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転生者 カナデ 2

「ぐへへ、いい身体してんじゃねーか。さっそくヤっちまおうぜ」

「お前のその女顔、気持ち悪いんだよ!」

「奴隷にして売ってしまおう。いい金になるぞ」

「カナデ、あっちでも元気でね……」

「あぁ気持ち悪い気持ち悪い!こんな子産むんじゃなかった!」

「お前がいるから!お前のせいで俺はなぁ!」

「奏。強く、強く生きろ」

「あぁ、おバカな奏君。いっそ死んでシマエバイイノニ」


「う……ん……」


悪夢から目を覚ますと、知らない家のベットに寝かされていた。

酷い夢を見た気がする。前世(あっち)での嫌なことと今世(こっち)でのやなことをグチャ混ぜにしたような夢だった。

身体を起こそうとするも、起きあらがらない。まさかまだ悪夢が続いているのだろうか。

よくよく自分のお腹の方に目を向けると、私の上で気持ちよさそうに眠る、一匹の……犬。

身体全体がもふもふとした茶色の体毛におおわれていて、抱いたら気持ち良さそうな犬が私の上に丸まって寝ている。抱きしめたい衝動に駆られるけれど気持ち良さそうに寝ているので我慢する。

もともと私は動物が好きだ。人間は私を裏切っていったけれど、動物はそんなことはなかったからだ。中でも犬はかなり好きだ。近所で飼われてた犬になんどハグをしたことか。

せめて撫でようとその犬に手を伸ばすところでおかしいところに気付く。私のお腹の上で丸まって、とっても気持ちよさそうに眠るその犬の頭が……2つあることに気がついた。


「ひっ!?」


その双頭の犬に私は悲鳴を上げそうになったがどうにか堪えた。

これはなんといったか。うーん、オルトロスだったっけ?前世のゲームで得た記憶を元にその生物の正体を考えてみたものの、前世の世界にはそのような化け物は空想にしか存在しないので、それ以上考えるだけ無駄だと思い諦めた。

しかしなんで双頭の魔犬(ばけもの)がなんでこんなところで、しかもサイズがチワワ程度の大きさだからか、ちょっと可愛い気がしなくもない。

いや、最初は頭が二つって驚いたけどさ、無防備に寝てるこのわんちゃんは可愛いでしょう。……頭が2つあること以外は。

おっかなびっくりに手を伸ばし、お腹の上のこの双頭のわんちゃんを撫でてると、ドアの向こうから人の気配がした。ドアが開くと、


「カナデー?おきてるー……ってブラン!あんたこんなところで寝てんじゃないよ!あんたが乗ってたらカナデが苦しいでしょーが!このバカ犬!」


と、少女、いや小学生ぐらいだから幼女になるのか?がドスドスーー実際にはパタパタぐらいだけどそのぐらいの迫力でーーとベットに近づき、双頭の犬、ブランを持ち上げる。

確かに苦しかったのでこのわんちゃん、ブランは助けることができない。ごめんねブラン。

起こしに来た少女にぽいと捨てられるも床で寝続けるブラン。


「さってと、起きたならご飯にしよっか。ついてきなさい」


お腹が空いているのも事実なので、その少女の言う通りについていくことにした。


ご飯は私の調子を考慮してだろうか、麦を粥状にしたオートミールのようなものと、野菜のスープだった。ちょっと薄味だけれどこれはこれで悪くない。

食べ終わり一息ついたところで、目の前の少女、というよりは幼女と言うべきか。

外見だけなら明らかに私よりも年下の子が話し始める。


「さてと、とりあえず、何も覚えてなさそうだから自己紹介からかなぁ。私はリーリィ・アイスコレッタ。種族はハイエルフ。親愛を込めてリリィさんと呼びなさい」


と目の前の幼女、リーリィは背中から薄い羽を出し、少し宙に浮きながら偉そうに自己紹介をかました。

何かその少女の言葉に疑問があったものの、いきなり現れた薄羽にその疑問は吹き飛んだ。

よくよく見れば、尖った耳をしており、金髪色白、ちょっと幼いところを除けば物語で物語なんかで見るエルフそのものだ。だけれど、


「は、はぁ……ハイエルフって……?」


ハイエルフと言うのはよくわからなかったので質問してみる。


「あー、ハイエルフってのは、エルフの上位個体みたいなもんかな。一応この薄羽がハイエルフとエルフの違いね。それ以外は特に違いはないけど。あ、あとは魔力量が段違いかな。自分で言うのもあれなんだけど」


エルフってのは前世の世界の物語とかに出てくる空想の生き物だという認識だったけれどこの世界には一つの種族として存在するらしい。

そのエルフの中でも、さらに進化して、薄羽と強力な魔力、さらに長い寿命を手に入れたものがハイエルフだという。

エルフに他にも、獣人族、龍族、はては吸血鬼や天使なんてのもいるらしい。よくよく考えるとこの世界に自分を連れてきたーー転生させたーーのが女神を名乗っているのだからそういう種族がいてもおかしくないのかと、一応納得しておく。そもそも目の前に薄羽をパタパタと動かしている人?がいるのだから、それ以上の詮索は野暮というものだろう。


「質問はどんどんしなさい。これでも『賢者』とか『魔女』とか呼ばれてるし、色々旅して見て回ってるからね。大概のことは答えられるわよ」

とリーリィが言ってくれているので、疑問や質問を色々ぶつけてみることにした。

「じゃあとりあえず、この世界のことを教えてください」


この世界は、大きく分けて4つの国がある。

その内の3つは人間族が統治する国だ。1つは軍事力に秀でた帝王の支配する【チェリエベルト帝国】。1つは女教皇なる絶対主が統治する【オーランジュ皇国】。1つは世界最大の広さを誇り、数多くの領主と国王が治める【アプリエイト王国】。

私が目覚めた時にいた協会と、リーリィが拠点にしているこの家がある森はアプリエイト王国の外れにある【深き森(フォレプロフォンドゥ)】と呼ばれる、普通の人は寄り付かない、魔獣の棲む広大な森だそうな。

魔獣とは、魔力を持った普通の動物よりも凶暴な生物のことで、至る所に生息しているらしいが、この【深き森(フォレプロフォンドゥ)】には特に凶暴な種もいるらしい。

こうやって話を聞いてる間も、足元であくびをしている双頭の犬こと、オルトロスのブランも世間一般的にはとても強いらしく、この【深き森(フォレプロフォンドゥ)】の中では1、2を争う実力者なのだとか。……このお昼寝してるわんちゃんが本当にそんなに強いのかは審議が必要な気もするが。

そのため一般人は近寄らず、来るのは街を追われた盗賊か、腕の立つ冒険者が腕試しに入ってくる程度らしい。私が最初に盗賊に出くわしたのはよほど運が無いようだった。


「【深き森(フォレプロフォンドゥ)】以外にもダンジョンと呼ばれる魔物が多い地域は他にもあるけど、まぁ後でいいでしょう。ここまでで質問は?」

まるで教師のように、教鞭を振るうリーリィ。見た目には小学生が背伸びしているようにしか見えないけれど、その知識量と教えの上手さは感服するものがある。

教師然たるリーリィに応えるべく、生徒然として手を上げて質問することにする。


「はーい」

「はい、カナデさん。」

「この世界最大の国の内3つしか教えてもらってないけれど、最後の1つは?」

「よくぞ聞いてくれました。その国は、【マンゴスタシア】。この世界で最強の存在、魔王が君臨する国だよ」


あっけらかんというリーリィに対して、私は恐怖を通り越して、空笑いをするしかなかった。

マリー「魔王の話してたようだけど、私と同じで出番はしばらくありませーん」

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