初めての魔法
この度初めて評価を貰いました。
高評価だったこともあり、読んでもらえたことだけでも感激です。
どうかこれからもお付き合いのほどよろしくお願いします。
天使に連れてこられたのは外。
とは言っても家から出てすぐのところだが。
少し視線を向ければ玄関がある。
こんなところで魔法使って大丈夫なのだろうか?
「あの家は女神様の力で守られてるから大丈夫よ」
そんなメリルの心配は天使の一言で解消した。
あれ? それなら別に家の中で使っても問題ないんじゃ……?
「残念ながら家具はその限りではないの……、ちなみに天界から持ってきたものもあるからもし壊したら」
「怒られるの?」
「いいえ。単に弁償を求められるだけよ。私のお給料から差し引かれてね」
天使は、くっ、と視線を逸らした。
天使って給料でやるものなんだ……。
「とにかく。そんなことになったらせっかくあなたの世話が終わってからのご褒美バカンスが金策稼業に変わってしまうわ。そんなのは困るのよ!」
天使は握り拳を作ってそんなことを叫んだ。
これ、言っていいことだったのか?
なんだか天使ってそういうものなの? という疑問がメリルの頭の中をグルグル回る。
「まあ、それはともかく。【中級魔法】を見せてあげるわ」
おっ、やっとか。
メリルは頭をパッと切り替えて、天使の動きを食い入るように見つめる。
天使は家の反対にある木に狙いをつけて手をかざした。
「本来、天界人である私たちは【魔法名】を言わなくてもいいのだけれど、今回はあなたに教える必要があるから工程を追って説明すわ」
言って、天使の手のひらには光の粒子みたいなものが生まれる。
「これが【魔力】よ。全身から必要な分だけ一点に集めるの。必要以上に集めてもその分は霧散してしまって無駄になるから、ここは要練習ね」
どうやら【魔力】は込めれば込めるほどいいという訳ではないらしい。
結構魔法を使うのは難しそうだ。
「次に集めた魔力を【魔法名】で自分の使いたい魔法に変換するのよ。今回は【中級魔法】で
―――《サンダーボール》ッ」
ヒュンッ
バキバキ
【属性】が【雷】のせいか、音はしなかったが手から放たれた雷球は木に命中し、焦がすと同時に、木の幅にして半分ほどを破壊した。
それによってその木はそのまま立ってることができず、メリルたちに向けて倒れてきた。
幸いにも木は先端がメリルに届かない位の高さと距離だったので怪我はないが、結構な太さの木が倒れたのでびっくりした。
「これが【中級魔法】の威力よ。どう? 見てみた感想は」
「うーん。これが【下級魔法】くらいだと思ってた」
「あなたが知ってるゲームとかだと《ファイアーボール》とかが最初の魔法になってるのでしょうけどね。そんなものが普通に生活してる人たちが皆使えたら大変よ」
「確かに」
「【下級魔法】は言うなれば【生活魔法】の部類と言ってもいいわ。どこからともなく飲み水を出せて火を起こせる。そういう意味じゃ、あなたの特性は特にそっちの傾向が強いわね」
「えー」
「まあ、強力な魔法が使いたいっていう子供の気持ちは分かってるつもりよ。でも、きっといつか思うはずよ。こんな便利な特性でよかった、って」
天使のその言葉は、なんとなく過去に何かあった感を思わせる。
「ところで…えと。天使、さまの特性は【雷】?」
「ええ。私の場合はそれだけよ。他には何もないわ」
つまり特化型ということだ。
メリルは一応汎用型になるのだろうか?
ときに思ったことがある。
「私、天使さまの名前知らないんだけど」
「え? ああ、そういえば名乗ったことないっけ。あなたに名前を付けたはいいけど二人だけだし呼ぶことはほとんどなかったものね。
私の名前はネアよ。正式名称はもっとずっと長いから覚えなくていいわ」
ネアはそう言うと、メリルに近づいてお腹のあたりを差した。
「さっ、まずは【魔力】を感じることから始めるわよ。お腹のあたりが一番感じやすいからそこに意識を集中なさい」
いきなりかよ。と思わなくもなかったが言われたようにする。
集中しやすいように目もつむった。
すると、ちょんと触れられる感触があって、腹のあたりが温かくなった。
体の中にある『何か』がそこに集まってくる。
「今は私がそこに集めさせてるけど、自分でできるようにするの。感覚は教えたからやってみなさい」
「わかった」
ネアの説明は意外にもかなり分かりやすいものだった。
実際に体感させることでイメージも付きやすくなり、ちゃんと聞けば過程も教えてくれたので魔力を感じるのにそんなに時間はかからなかった。
「できたわね。じゃあ、次は実際にやってみましょう」
「よっしゃ、きたああああ!」
ビシッ
「ぐっ」
「言葉使い」
「…ごめんなさい」
またデコピンを受けてしまった。
「じゃあ使う魔法だけど。魔石の結果を見る限りだと、あなたはどちらかと言えば【水】の特性の方が高いわ。まずはそっちから覚えましょう。【火】よりも危なくないし」
「はーい」
「じゃあ、今度は手に魔力を集めてみなさい。イメージは体の血をそこに流すと思えばいいわ」
「うん」
言われた通りにする。
手のひらに光が集まってきた。
でもこれ、実は見えてるとだめらしい。
鮮明に見えると言うことはその分だけ無駄が多いということのようなのだ。
後でネアに言われて魔法の難しさを痛感した。
「じゃあ、【魔法名】を教えた通りに言ってみて」
「―――《ウォーター》!」
ジョバァァァアア
「へ?」
なんかものすごい量の水が手のひらから噴き出してきた。
しかもこれ……止まらない?
「馬鹿っ、すぐに魔力の供給を止めなさい!」
「え? え? どういうこと?」
「いいからしなさい」
「え? でもなんか勝手に集まってる……し。………………れっ?」
なんだか急に脱力感に襲われてメリルは膝を折ってしまった。
それでも水の吹き出しは止まらない。
ネアが何か叫んでいるがうまく聞き取れない。
メリルの視界はそのまま暗くなった。
ちなみに前話でネアが使ったのは【下級魔法】です。
名前はまだ決めてませんが、帯電系です。




