 ここへは海賊は入港禁止である。

 海賊の女は熱いキッスを残して、水平線に消えていった。

 最後まで、いい女であった。


「陸~♪ 陸~♪ 陸地~っ♪」


 アレイダは、はしゃいでいる。鼻歌など歌っている。


「スケ。おまえも陸が恋しかったりするか?」


 マストから糸でぶらさがっているスケルティアに、俺はそう聞いた。


「ん。スケは。どこでもいい。よ。」


 スケルティアは、糸にぷらーんとぶら下がって、逆さまになったまま。

 こいつの場合、船の上だと立体で動けるから、むしろ、船上生活のほうが良いのではなかろうか?


 俺が、じーっと見ていると、スケルティアは、もういっぺん、口を開いた。


「おりおん。が。いれば。どこでも。いい。よ。」


 かわいいことを言ってくれる。あとで特に可愛がってやろう。


「ミーティアはすっかりやる気ですねー」


 いちばん最近、俺の女になったエイティが、御者台からそう言った。

 甲板には馬車を載せている。ミーティアはとっくに馬となって、馬車を牽く態勢になっている。

 かっかっかっ、と、蹄で甲板を蹴っている。

 海の上にいるあいだ、馬車を牽く仕事がなかったので、張り切っているわけだ。

 愛いやつ。愛いやつ。あとで特に可愛がってやろう。


 船は港に入っていった。

 ここは東の大陸から最も近い港なので、入港する船も多い。出る船と入る船とが入り交じり、ちょっとした渋滞となっていた。


「さて。魔大陸に着いたわけだが……。これでお別れってのは、すこし残念だな」


 俺はバニー師匠の腰を抱いて、そう言った。

 この大陸まで、という約束で、彼女を船に乗せていた。彼女がどこに向かう旅なのかはわからない。聞いていない。


 俺に抱かれていながら、俺のものになりきらない女というのは、はじめてで――。俺は彼女にちょっとした興味を持っていた。

 抱いている、というか、彼女とのセックスはいつも、俺のほうが抱かれているという感じになってしまうのだが。


 このまま別れてしまうのも惜しい。

 最後に一発。――という意味合いで、腰を抱いて誘ってみたわけだったが――。


 彼女は俺の顔を見上げてくると、くすりと微笑んできた。


「ご一緒させてもらいますよ。――オリオンさんが、お嫌でなければ、ですけど」

「お、おう」


 俺の側に嫌はない。


 しかし彼女が旅に一緒する理由というのは……、なんだろう?

 俺とのセックスが忘れられなくなったから――ではないのだろうなぁ。

 どちらかというと、彼女とのセックスを忘れられなくなっているのは俺の方だし。


「ウサギさんは、おもしろいことを追いかけているんです。いまこの世界で、一番おもしろいことは、オリオンさんのもとで起きているんですから、ご一緒しないはずがないですよ」


 ああ。そっちの理由ね。

 俺は納得していた。

 そして、これまで仮のお客さんだった彼女が、正式な仲間になったことに、ちょっと喜んでもいた。


「えっちなことも、おもしろいことのうちですけど。……いま、します?」


 あどけない顔に、一瞬だけ、凄まじい色気が現れる。


「いや。……夜でいいな」


 これが最後でないのなら、べつにいまでなくともよかった。

 もう入港するし。


「じゃあ、あとでいっぱい、してあげますからねー」

「お、おう」


 してあげる、なのか。俺がするのではないのか。やっぱりバニー師匠は〝師匠〟であった。


「よし。あそこに着けろ」


 港の一角に空いている桟橋を見つけ、俺は手をあげて指示した。

 舵輪を握っているコモーリンが、くるくると思い切りよく舵を回転させて、船を一発で横付けした。

 この船の操舵長はコモーリンである。舵輪を握って離さない。モーリンではなくてコモーリンのほうだ。二人は同一人物のはずなのに、なんでか、コモーリンのほうが舵輪を握って離さない。


「ほい。お疲れさま」


 船が完全に停止したところで、コモーリンの脇の下に手を差し入れて、椅子から持ちあげる。


 ぶら下げられたコモーリンは、しばし、じたじたと暴れていたが、やがて観念すると、手足を伸ばして、ぷらーんとぶら下げられるままとなった。

 子供扱いしてやると、めずらしい〝照れ〟が見られるので、わりとよく子供扱いしてやっている。


「ねえ? まだー? まだ下りちゃだめー?」


 港の労働者が、もやい綱を結び、桟橋と船の甲板との間にスロープを掛け渡す。

 馬車が下りられるようになった。


「さて! 上陸するか!」

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