魔物を倒しましょう
魔物回です。
ですが、鬼気迫る戦闘シーンなどは期待しないでください。
これは、そう。
卒業試験のようなものだと思おう。
安全な結界から出るのは久しぶりのことだ。
ネアが食材をちゃんと買って来てくれるようになってからは無理に狩りする必要もなかったし。
私もそろそろ十二歳になる。
死んだのが十歳と数か月たった時だから十二歳になってもすぐに出て行かなければならないってことはないのだけれど。
もうそろそろ頃合いと見たのか、ネアがカミングアウトしたのだ。
どうやら私は一人で魔物に勝てるようにならなければならないらしい。
ネアも一応監視として遠くから見てる。
私は茂みを影にして隠れながら獲物を探した。
魔物は深く入れば入るほどにその出現率を増す。
とりあえず今回の目的はポアンという名前の魔物だ。
可愛い名前が、見た目はそうでもない。
頭の先にポアの実という甘い臭いを出す果実をつけていて、それに誘われた獲物を捕食するのだ。故にポアン。
見た目は茶色い体に恐竜みたいな皮膚をしている。ラン○スだと思ってほしい。
それに頭に実が付いてるやつだ。
なんでそんなやつなのかというと。実はこのポアン。皮膚がそんなに強くない。
木に化けることが多いせいか、隠ぺい能力に特化していて防御はそんなじゃないのだ。
私は木の矢しか持っていないので、皮膚が硬いと矢が通らないのだ。
ポアの実が一つだけ付いてる木を見つければいいので探すのも簡単だし、見つけたら遠距離射撃、困ったときは魔法でどうにかなるだろう。
と、高をくくっていたのがいけなかったんだろうなぁ。
現実は甘くないです。はい。
私は囲まれました。
森の深くに行けばいくほど魔物の出現率は上がる。
自分で言ったのにね。
他の魔物に出くわさないなんて考えることが間違いだったよ。
そこにはとーっても皮膚の硬い猪、ファングラモスに狼型のフェンリルの群れ。
四本の鎌をもつ巨大カマキリ、こいつは調べてないや。でも全身が赤くて鎌はめちゃくちゃ鋭そうで、めっちゃ強そうだよ。
こいつだけ一匹だし、ひょっとしてボスかな?
やばくない?
私は全身に冷や汗をかいた。
どう考えてもこの矢じゃ無理でしょう。
ネアあああ、これ失敗だよ。もう助けてえええ。
キー、キキ
このおっきな四つ鎌さんは口当たりを泡でくちゅくちゅしながらそんな鳴き声を出した。
あれよだれ!? よだれなの?
怖い。
「―――《アクアフィールド》!」
私はとりあえず水の結界を張った。
それと同時に攻撃だと思ったのか魔物たちが一斉に飛び出してくる。
フェンリルは爪と牙でとびかかってきてファングラモスはその無駄に大きな牙で突進してきた。
四つ鎌さんはまだ動いてない。様子見なのかな?
とりあえず言っておこう。
私【水】の特性持ってて良かった。
周りの魔物は攻撃こそしてくるが結界に阻まれて全然届いてないし、この《アクアフィールド》みたいな結界系統の魔法は壊れても【魔力】が続く限り修復できる。
最初に【魔力】を多めに注いでおけばその分強固になるこの魔法は、この世界の魔法の中では例外的な位置づけの魔法なのだ。
もちろん私は多めに注いだよ。全魔力の五分の一くらい注いだよ。
だって怖いもん。
周囲の魔物は私の結界が壊せないと見るや威嚇に切り替えた。
さっさと出て来いやこらー! とでも叫んでいるのだろうか?
出て行く訳ねえだろこらー!
やったことないけど結界の中から外に魔法発動させてみようかな?
できるならやりたい。
結界は一度発動すればそれ以降は修復以外で【魔力】を必要としないし。
こっちが消す意思を示さなければ消えない。
よし、やってみよう。
となると攻撃は【火】だね。
【水】の魔法って威力低いし。第一獣相手にあまり効果があるとも思えない。
じゃあ次は使う魔法だね。
《ファイアーボール》はだめだ。あれは手のひらから発射するから結界の中じゃ使えない。
私、【火】の【中級魔法】は三つしか覚えてないから選択し少ないんだけど。
調度いいのあるからそれでいこう。
「―――《インパクトフレア》!」
爆心地を指定して、そこから炎を拡散させる魔法だ。
狙いはとりあえずフェンリルの群れ。
狙い的中。五匹ほどの群れだったフェンリルが三匹巻き込まれて燃え上った。
暴れる、暴れる。ついでに後の二匹にも飛び火した。
結界は無事だ。危険な実験だったがうまくいってよかった。
燃え上ったフェンリルたちは周囲の森に火をまき散らしながらこっちに突っ込んでくる。
なんで!?
と思ったが次の瞬間に納得する。この結界は水で出来ている。
触れた瞬間にフェンリルの体を燃やす炎を消してしまった。
フェンリルは全身をこすりつけて沈下していく。
くそう、倒せたと思ったのに。
後は森火事を心配したが【中級魔法】レベルの威力では草木の水分ですぐに消えてしまった。
と、ここでついにあのお方が動く。
四つ鎌さん。ゆっくりだが歩み寄ってきて、その大きな四つの鎌のうち一つを振りかぶる。
私はとっさに伏せた。
そしてそれは正解だった。
鎌は結界をたやすく切り裂いて、ついでに近くにいたフェンリルを四匹真っ二つにした。
マジですか……。
私は急いで結界を解いて逃げる。
ファングラモスも四つ鎌さんが動いた時には逃げていた。
あいつらはこのお方の危険性を知っていたのか。
「わあああああああ!」
私は叫びながら逃げる。
荷物は捨てたよ。重りになっちゃうし。
とりあえず本気で動いたら早そうだったので逃げ切るのは端から諦めてる。
私は隠れるように木に登った。
意外と冷静に対処してる私が不思議でならない。
私、もしかしてピンチに強いのかな?
ていうかいい加減ネア助けてよ。何してるの?
そんなことを考えながら、木の上から四つ鎌さんの様子を探る。
調度最後に残った一匹のフェンリルを真っ二つにしているところだった。
その後は……食べてるし。
かなりグロかった。
怖い。誰か助けて!
「うぅ」
「しっかりなさい」
私はその光景を見て目をそらす。するとそこにはよく知る人物。というかこの世界で唯一知る人物がいた。
「ネアっ」
来てくれたっ
長いので二話構成にします。