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私の平穏はどこにある!?   作者: 崎坂 ヤヒト
一章
9/45

魔物を倒しましょう②

「ネアっ、助けて」

「無理」


なんか即答で否定された!


「なんで…」


私に死ねと?

私は顔を蒼くしながらその女神のような相貌を見つめる。


「こっちにもいろいろあるのよ。例えばあの魔物には手出しは絶対してはダメとか」

「なにそれ」

「あの魔物。この森のボスなのよ。天使はその担当区間でのボス狩りは禁止されてるのよ。ちなみにボスは図鑑に載ってないからね」


そりゃ知らないはずだ。

というよりもまた面倒なルールを。


「じゃあどうしたらいいの?」

「あなたが倒す分には何も問題ないんだけど。倒せる?」

「無理」


即答。無理。

そもそもボスなんてできるなら相手したくない。

課題は適当に弱い魔物でいいから一匹倒すことのはずだし。


「まあ、あなたならそう言うと思ってたわ。この一年ちょっとでかなり現実主義入ってきてたし」


それにはイエスです。

私は考えたのだ。異世界だからって無理に冒険しなくていいでしょ。

堅実に楽しく生きよう、って。

※ドライな考えを抱く年齢です。


「とりあえず逃げよう? 再チャレンジでいいでしょ?」

「いや、まあそれでもいいけど。いいの? あなたの実力ならあの魔物倒せるわよ」


しばし時が止まった気がした。


「……………………………………………へ?」

「だから、勝てるの。あなたなら」

「うそ?」

「嘘じゃないわよ。はいこれ」


ネアは私に袋を渡してきた。

ずっしりしてて結構重いけど。何だろう?

中身を見る。

背筋が凍った。

冷や汗が流れる。


「ずいぶんと面白いもの作ってたのねぇ? メリル」


違う意味での恐怖が身を震わせる。

袋の中身は【ポーション】だった。

ちなみにそれらは回復とかは一切関係のないものしか入っていない。

振れた相手を状態異常にする【麻痺ポーション】に【毒ポーション】。

まるで皮膚を切り裂かれるかのように傷を作る【斬ポーション】。これ作るの、扱いがすごく難しかったやつだ。

後普通に爆発を起こす【爆薬ポーション】にセットにしたら使いやすいよね例の【爆炎ポーション】もありますよ。

他にもいくつか小瓶に入ったやつが。

全部作ったはいいけど危なくて、怒られたくなかったからネアに内緒で隠してたやつだ。


「ど、どうしてこれを?」

「……ベッドの下は隠すポイントとしてはNGなのよ」

「え!?」


メリルは後でベッドの下は思春期に入る子供が物を隠しやすい場所トップ3に入る場所であることを知った。

気をつけよう。


「とりあえず。これらを使えばあんな魔物は楽勝のはずよ」

「そんなこと言われたって。だって私のバリアを一発で破るような魔物なんだよ? 魔力を五分の一も使ったのに」

「それは相性の問題よ。あの魔物。赤いけど鎌に宿る属性は【風】よ。カマイタチとかソニックブームみたいなものを飛ばすの。鋭い攻撃には水のバリアって弱いからね」

「属性持ちの魔物なんだ……」


四つ鎌さんは今四匹目のフェンリルを食事中です。

お腹すっごい膨れてるけど、まだ食べる気なんだ。


「ここで質問だけど、【風】の弱点は?」

「え? 【火】でしょ? 味方と使えばよく燃え…そっかっ」


なら【爆炎ポーション】使えば楽勝だ。

でも問題は、どうやって近づくか。

近づこうとしてソニックブームをくらったらそれまでだ。

ネアは手出しできないらしいし。

……………………そうだっ。

私は四つ鎌さんがフェンリルの肉をおいしそうに食べている姿を見てあることを思いついた。

ふっふっふ。見てなさいよ。めちゃくちゃ苦しい思いをさせてあげる。


「なーんか、黒い笑みしてるわねぇ。でも面白そうだから見ててあげるわ」

「うん」


私は早速行動に移すべく木を降りた。

音を立てなければ意外と気づかれずに逃げられた。

さあ、目にもの見せてあげるわ!






一時間が経過した。

私はまた隠れている。

いるのはさっきと同じ場所だ。

隣にはネアがいる。

四つ鎌さんはどっかいった。

でもきっと戻ってくる。

さっき四つ鎌さんがいた場所には一匹の魔物が転がっている。

フェンリルだ。

さっきとても弱いことが分かったので【斬ポーション】投げて簡単に仕留めてきた。

え? もう課題クリアしてんじゃんって? 気にしない気にしない。

フェンリルの皮膚は血を出し過ぎて、もはやただの肉塊だ。

【斬ポーション】は空気に触れてると一定時間で効果が切れるから今はもう触っても平気である。

しばらく待ってるとどうやらテリトリー内を巡回しているらしい四つ鎌さんが戻ってきた。またファングラモス連れてるよ。なんであいつは捕食されないんだろ?


「あいつらは草食だからね。ついでにボスと一緒にいれば基本安全だからよ」

「食べられないのは何で?」

「どうやらファングラモスは肉の質がとても悪いみたい。めったなことがない限り食べられないんじゃないかしら」

「猪なのにまずいんだ……」

「昔食べた冒険者いて、三日は寝込んだそうよ」

「それ毒とか入ってないよね?」

「それはないけど。あ、食べた」

「む?」


ネアの声に、四つ鎌さんの方に意識を戻す。

と、そこでは。


ビクビクビクビク


フェンリルの肉塊に噛みつきながら痙攣して固まっている四つ鎌さん。

それに集まるファングラモス。


(しめたっ!!)


流石【麻痺ポーション】三本と【状態異常促進ポーション】二本を染み込ませた肉。

めっちゃ効いてるわ!

そう、私が考えた戦法。それは罠である。

あの暴食女王様(メスとは限らない)のことだ、絶対かぶりつくと思ってたよ。

あと、ついでにもう一つ仕込んでおいたものがある。


「―――《フレイムランス》」


私は木の上から炎の槍を生み出して空中に浮かせたまま移動させる。

コントロール重視の【中級魔法】だ。


(いけっ)


脳内で指示を出して炎の槍を空中から一直線に降下させる。

狙いはフェンリルの肉。

あの肉の中には【爆炎ポーション】が瓶ごと仕込んであるのだ。

瓶は《フレイムランス》の魔法で間違いなく壊せるし、壊したら《フレイムランス》を強力な魔法に強化してくれるはずだ。


と、ここで誤算が一つ。

皆さんに質問です【爆炎ポーション】の効果は何だったでしょうか?


正解は【下級魔法】を【上級魔法】のレベルまで引き上げる、でした。

で、今メリルが使ったのは【中級魔法】。

どうなんのこれ?

そもそも【爆炎ポーション】はただの火薬とかとは根本的な仕組みが違うのだ。

【爆炎ポーション】が作用するのはただの炎ではなく【火】の属性で【魔力】ののった、つまりは魔法だけなのだ。

そしてその【魔力】に作用して『より強力な魔法に作り替える』というのが本来の能力と言っていい。

するとどうなるか。


目の前に巨大な炎の塔が立った。


ドゴォォオオオオオオオオオオオオオオオ!


「「ひゃあああああああ!」」


私達はその威力の高さに騒然とした。

半径十メートルくらいを丸呑みにして私たちは余波で吹き飛ばされた。

とっさにネアが私を受け止めて……浮いたっ!


気付けば私は空に出ていた。

視線をそらすと大きな翼が見える。

私はしがみつくように姿勢を反対にすると、やはり翼はネアから生えていた。


「本当に天使だったんだ」

「どういう意味よ!」


いえ、見たことなかったものですから。

それにしても。


「凄いもの作っちゃった」


炎の塔はようやく消えようとしていて、発動箇所は塵すら残ってない。

不思議なことにあの魔法は飛び火しなかった。

森火事になったら困るのでむしろ良かったのだが、これ、いろいろ問題あるだろう。

ていうかボスが塵すら残さず消滅って、なんだそりゃ!


「なんであんなものが普通に図鑑に載ってるの?」

「あの【ポーション】。材料が二つほど手に入りにくいのよ。ついでに作るのもタイミングとか大変って書いてなかった?」

「え……あー」


普通にできてしまったのでそんなに難しいとは思わなかったけど、この世界では難しいのだろうか?


「ちなみに手に入りにくい材料って?」

「アンブラって草とトウガラシね」


アンブラは分かる。決まった気候じゃないと育たないもんね。

けどなんでトウガラシ?


「あんた。私が天界で買って来たトウガラシ使ったでしょ」

「あっ」


どうやらこの世界ではトウガラシはとても貴重なもののようです。


「さ。試験は合格した訳だし、帰りましょ」

「あ、うん」

「さっさと私に黙って危険なことしてたお説教したいしね」


ピシッ


その言葉で私は思い出した。

そういえば忘れてたけど私ネアがいつも言ってる『危険なことはしないように』って言いつけ破ったんだった。

今回のこれは試験だから例外だとしても、【ポーション】のことは言い訳しようがない。


「いいぃぃぃやああああああ」


暴れるも、空中なので逃げられない。

私を抱えながらニコニコしてるネアがとても怖かった。


お説教は数時間続いた。



次回、学びの時間終了です。

外の世界に出ます。

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