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私の平穏はどこにある!?   作者: 崎坂 ヤヒト
四章
43/45

目覚めと本性

連日投稿成功!

休みって素晴らしい!

評価、ブックマークありがとうございます。

今回、ちょっと裏話っぽい感じがあります。

ちなみにリック視点でお送りいたしますのでよろしくお願いします。

え? なんか性格が…と思う方は前話の閑話をご覧ください。

それでも、という方はじゃんじゃんご意見ください。作者もちょっとこれどうなんだろう? と思いながら書いていますのでそういった指摘は非常に助かります。

それでは今後ともよろしくお願いしますm(__)m

※リック視点

光が差した。

の目には白い天井が映っている。

ここは、どこだっけ?

ゆっくりと目を凝らすと傍に木の杖が見えた。

ああ。そっか。は女神さまにこっちの世界に連れてきてもらったんだっけ。

平和・・な世界に。


「おおっ、目覚めたでござるよ!」

「なぬ!? ……本当じゃっ、すぐにメリーを連れてくるのじゃ。ゆくぞ、ウール」

ワウッ


気付けば、小さな女の子たちが僕を覗き込んでいた。

緑色の髪をした子が騒ぎ出して、金色の子が白い犬にまたがってどこかに行ってしまう。

どっちも六、七歳くらいの子たちだ。

僕にもこんな時代があったな。最も、その頃の僕は彼女達みたいに笑っていることなんてなかったけど。


「ああっ、まだ起き上がってはいかんでござる。メリル殿が傷の治療をしたでござるが、まだ危ないでござる」


緑色の子がそう言って僕に注意してくる。

良い子だな~。

僕は・・・やかな思考でそっとその子の頭を撫でた。

女の子はそれに目を細める。


「むむ~、これは気持ちいいでござるな」


どうやらお気に召したらしい。

良かった。昔、ある人に寂しいとき良くやってもらっていたのだが、これは人を選ぶから。この子は甘えたがりの子だな。

ところで。


「君、あの鎧の中身だよね?」

「うむ。そうでござるよ」


やっぱりそうか。

声が同じだからそうじゃないかと思ったんだ。


「ふむ。凄いでござるな。カーダ殿と言い、貴殿と言い、どうして分かるのでござるか?」

「そうだね~。やっぱり君の言葉使いが特徴的だからかな~。そんな喋り方する子ってめったにいないし」

「ふーむ。声でござるか~。うちの里では珍しくもないでござるがなぁ」

「ははっ、その里が珍しいんだね。…君の名前は?」


素直で可愛い子だな、と思いながら気になったことを聞く。

すると緑の子は元気に答えた。


「拙者は凛でござる、師匠にはお凛と呼ばれているでござるよ!」

「リンちゃんだね。僕はリックだよ。よろしくね~」

「うむ。よろしくでござるっ」


その笑顔を見て僕は、ああ、こっちに来て本当に良かった、とそう思った。

その後、あの金色の子が戻ってきて、連れてきた赤い髪をした女性に体の様子を見てもらった。


「うん。血色もいいし、怪我はすっかり治ってるから大丈夫ね。でも三日も寝たきりだったから、今日は大人しくしてるのよ」

「は~い」

「……本当に大丈夫かしら?」


どうやらこの女性には僕の話し方はお気に召さなかったらしい。

心配されてしまった。

まあフィーナ様にも「あなたはもう少し人の感情を考えた方がいいかもしれませんね」って言われてたし。

赤髪の女性、メリーさんは僕が大丈夫だと判断するといなくなった。

後に残ったのは小さな女の子二人と白い犬だ。

ちなみに金髪の子はミーアと言うらしい。

二人は仲良しなのかな?

それを聞くと。


「そんなことないのじゃ! こ奴はウルフ達をいじめる悪いやつなのじゃっ」


うん。こっちの子も随分特徴的な喋り方をするね。

ていうかウルフ?


「その犬ってもしかしてウルフなの?」

「そうじゃ。ウールはウルフ。狼じゃ。断じて犬ではないぞ」


僕は素で驚いた。

そうか、狼か。犬にしか見えないけど。

それから僕は運んで来てもらったスープを飲んだり、二人とおしゃべりしながら時間をつぶした。

どうやら今、メリルちゃん達は用事でいないらしい。

護衛依頼中だったはずだけど、いなくなっていいのかな?

気になって長の、ヘンレさんだったかな?に聞くと「いいんだ」と諦めたような顔をされた。

何があったんだろう?


――――――――――――――――――――――――――――――――――――


それから僕は金髪の子と一緒に馬車を見て回った。

馬車はちょっと削れてたりするけど、動くのに問題はなさそうだし、大丈夫かな?

盗賊に襲われたって言うけど、その盗賊は皆グルグル巻きにされて引きずられているし、問題はないだろう。

彼らは町に着くと犯罪奴隷として扱われるそうだ。

犯罪奴隷になると一定の金額をためるまでただ働きをさせられるらしい。

場合によっては一生奴隷のままだそうだ。


「それはちょっと」

「ああ、いいんだいいんだ。こいつらだって分かってやってただろうし、覚悟くらいできてんだろ。当然の報いってやつだ」


見張りのジャンクさんそう言って盗賊たちの見張りに戻った。


(甘いな~)

内心で僕はこの世界はやっぱり優しすぎると思った。

人の命を見捨てず生かし続けるなんて、僕のいた世界・・ではありえないことだ。

捕まれば殺される。それが当たり前で、きっとこの盗賊たちも同じことをしていたのだろう。

僕はそう思いつつも、この世界の常識に乗っ取ることを選んだ。いや、選ぼうとした。


「ニャーっ!」

「へへっ、服の下に仕込んどいてよかったぜ。おい、こいつを殺されたたくなかったら仲間を開放しろ!」


盗賊の一人が縄を破ってミーアを掴み上げていた。

どうやら興味本位で近づいたところを機会をうかがっていた男に捕まったらしい。

ジャンクさんは…ああ、他にも二人ほど仕込んでいたナイフで抜け出した奴らがいるらしい。そっちの対応をしていた。

どうやら本当に機会をうかがってたらしい。…だから甘いと言うんだ。

いや、何人かは指まで縛られて本当に身動きできないみたいだけど。誰があれやったのかな?


「おい、そこの坊主! 突っ立ってないでさっさと仲間を開放しろっ。このガキを殺されたくなかったらな!」

「……ぬぅ。こんな時クロロがおれば」


ミーアは何かつぶやいて悔しそうな顔をしているが、きっと今のような状況でなかったら何か手があるのだろう。でも、もしも(・・・)の話をしても仕方ないのだ。

それにしても―――


―――ああ、やっぱり違う。彼らも同じだ。まだ甘い。僕のいた世界・・の住人ではない。


人質なんて、なんてぬるいんだ。

この状況なら『見せしめ』でしょう?


「――《サンダーボール》」

「ぎゃあああああああああ!」


(・・)身動(・・・・)きが(・・・)れない相手(・・・)に向けて放たれた魔法は、見事に直撃した。

食らった男は焼け焦げて、ヒューヒューとかろうじて息をしている。

それを見て、ミーアを抱えている男はたじろいた。


「お、お前」

「早く離してよ。でないと今度はあの人、死ぬよ?」

「こ、こここいつがどうなってもいいのか!? 俺がこれをぶっ刺せば」

「え? どうして? だってそれが君の命綱だよ? 刺していいの? 刺すと君に、僕はためらわず魔術を使えるよ。目の前で人が殺されるんだもん。なら、殺したその人がその後すぐに殺されたって、なにも不思議はないよね?」


うん。言ってることがめちゃくちゃだと自分でも思うよ。

でもいいじゃないか。だって僕は元々そういう生き方をしてきたんだから。

そういう優しくて甘いのは、あの二人の担当だと僕は思うんだ。

僕は飄々としていればいい。

時には乗って、二人に合わせて、駄目な振りをして。馬鹿っぽく見せていればそれでいい。

いや、それで良かった。


必要な時には必要な選択をしよう。

それだけの()はもう持っている。


「―――《サンダーソード》」

「!?」


男の周りを6本の剣が取り囲んだ。

本来の《サンダーソード》は一本の巨大な剣を作り出す魔法だけど、僕のアレンジを加えたそれは、大きさを小さくすることで数を増やしている。―――対人用・・・の魔法だ。


「にゃ、にゃにゃにゃっ」


ミーアちゃんもその光景に驚いている。そりゃそうだ。だってこのままだとミーアちゃんまで食らっちゃうしね。

でも大丈夫なんだよね。


「さあ、どうしようか?」

「……わ、わかっ、ぼ!!」


喋ろうとした男の頭に一本の剣が突き刺さる。

それだけで男は頭から煙を出して後ろに倒れた。


「―――《ウィンド》」

「ぬおっ」


風の魔法を使い、投げ出されたミーアを空中で浮かせ、僕の傍まで運び込む。

ミーアちゃんは倒れた男を心配そうに見た。


「大丈夫だよ~。あれは剣に見えるけど、実際は雷だからね。当たっても痺れるだけで刺さらないから」

「おおっ、そうなのか。良かったのじゃ」


この子、あんな目にあったのに全然怯えてないな。肝が据わってるのか、慣れてるのか、はたまた無知すぎるだけか…。

まあいいや。

それにしてもどうしようか?

あと5本。

せっかく出したのに無駄になっちゃったな。

そこで僕は、未だに盗賊の相手をしているジャンクさんが目に入った。

救援に来たパーティーの三人が盗賊を取り囲もうとしている。

調度いいや。

―――いけっ


「「ぎゃああああああああ!」」


盗賊の二人は、雷を受けて丸焦げになると仲良く倒れ伏した。

ジャンクさん達は驚愕の表情で僕を見ている。

それに僕はにっこりと笑顔を見せた。

僕は二人と違って容赦がないんだよ。

後の処理は彼らに任せて、僕はミーアちゃんを連れて馬車へと戻った。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――

それから僕は遅れてやってきた他の護衛の人たちや緑髪のお姉さんとあいさつを済ませた。

どうやらこのお姉さんがメリルちゃん達の代わりを務めているらしい。

馬車の隣に積まれた魔物の山は壮観だった。

これ、このまま売った方が荷物より価値高いんじゃないかな?

明らかに本来の護衛として倒すべき数を超えている。

しかも価値の高い部分以外は捨てていくと言うのだから驚きだ。


そうこうしているうちに、馬車の上に巨大な影が降り立った。

あれは、ワイバーン?


「おおおおおおいっ!」


その背中に、誰か乗ってる。

手を振っているのはカーダ君とメリルちゃん。その後ろに元気に万歳している女の子までいる。

あ、後ろでガタガタ震えてる子もいるね。


あはははっ。

いいな~、やっぱりあの二人は面白いや。

僕はもうちょっと、おバカなキャラを通そう。そう思った。

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