ネコミミ少女と盗賊と
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「お願い! ミルト君を助けてください!」
現在。空から降ってきた少女に助けを求められております。
必死な顔で、土下座をされてるわけです。
こっちの世界にも土下座ってあるんだね。
で、私のそれに対する返答は。
「うん、やだ」
拒否。
簡単だね。
「ありがっ、なんで!?」
「いや、むしろなんでOKだと思ったの? どう考えても私協力する理由ないよね?」
そもそも馬車の護衛中だし。
後、友達が盗賊に捕まってるって。……付いてって補縛パターンな気がするんですが。
「おい、なんか騒がしいけどどうしたんだ?」
「あ、カーダ。なんかまた面倒臭そうなのが降ってきたんだけど、相手してくれない? そういうの好きでしょ」
「お前、俺をどういうキャラにする気だ。……てか降ってきたってなんだよ―――おおおおぉ! ネコミミじゃねえかっ!」
あ、そういう反応なんだ。
じゃっ、バトンタッチ。はいっ!
バチンッ
「じゃ、よろしく~」
「まてまて」ガシッ
ちっ、逃げられなかったか。
ていうか何なのかな? 一難去ってまた一難?
なんで私の周りはこう、トラブルが舞い込んでくるんだろう。
「体質じゃねえか?」
「うわっ、それ最悪」
「諦めろよ。なんだかんだで騒ぎの中心はいつもお前なんだから」
「いいえ。今回に限っては私は彼女が降ってくる下にいただけで、私本人とは無関係であると抗議します」
「むしろ体質って仮説を肯定してるよなそれ」
「嫌だああああ! いくらなんでも今回のは無理矢理過ぎるでしょ!? なんで頭上に降ってくるの!? 狙いすぎだよ!」
「あっ、私はあそこの山を転がって。ほらあそこに見える崖から吹っ飛んだんだよ!」
「説明いらんわ! よく生きてたね!?」
「うんっ」
うわ~。凄い良い笑顔。
眩しい。
「獣人は魔力を持たない代わりに身体能力がずば抜けてるらしいぞ」
「そういう情報は知ってるんだね…」
「仲間に一人は欲しいと思ってたからな」
どうやらカーダの頭は『大冒険』のための知識で一杯のようだ。
スポーツマンみたいなものだね。
「……で、結局どういう事なの? 助けてって言ってたけど具体的にどんな状況なのか教えて」
「助けてくれるの!?」
「それは内容次第だね。無理そうなら引き受けない。だからそんなキラキラした目で見ないで」
まったく、そんな純粋な視線で見ないで欲しい。
眩しくて直視できなくなるから。(=薄暗い部分があるということ)
で、聞くところによると、彼女の言うミルト君は盗賊に捕まり、怪我を負ったらしい。
目の前のネコミミ、ミナというらしい。ミナは人気がいなくなったのを見計らって縄をぶち破り(なんで捕まったの?)、アジトから脱出に成功。ミルト君とやらは動けない状況で、助けを呼びに飛び出したところで山道を転がって放り出された、と。
うん。めんど
「なるほどな。よし、行ってくるのだメリル殿」
私の肩をがっしり掴んで、そんなことを言う奴がいた。
もちろん雅だ。
いつの間に……。
「あ、ありがとうっ」
「何勝手に…」
「人助けだ、メリル殿。それにこういった緊急の依頼はギルドランクを上げるのにも役立つ」
「むしろノーサンキューなんですが? ていうかそれならあんた行け」
「わっちより、治療のできるメリル殿の方が適任だと思うが?」
「護衛の依頼受けてるんですが?」
「許可をもらえばよいだろう」
「………」
「あ、うん。いいよ。好きにしてくれて」
あっさり許可が下りました。
ヘンレさぁああああああん!?
なんか色々諦めたみたいな表情で言われた。
雰囲気が気にしたら負けみたいな感じなんですが!?
あれですか!? 殺されかけたワイバーンに乗ってきたりしたからですか? それとも化け物みたいに強い侍みたいな女のせいですか?
………これ次の町で降りろって言われるんじゃない?
「では護衛の方はわっちがしかと引き受けよう」
「ああ。任せた。んじゃいくぞ」
ズルズル
ねえなんで? なんで私ってこんな巻き込まれなきゃいけないの?
なんで皆そんなにスムーズなの?
ちなみに移動手段はミーアがクロロを貸してくれることになって、ミーアのいる馬車に訪れると。
「おおぉ、メリル。いいところに来たのじゃ」
ウールとミーアが楽しそうに何かやってました。
その周りを女性陣が微笑ましそうに見ている。
一体何をやっているのか、覗いてみると。
ウールが五つあるコップの前でクンクンと臭いを嗅いでいた。
それから。
ぽんっ、と一個のコップの上に前足を乗せる。
「それでいいのじゃな?」
ワウッ
「ふむ。ではっ」
バッ、とそのコップを持ち上げる。
そこには一つのミートボールが転がっていた。
「正解じゃ~! ウールはお利口じゃのぅ」
よしよし、とウールはミーアに頭を撫でられながらミートボールにありつき、周りのお姉さんたちにも撫でられ、ほめられをしていた。
つまり中身当てゲームだ。
凄く和やかな空間である。
私、ここに混ざりたい。
が、そんな私の願いはもちろん聞き届けられることはなく。
「クロロも馬車旅じゃと退屈みたいじゃからな。調度いいのじゃっ」
快く、クロロを貸してくれました。
しくしく、と私は内心で泣き………いや、単純に諦めて遠い笑顔をしました。
ミナはそれを見て「ウル………ワンちゃん?」と首を傾げていた。
気持ちは分かります。
ガアアッ
馬車から降りてクロロを呼ぶと、クロロは嬉しそうに私の前に降りてくる。
ちなみにクロロを呼ぶときは大声で叫べばいい。耳がいいから上空でもちゃんと聞こえるのだ。
クロロはなんとなく、暇つぶしが出来て嬉しいと言ってるような気がした。
「ニャッ! ニャニャニャッ!?」
ミナは目の前に立つワイバーンに驚き過ぎて、猫語になってる。(驚きすぎて言葉になってないだけ)
あ、若干白目向いてる。
まあ、関係ないか。
「じゃあよろしくね~」(なでなで)
グルルゥ
「うん。クロロは賢くて好きだよ。ありがとね」
ガァ~♪
「……なんで意志疎通できてんだよ」
あきらめの境地に達した私が、察してくれたクロロに慰められていると、後ろでカーダが何か言ってきた。
「クロロは私の数少ない理解者だからねぇ~。伊達に手足ぶった切られてないよ」
ガァ~
私とクロロはお互い雅にひどい目にあわされたことも合って、意気統合したのだ。
若干、ていうかほとんど餌付けの成果のような気もしなくもないが…。
ここ三日はクロロがどっかから捕まえてきた魔物の肉を調理(焼いて胡椒を掛けるだけ)して、手渡すというサイクルをしている。
生肉よりずっと美味しいらしく、結果的に懐いた。
鳴き声はなんとなくで解釈している。
ハクが四六時中一緒にいるので参考にして、二体を対比すると結構仕草と鳴き声の仕方で感情が読み取れたりするのだ。
……ウールは犬の反応と同じに思えば分かるよ。
そんな訳で、私達はミルト君とやらを助けるために盗賊のアジトに突っ込むことになった。
メンバーは、私、ミナ、カーダの三人だ。
盗賊の相手は全面的にカーダに任せるつもりだ。
注;盗賊の親びんはとっくに捕まって猿ぐつわ&ロープで引きずられ中です。
※ミルト視点
洞窟の中、冷たい地面に体を倒している一人の少年がいた。
(ミナはうまく逃げられたかな?)
俺はぼーっとする視界でそのことを考えていた。
さっきまで痛かったはずの右足から、感覚がしない。
これ、本気でまずいのかな?
ミルトは猫の獣人だった。
毛並みはミナと違って珍しくもない茶色で、ミナとは幼馴染だった。
本当に小さいころから一緒で、どこに行くにも一緒だった。
でもミナはある問題を抱えていた。
『黒い毛並みの猫獣人は不吉である』という風習が、住んでいた村にはあったのだ。
猫の獣人は基本的に毛並み(髪)の色は茶色になる。
しかし、たまにちょっと変わった色をした子どもが生まれることがあるのだ。
そうした子供には、それぞれ違った意味を与えられる。
『赤なら元気』『青なら優しさ』『緑は恵み』『黄なら喜び』『白は愛』
基本はその五つで、それぞれの色の濃さとかで意味合いに優劣がつく。
そして『黒は不吉』とされていた。
何で一つだけそんな扱いなんだとミルトはずっと悔しく思っていた。
皆のミナに対する態度は歳を重ねるごとに悪くなっていった。
ミナが外にいるってだけで石を投げ、反発すれば怖がるか、怒って殴りまくる。
ミナはそのうち外に出なくなり、ミナの母ちゃんはまともに物を売ってもらえなくなった。
ミナのことを捨てて来いと言う村長の言葉に反発したかららしい。
それからもミナ達親子の扱いはどんどん酷くなり、終いには家に火を放った。
その火のせいでミナの母ちゃんは死んじまって。ミナはどうにか助かったけど、その後そのままだったらきっと殺されていた。
ミルトはそんな中、どうにかミナを連れ出し、村を出た。
獣人は力も強いし、魔物相手だって、小さいころからよく狩りをしていたから十分に戦える。
本当はナイフがほしかったが、素手でもごり押しでなんとか勝つことができた。
ミルトはミナを守りつつ、どうにか人の町へと逃げ込もうとした。
ところが、そこで嫌な現実を知ることになる。
『奴隷制度』
人を捕まえて奴隷にすることは犯罪だ。
しかし、その枠から外れた者たちがいる。裏で取引をしている者たちだ。
その者たちは捕まえた人間にありもしない罪を着せて奴隷堕ちさせるという手段を取っている。
そうすることで、表向きは犯罪奴隷ということにして、商売しているのだ。
こうした連中を『闇商人』と呼ぶ。
特に身元の分からない獣人の子どもは格好の餌食だった。
こいつらはミナがなんて呼ばれているか知らなかったけど、珍しい毛並みの獣人を見つけたって喜んでいた。
少しして、新しく狙い目の獲物が見つかったらしくて、ほとんどの盗賊が出て行ったのを機に、どうにかミナだけは逃がすことができた。
あいつ、力だけは村ん中でもかなり強かったから縄とか自力でぶち破って出て行った。
見張りぶん殴って気絶させてたし。
『助け呼んでくるから』って出て行ったのはいいけど。あいつ馬鹿だから絶対町までたどり着けないだろうし、場所も覚えてないと思う。
ミルトは膝上あたりに大きな傷を作っていた。
他にもあちこち傷を作っているが、そこは青く変色を起こしていた。
盗賊の使った毒だ。
あいつらに毒矢を打ち込まれたおかげで、まともに動くことができず、まんまと捕まることになってしまった。
危なくなったら解毒剤飲ませてくれるって言ってたけど、相変わらずその気配はない。
(くっそ)
ミナには手を出すなと言ってたお陰で無傷に済ませられたが、最後の脱出劇を見る限り、実は担いで行ってもらえば自分も脱出できたんじゃないか? と今更ながらに思っている。
(やべ……なんか目の前霞んできた)
「ミナ………」
最後に最愛の幼馴染の名を口にして、俺は目を瞑った。
願わくば、大好きなあの子が幸せに生きてくれますよう……
そしてこの少しあと、俺は恋愛とは別に運命の出会いというものをすることになる。
※メリル視点
「ニャニャーッ! 飛んでる!? 飛んでる!?」
「落っこちないでよ」
私達はクロロの上で、慌てふためくミナをよそに盗賊のアジトに乗り込む段取りを建てていた。
「で、盗賊の相手はどうにかなりそうなの?」
「そうだなぁ。まあ、あの程度ならなんとかなんだろ。――――まともな剣があれば」
「………」
ここで問題発生。
カーダの剣について。
カーダは普段大剣と、片手で持てるロングソードと盾という組み合わせを使い分けている。
しかしそのメインウエポンである大剣はクロロと凛の大技による影響で大破。
ロングソードも魔物たちとの連戦による影響でボロボロという有様だった。カーダの話だと一回鍛え直さないと間違いなく折れる。という話だった。
じゃあなんで付いてきた!?
「お前一人だと心配だしな。あ、ナイフ持ってたろ? それ貸してくれ」
「…あんた【短剣】スキルないでしょ。つかえるの?」
「【短剣】スキルはないが【剣豪】が刃物の扱いをある程度サポートしてくれるから大丈夫だ」
「…サポート?」
なんじゃそれは。
スキルってその人の技能を表してるものじゃないの?
私はそう思っていた。
スキルの上昇は技能の向上や扱える物の種類の多さが増えることで伸びていく。だからそういったその人の技能レベルを示す象徴みたいなものだと思っていたんだけど。
そういえば【調理術】とか【神速作業】もアクティブスキルという呼び方をしているが、サポートを受けているという考え方もできるな。
え? てことは……
「お前の使う弓にも命中補正がついたりするぞ。気づいてなかったのか?」
そういえば、結構適当に撃ってるのにやたらとまっすぐ飛んだりした気がする。
あと、料理も感覚的にひっくり返すとき「ここだっ」ていうのが分かったりすることがあるけど。
まさかそういうカラクリだったとは……。
「じゃあ【体術】スキルを手に入れれば、肉弾戦がうまくなったりするのかな?」
「レベル1だと持ってないやつと大して差がないから鍛えないと駄目だけどな。ちなみに【体術】は最低一か月は修行しないと手に入らねえぞ」
「……例えだから、欲しい訳じゃないんで大丈夫」
「お前、今の話聞いて取る気なくしただけだろ……」
それからカーダにナイフを渡し、突入の手順について話し合った。
簡単に言うと前衛にカーダを配置し、その後ろからいつでも弓で狙えるように私がついていく。
ミルト君がどんな人なのか分からないのでミナにもついて来てもらうが戦力には考えず、弓の射線の邪魔にならない位置で傍にいてもらう。
獣人は気配探知も優れているらしいから聞き察知の役割をお願いした。アジトの場所もそれで発見した。
道を覚えてないと言われた時は『アホか!』と思ったけど、獣人のレーダーは《ウォーターズ》で呼び出したスライムより優秀らしい。
最終手段として、匂いでも跡を終えるらしい。さすが獣人。
どうやらアジトは洞窟になっているらしいから、クロロは入れない。
だからクロロは盗賊が逃げ出さないように外で見張りになってもらうことにした。
ガアァ~
「そんな寂しそうな顔(鳴き声)しないでよ。重要な役目なんだから。それじゃあお願いね」
ガァ
キュワッ
クロロは私の胸に張り付いているハクに視線を向けて一鳴き。ハクは大きく反応した。
すると私の肩に移動し、邪魔にならない位置にしがみつく。
「ありがとね」
ガアァ
「おい、行くぞ」
「はやく、はやくっ」
「…はいはい」
私はせかされて、先に洞窟へと向けて歩き出した二人の後を追った。
十分後
ゴス、ガス
ボギッ
「ニャアアアアアアアア!」
「うわ、くるな、くるなあああ、ぼはっ」
「や、やめ、げぇ!」「ごぶっ」
「「………」」
私達は獣人の恐さを知った。
始め、私たちは当初の予定通りカーダを先頭にして進んでいた。
けれど途中で通路が分かれており、もう一つの通路から来た仲間と挟み撃ちにされてしまった。
魔法をぶっ放そうかと思った矢先、真っ先に突っ込んできた細身の男にミナが、ボゴッ、と一発顔面パンチを加えたのだ。
それで男は吹っ飛んだ。
それを機に、私は魔法で牽制し、反対側をカーダが死守。ミナが魔法で怯んだ相手を片っ端からボコっていった。
………普通に戦えるやん。
一瞬『しまったっ』と思った私の葛藤返せ。
まあ、縄を自力でぶち破ったという話を聞いた時点で大体分かってはいたんだけどね。
魔法はミナが私と敵の間で暴れるせいで中級以上の魔法が使えず、牽制程度で留めている。
カーダの方はところどころで相手に隙を作ってくれるので、そこを狙って弓を撃っている。
私は決定打がそんなにないのでほとんど二人任せだ。宝玉は強力だけど、威力が高すぎてこんな場所では使えない。
ハクは一番邪魔にならない背中に移動してもらった。ハクが役に立つようになるのはまだ先かな?
後、ミナがひどい。顔の形が変わるとかお構いなしに顔面を力いっぱい殴りまくって、戦闘不能に追い込んでいる。
おまけに適当に突っ込んでるだけだからサポートがないと何度背後を取られてるか分かったもんじゃない。
戦闘とか完全に初心者んだろうね…。
対してカーダの方は慣れてないはずの短剣を起用に使い、相手の攻撃を流し、正確に急所を狙って仕留めている。
ツボとか知ってたりするのかな?
さて。
「九人か」
倒した盗賊の人数だ。
もう少しくらいはいるだろうが、いても五、六人くらいだと思う。
大体片付いたとみていいかな?
「ロープはまだあんのか?」
「残念ながらそこまで数を用意できません」
流石に馬車にあれだけ括りつければ余りがほとんどなくなった。
ここにいる全員を縛るのは無理だ。
「仕方ねえな。布でも何でも使って、手足だけでも縛り付けんぞ」
「了解」
「ニャッ」
盗賊たちは手足を指までしっかりと結び逃げられないようにしてその辺に転がしておいた。
中には顔がへこんでいる者もいたが、息はしていたようなので放置。
ミナの手はいっぱい殴って皮が剥けていたので《ヒール》をかけておいた。
後はミルト君とやらが捕まってる場所まで行くだけだね。
ちゃんといればいいんだけど。
その先で私が見たのは――――――全身ボロボロになった棒切れだった。
町に……着きませんね。
すみません! 次回! きっと次回には着くと思いますから!




