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私の平穏はどこにある!?   作者: 崎坂 ヤヒト
三章
37/45

侍が起きました(不貞腐れちゃったドラゴンなだめます)

※カーダ視点

さっきの悲鳴(絶叫)は、メリルだよな?

俺は襲い掛かってくる魔物たちを捌きながら、その声のしてきた方に意識を向ける。


「なあ、さっきのって」

「師匠が起きたでござるっ!」


凛は嬉しそうに叫ぶと、おもむろにカーダから降りた。


ガシャン


凛は足の部分にだけ鎧を生み出し、地に降り立つ。


「そんなことできたのかよ…」

「魔力が少し回復したでござるからなぁ。万全ではないでござるが、この場は一掃するでござるよ」

「できんのかよ…」


ならもっと早くやってほしかった。


「とりあえず敵を一か所にまとめてほしいでござる」

「あいよっ」


俺は魔物を一体ずつ攪乱し、注意を惹きつける。

どっちみち残りは十体くらいだ。それくらいなら、やれる。


「いいでござるよ! まっすぐ撃つでござる!」

「了解…」


なんか俺、いいように使われてねえか?

そうは思うが、魔法による殲滅はありがたいので凛のサポートに回る。


「――《エアロバースト》っ」


それはカマイタチによる突風だった。

巻き込まれた猿や虫型、虎型の魔物が全身を切り裂かれてその命を終える。


「これでせっしゃにもクエスト報酬が入るでござるっ」

「お前、そっちが目的か!」


やっぱいいように使われただけだった。




※メリル視点

和服の少女が目を覚ましたみたいだ。

(本当に寝てたんだこの人)


「ふむ…ふむ。ひょっとしてわっち。またやってしまったか?」


知りません。

ていうかもう…本当に気力とか体力とか魔力とか全部出しきっちゃって、立つこともできそうにないんですけど。


「いやー、すまんなぁ。そちらの幼子は……魔物の使役者か。きっと間違えて襲ったのだな……うむ。すまない、まさか人がいるとは思っていなかった故」

「な、なんじゃ!? く、くるな! 来るでないわ。止まるのじゃあああ!」

「むむむ。幼子に怖がられるのは……なかなか来るものがあるな」


その気持ち分かります。

ミーアに怖がられるといろいろ感じるよねぇ。

歯磨きとかだと逆に可愛く思うけど。


「むー。これでもわっち、弟子にお主くらいの子どもがおってな。子供の扱いは慣れている方だと思っておったのだが…どうやら印象が悪いようだな」


そりゃ、あんだけ暴れれば誰だって怖がるでしょうに。

おまけに自分の使い魔を危うく殺されかけたのだから当然だ。

私もかなり死にかけたし…。

一時的に腕が一本もげた時は本当に辛かった。


でも、なんだか……これ以上の戦いはなさそう。一安心かな?

原因とか不明な点が多いけど、とりあえずこの人は、起きてるうちは襲ってくることはないようなので。


バタッ


もう限界。


「むっ!? おい! お主大丈夫か!? しっかりしろ!」


べしべしっ


痛っ! ていうか限界なんだよ! 寝かせてよ!

何なのこの人っ! 本当に空気とか読んでくれないかな?


「いったい! 離せこんにゃろぉ!」

「おお、目が覚めたか。良かった良かった」

「良くないわ! こちとら体力の限界で一度休もうって時に追い打ちですか!? あんたどれだけ私追い詰めれば気が済むの!」

「う、む…まさかそんな返しをされるとは思ってなかったぞ。しかし状況を説明できそうなのがお主くらいしかいないのだ。わっちは今起きたばかりゆえ、状況がいまいちわかっていない。あっちの幼子は怯えて話にならないのだ」


全部あんたの自業自得です……って言ってやりたいけど。なんか訳ありっぽいなこの人。

私は仕方なく思い瞼をどうにか開いて【アイテムボックス】から【マジックポーション】と【ヒーリングポーション】を取り出してがぶ飲みする。

これでギリギリ意識が持つかな?

とりあえず魔力は大分回復してるし。


「はぁ」

「それでこれはどういう状況なのだ?」

「うん。あなたに襲われてクロロが全身もげまくって、私の腕ももげたけどどうにかくっつけてようやく追い詰めてぶっ殺せるかな? って思った途端にあなたが起きて無事に生還しやがった。以上」

「うむ。嫌われているのがよく分かる説明であったな…仕方ないとは思うが」


ええ。そりゃもちろん。自分をあともう少しで殺しそうだった相手といきなり仲良くなんて出来ませんって。

で。

状況は死屍累々。

ウルフ達は全滅。でもクロロよりは手加減みたいなのされてるのか死んでるのはいないね。

クロロももげてるだけでパーツはあるから宝玉使って治せそうだし。一応どうにかなるかな?

この人には全力で手伝ってもらおう。


「そう睨まれると辛いのだが…むむぅ。なかなか難しいものだな。あ、わっちは雅だ。よろしく頼むぞ」

「雅……え? なんか日本人みたいな名前」

「ニホンジン? なんだ、それは? わっちの一族は代々こうした名前を先祖回しで名付けられる風習があってな。わっちの雅という名も先祖から貰ったものだ」

「…ふーん」


てことは、先祖は日本人で名簿みたいなの作った後、それを後世に残したってところかな?

天使から貰った名前を使い続けるかどうかも基本は自由だろうし。

なんかこの人の服装を見ると形から入る系っぽいけど。

もしかして時代劇のコスプレ好きが異世界に来て、はっちゃけた結果……とかじゃないよね?


「なにやらおかしな想像をしておらんか? して、お主の名前はなんと?」

「……メリル。あっちの子はミーア。で、全身バラバラになってるドラゴンがクロロ。今、ミーアが頑張って治療してるところ」

「う、うむ。それについてはすまなかった。わっちにできることがあったら何でも言ってくれ」

「え? じゃあ死んでくれる?」

「……………わっち、生まれてこの方ここまで泣きたくなったことはないぞ」

「どうでもいいけど前隠したら? 丸見えだけど」

「おっ? 本当だな。男児がおらんで良かったわ」


雅は丸見えになっている和服を着つけ直した。…まだ緩いけど。


「もっときつく締めなよ」

「これ以上きつく締めると動きにくいでな」

「そうですか…」


もうこの人の相手疲れてきたんですけど。誰か変わってくれないかな?

そう思った時だった。


キュワ~


後ろの方から、そんな可愛い鳴き声が聞こえてきた。

うん? この声にちょっと聞き覚えが………て。ああっ!


「ドラゴン!」

「なにっ?」


背後を振り向くと、そこには卵の殻を被った両手のひらくらいのサイズの白いドラゴンがちょこんと座っていた。


キュッ、キュア~


そういえばすっかり忘れてたね。

本当はこの子を迎えに来たはずだったのに。

私はゆっくりとそれに近づき、両手を差し出す。


プイッ


「ありゃ?」


えーっと、どういうことこれ?


「ふむ。ドラゴンは生まれたばかりでもある程度の知能はあるらしいと聞く。ひょっとしたら放置されたのが気に食わなかったのではないか?」

「え~。それじゃ、ミーア! 出番だよ! ミーアのテイマーの資質使って、この子あやして!」

「ぬっ!? わしか? クロロちょっと待つのじゃ、すぐ戻ってくるかの。わしにまかせるのじゃあああ!」


ミーアはドラゴンが無事に孵ったこともあってか、嬉しそうに走ってきた。

しかし。


キュアアアアアアアアア


盛大に拒絶された。


「何故じゃ!?」

「卵の時、投げ捨てられたからじゃない?」

「そういえば……でも待つのじゃ! それまではあんなに一緒にいたのに、それだけで拒絶されるのは嫌なのじゃっ」


ミーアはそう言って手を伸ばすが。


キャウ、カプ


「っ、~~~! 痛いのじゃ~!」

「へー。ドラゴンて生まれたばかりでも歯があるんだ」

「知らなかったな」

「うぅ。どうしてわしが拒絶されるのじゃ~」


うーむ。これはどうしたものか…。

駄々っ子はミーアで十分なのだが、ここにきて追加投入とか。

ご飯で釣るとか?


「ミーア。ドラゴンの子どもって何食べるの?」

「んぅ? ドラゴンの赤ん坊は何も食べんぞ。必要なのは魔力じゃ。小さい間は親から魔力を貰ってそれで育つのじゃ」

「なるほど」


じゃあ試しに。


「あっ、待つのじゃメリル!」

「へっ?」


ペロッ


私が指先からちょろっと魔力を流すとドラゴンはそれを指先ごと舐めた。

ほわっ。なんか犬みたい。

って思ったら急にドラゴンに異変が!


「ああっ!」


あれ? なんか色が青っぽくなって、ツルツルだった頭からは二本の青い角が生えだしたんですけど。

ついでに氷のヒレみたいのまで生えて。


水色の鱗に氷のヒレのついたドラゴンになりました。


「えーっと、なにこれ?」

「ドラゴンは生まれたばかりの時はみんな同じ姿なのじゃ。でも最初にもらった魔力でその姿を変えるのじゃ。本当はクロロみたくダークドラゴンにするつもりだったのじゃが…。どうやらメリルの魔力を吸ってブリザードドラゴンになってしまったようじゃ」

「それはほんとごめん。で、でも種類が決まっただけでしょ? ゆっくり調教していけばいいんじゃない?」

「むー、そうじゃのう。よし、お主の名前は水色じゃからミズロ『ガプッ』にゃああああああああ!」

「嫌らしいな」


ていうかミーアのテイマーとしてのセンスが疑われてきた気がするんだけど。

にしても名前ねぇ。私もそんなにセンスある方じゃないけど。

ブリザードからとってリザ。でも人の名前みたいだからリーザでどうかな?


「リーザ」


キャッ?


「リーザはどう?」


キュ、キュキュゥ


なんかもう一声みたいに聞こえるんだけど。

ていうか自分の名前に意見するくらいの知能が生まれたばかりである、って何?


「うーん。リー、リーナ、リース、リーン。逆でルーザ、サーザ、ミーザ、こっちは特にしっくりこないね。ブリザードじゃなくてもアイスとかからとってもいいか。アリザ、アザード、イリス、あ完全に人の名前だこれ。じゃあ」


キャ~


私が考えていると、ドラゴンは待ちくたびれたとでも言いたそうに鳴いた。

その際に白い息が出てるのがなんかため息っぽい。

……白い息?


そっか、ブリザードドラゴンて氷のドラゴンだもんね。息も冷たいんだ。

…………そもそもなんで私の魔力で氷のドラゴンになった?

いや、今はいっか。

でも。うん。そっか。


「別に氷じゃなくてもいいかも。ハクっ! これでどう?」


キュッ、キュア~♪


おおっ、初めて甘い声を出した。

気にったのがすぐにわかるね。


ハクは嬉しそうな感情を露わにすると、小さい羽をパタパタさせて(まだ飛べないみたい)私の手のひらに乗ってきた。

おお~。これは可愛いね。


「て、あ」


気付いて振り向くと、そこではミーアが大粒の涙を流して泣いていた。


「酷いのじゃ。どうしてじゃ、どうしてわしに懐いてくれんじゃ。ずっと、卵の時から一緒にいたのに、どうしてなのじゃあ~、ああああああ!」

「えと、どうしよう?」

「わっちに聞かれても困る」

「ですよね~」


さて、本当にどうしようか。

こればっかりは生き物だし、プリンの時みたいにはいかない問題だ。

まあ勝手に魔力あげて名付けたりした私も悪いとは思うけど。ハクがそれを望んだようなものだし。

うーん。


グルゥ~


「ん?」


この鳴き声はハクじゃない。

もっと重い鳴き声だ。


「クロロ?」


グゥ、ガアア~


クロロは、四肢がもう繫がっている。とはいえまだ弱っていることには変わりなく。立ち上がらず、左右の翼を使って、這うようにして近づいてくる。


「うぅ、クロロ。どうしたのじゃ『ペロッ』のわっ!」


グァア、ガア~


クロロは泣くミーアに額をすり寄らせ、優しい鳴き声をだす。

それはまるで『自分は傍にいる』とでも言っているようで。


「クロロ。うむ。そうじゃな。相性のいい相手と悪い相手がいる。自分で言ったことじゃった。わしにはクロロがいるのじゃっ」

ガア~♪


「クロロはできたドラゴンなのだな」

「一応種族はワイバーンなんだけどね」


キュア~。スリスリ


どうやら私の方はハクに気に入られたらしい。

名付けしたからかな?

でも…。

チラッ


「仕方ないのじゃっ。メリル、わしが見張るので、その子をしっかりと育てるのじゃ!」


良かった。ミーアは聞き分けてくれる子だ。

で、これからのことだけど。


「クロロはやっぱり、しばらく休憩かな?」


ガアア~


弱弱しい鳴き声だ。

これはすぐに飛び立つのは無理そうだね。


「一応回復しとこっか。――《ハイ・ヒール》」


宝玉を通して魔法を使うと、青い光は今まで見たこともないほど大きな輝きを放った。

すると。


「うわっ」


ガアアアアアアアアアアアアアア!


クロロは大きく翼を広げて叫びあがった。


「もしかして、もう全快?」


ガアアアッ


これは回復魔法がすごいのか、宝玉がすごいのか。……宝玉だろうなぁ。

まったく、ネア様様だよね。

ならこの調子でウルフ達も………ぐらっ。


「え、あ」


どしゃっ


「メリル!」

「大丈夫か?」


地面に横になった私は、雅によって抱き起される。


「あ、あー、だい、じょうぶ。これただの副作用だから…」


そういえば忘れてたけど、【ブーストポーション】の効果切れがあったんだ。

これ、一度効果が切れるとその後ろくに動けなくなるんだよね。

おまけに――ズキ――きた。


「うっ、けほ、えほっ」

「大丈夫か?」

「えふっ、あ、うん。ごほっ、だい、えふ、じょぶ」

「全然そうは見えないのだが」

「ずぐにおざま、ごほごほっ」

「しゃ、しゃべるな。ゆっくり横になるのだ。……副作用といったな。もしやわっちのせいで何か使ったか? あ、いやしゃべらなくてよいぞ。独り言だ」


ええ、そりゃ使いましたよ。

後の副作用がとんでもない劇薬を。

だからさっき早く寝かせてほしかったのに。

今、私の中では副作用によるダメージを内臓や組織が必死に耐えているところだ。

ウルフ達には悪いけど、回復はミーアに任せるよ。私は眠る。かくっ。

今度ははたき起こされませんように。


※カーダ視点

今の雄叫びは―――間違いねぇ!


「メリル!」

「む、なんじゃ!? また新手か?」

「ふむ。迷惑をかけたようだし、わっちも手を貸そう」


俺が飛び出すと、そこでは着物を着た俺より少し年上くらいの姉ちゃんと、凛と同じくらいのガキがメリルを囲むようにして立っていた。

しかも――――なんでいやがる!

ちっこい方の背には、ワイバーンが立っていやがった。

おまけに両方臨戦態勢だ。


「おい凛。凛?」

「師匠~」

「ん? おお~、お凛ではないか。元気にしておったか?」

「うむ。みんな良きお方たちだったでござる」


凛はそう言って、姉ちゃんの胸に飛び込んでいった。それと一緒に足の鎧が消えて、それを確認すると姉ちゃんが凛を抱っこする。

つまり、この姉ちゃんが凛の師匠ってことか……似てるな。

ていうかほんと、瓜二つだ。

その姉ちゃんは凛を足付けてそのまま大人にしたような人だった。


「それは良かった」


つーか、すげえ美人だ。

ちびっ子二人も綺麗な顔だし、メリルも合わせてここの空間レベル高くねえか?


「お主、何者じゃ? メリルのことを呼んでおったが、知り合いか?」

「うおっ」


いつの間にか、ワイバーン従えたガキが俺に迫っていた。

わずかに距離を取ってる当たりは警戒されてるってことか。


「俺はカーダ。メリルの仲間だ。ちょっと訳ありでな。ここまで探しに来た。連れてっていいか?」

「駄目じゃ」

「よし、そんじゃ…って、はあ!? なんでだよ!」

「メリルはわしが連れていくのじゃっ。それにメリルには明日もプリンを作ってもらわねばならぬ。わしと離れるのは許さないのじゃっ」

「プリン? つーかお前なんなんだよ? 後ろにワイバーン連れてるし」


俺が聞くと、ガキは急に、ふふん、と鼻を鳴らした。

なんかちょっと腹立つなこいつ。


「わしはミリーシア・デルロード・サティア。魔王の娘じゃっ」




「は?」

何馬鹿な事言ってんだこいつ?

一先ず次回でこの森の中での騒動は終わりです。

本当はこれを三話くらいで済ますつもりだったのですが思いのほか長くなってしまいました。

この先の話もできるだけ早めに投稿できるように頑張りますのでどうかこれからもよろしくお願いします。m(__)m

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