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私の平穏はどこにある!?   作者: 崎坂 ヤヒト
三章
35/45

眠れる侍(本当は起きてるんじゃないの!?)1

この度、タイトル変更を行いました。

正直微妙と思う方も多いと思います。そう言う方はじゃんじゃんご意見ください。

より良いタイトルを考えます。

今回二話構成です。ついでに初のガチバトルです。

皆さんにお楽しみいただけたら幸いに思っています。

それではどうぞっ

12/23内容を一部編集しました。

キャラぶれが酷くてすみません。m(__)m

※メリル視点

さてと……。

うん。迷った。


「…………」

「メリル?」


ミーアが心配そうに見上げてくる。

私はそれに笑顔を張り付かせてどうにか耐えた。


「い、いやー。だって森だよ? いくらスライム達がいなくなった方角に向かうからって言っても方向感覚とかおかしくなるし…」

「……迷ったのじゃな?」

「うん…」


ミーアにじとっとした目で見られるとちょっと辛いなぁ。

やっぱり小さい子のじと目って堪えるものがある訳ですよ。

なんだか年上の尊厳とか色々と失っているよな気がして。

なんとなくミーアの前では出来るお姉さんでいたくなったというか。感覚的に。

私って昔から年下相手にしたこと無いんだよ。え?そうなの?って思うかもしれないけど、はい。マジです。周りに一緒にいたのって同年代かちょっと年上が多かったので。

向こうにいたときはゲームとかの集まりばかりだったから、親の許可とか取ってくる必要があったし。そうなっちゃうんだよね。

だけどなんとなくどう扱っていいかは感覚的に分かって、実際うまくいってるからそのまま続けたくなる気持ち。わかる? ほらちょっとした優越感があって―――以下略

という訳で、私はミーアに出来るお姉さんと思われたかったんです。


間違っても迷子になるような人に見られたくなかったの!


「……どうしよっか」

「大丈夫じゃっ」

「え?」

「この森は元々ウルフの住家じゃからのぉ、ウルフ達に道案内させれば問題ないのじゃ」


ああ、そういえばそうだったような。

もともとウール(メリルが最初に出会ったウルフ。歩いているうちに暇だったので名前をつけた)に案内して貰ってたんだしね。

…ん?


「あ、そっか! 案内してもらえば良かったんだ」

「ぬ?」

「―――《ウォーターズ》」


私は新しくスライムを召喚して、五体を並べる。

ちなみにこのスライムを召喚する魔法だが、召喚魔法という括りで呼ばれている。

この魔法は実は魔力で生物を作っている訳ではない。この子達はとりあえず動くためのコアとして、体内に核を持っているが大元はどっか別の場所にあるらしく、私の魔力に反応して肉?体を形成して現れるのだ。

そのため一度壊されても記憶は残る。

故に。


「卵はあった?」


コクッ(体二分にして首芸)


「おお~♪」

「本当に便利じゃのぉ。その魔法」


ミーアが、いいなぁ~、という目で見つめてくる。よしっ、尊厳回復!

それにいいことが聞けた。

てことはそこまでいければ卵のありかまで楽に進めるかも――


トントン


「え? 何?」


頷いているスライムとは別のスライムに突かれて私は―――嫌な予感がした。

パターンになってきたよね。

スライムにつっつかれて何かに遭遇。って感じで。

特に今回はスライムを全滅させた奴に出会う可能性が非常に高い訳で。


スパンッ


目の前で一体のスライムが真っ二つになった。


「え?」


突然のことで思考が追いつかず頭が真っ白になった。

目の前ではスライムが液体となってその場に―――


て、いやいやっ。動かなきゃ駄目でしょう!

止まったのは一瞬だけで、私はすぐに立て直す。

きっと【思考】のスキルが働いたのだろう。このスキルがあって助かった。

私は急いでミーアを引き寄せようとする。

がっ。

ミーアを引き寄せて木の影に隠れ――ようとしたらその木が倒れてきた。


「なっ」

「にゃああああああああ!」


私はどうにかふんじばってその木に潰される前に通過する。

ゴロゴロ転がるが、なんとか腕の中のミーアには無傷で済ませることができた。


オオオオオオン!


私がほっとしているとウルフ達は何かを探知したのか一方向へと駆け出して行く。

もしかして―――敵?


「っ、待つのじゃ!」


ミーアは慌ててウルフ達を止めようとするが、遅かった。


ギャウッ

キャオー

キャンキャンッ


ウルフ達は弾かれるように打ち上げられ、体中に傷を作っていった。


「なにこれ!?」

「嫌な風じゃ! またきたのじゃ!」

「え、風なのこれ?」


なんか、私の思う風と明らかにイメージが違うような気が…。


「よく分からないのじゃ! じゃがとにかく一杯切られるのじゃ。これが木の身の近くで起きたせいでご飯が食べられなかったのじゃっ」


ミーアは両目に涙を一杯にしながらまくし立てる。

なるほど。

確かにこんな現象が起きてたんじゃ、その近くには行きたくないよね。

物音がしないのが余計に怖いし。


――――さて、どうやって切り抜けよう。


私は思考を巡らせる。

慌ててる場合じゃもうないね。

今わかってることは、とにかくどこにいてもこの《ソニックブーム》みたいなのが飛んでくるので逃げ場がないこと。さらに今、それはウルフ達に集中して放火されていることだ。

ミーアは魔物の使役、サポートに優れた術師だ。

魔物とほぼ同じと言われる【闇】の魔力を保持していて、ウルフ達を硬化、速度上昇の付与状態に常時している。

しかし、そのウルフ達はみんな宙を舞ってしまっている。

つまり相手は速度が上がっているはずのウルフに攻撃を当てられるほどの反応速度を持っているということで。

―――――相手は人

それもかなりの熟練。でも見境なしに襲ってきている。

『狂乱』という状態異常がこの世界にはある。

モンスターの毒の一種で、理性を吹き飛ばし頭を回らなくさせるのだ。同時にあらゆるリミッターも外れる。この状況には適した原因だともいえる。

ちなみに放っておくと死にます。脳細胞がどんどん毒に侵されていくからね。食らったらすぐに治療しないとまずいんだよ。


でもこれは今回はないと思っていい。

理由は《ソニックブーム》は魔法の一つだから。脳細胞が侵されているのに集中が必要な魔法をガンガン使える訳がないのだ。

次は…考えたくはないが、狂乱者。ただの暴れたがりだ。

こっちは否定のしようがない。

正直逃げたい。

ミーアも一度は逃げられたんだし、見逃してもらえないかな?


と、思った途端に刃が頬を霞めた。

うん。戦闘不可避だね。


で。ここで嫌な重大発表があります。

私が普段、こういう状況から身を守る際に最もよく使う手段。防御魔法の《アクアフィールド》が利用できません。

理由。斬撃系に弱いから。以上です。

魔法の相性が悪い。これは痛いよね。


「―――――は~。戦闘は得意じゃないんだけどなぁ」


私は一応のメイン武器(の割にはあまり使ってない)である弓と矢筒を取り出す。

矢は町で買ったので木ではなく鉄製だ。あ、先の部分だけね。

とりあえず人間相手ならこれで大丈夫でしょ。


「ミーアは隠れててね」


私はミーアを茂みの下に隠れさせる。

ミーアは涙目で見上げてきた。


「メ、メリルぅ~」


あ。やばい。可愛い。

抱きしめたくなりました。←戦闘前の緊張感にやられてちょっとおかしいです。


「大丈夫大丈夫。ちょっと行ってくるね。あと、できれば早くクロロを呼んでほしいかな?」

(隙を見て逃げられないかな?)


間違ってもミーアには聞かせられないことを頭の中で考えながら私は装備を整える。

私は矢筒の中にポーションを流し込み、グローブをはめる。

入れたのは【麻痺ポーション】。

これが掠った時点で相手の動きは大分抑えられるはず。

私は意を決して踏み込んだ。



※ミーア視点

む、む~。

ウルフ達は風の正体に気付いたようじゃが、あの威力、見るからにひ弱そうなメリルではひとたまりもないのじゃ。


「――《ダークコール》」

(クロロ~、頼むのじゃ~!)



※メリル視点


「ふぅ。よしっ」


まず、準備する矢筒は二つ。どっちにも【麻痺ポーション】準備済みだ。

私はその中身を全て掴む。

そして。


「――《ウォーターフィールド》」


弓の弦に魔法をかけ、面を広げる。

全弾、総射!!


それはまるで矢の雨を見ているような光景だった。

ウルフ達は吹っ飛ばされて今はいない。

いや、一匹だけ私の傍……というか後ろに隠れている子はいるけども。

最初に案内してくれた一匹、ウールと名付けた子だ。

この子は臆病な性格らしく、自分から戦闘を仕掛けるようなタイプではないみたいで、一匹だけ私から離れようとしなかったのだ。

最初の出会いで襲ってこずに降参してたくらいだし。

まあ、戦力にはカウントできそうにないね。仕方ない。


―――――さて。あぶり出せたかな?


元よりこの程度で決着がつく相手だとは思っていない。大量の矢を撃って、相手の位置を割り出すのが目的だ。

ウルフ達を吹っ飛ばしていたことを考えれば、あれくらいの矢なら、きっとどうにかしてしまうはずだ。

その見解は正しかった。

矢の雨の中から出てきたのは緑色の髪をした一人の少女。山吹色の着物を着た刀を持った女の子だ。

(てっきり魔法使いだと思ってたけど、魔法剣士の類かぁ。面倒だな)


使う魔法が《ソニックブーム》だけという点を考えればその可能性も確かにあった。

クレスやあの全身鎧みたいに剣に属性を乗せる魔法があることを知ったばかりだ。

剣をつえの代わりにして魔法を放つくらいは出来てもおかしくない。

おかしくはないのだが……。


「近接戦闘とかマジ勘弁なんだけどっ」


そう。もし近接戦闘になったらメリルに勝ち目はない。故にその可能性を考えたくなかったのだ。

まだ魔法使いだったら、詠唱妨害、攪乱、魔力切れなど様々な手があった。

けれどそれに加えて突っ込んでこられたら、身体能力が平凡な一般人となんら変わらないメリルに勝機なんてあるはずがなかった。


「―――《ウォーターミスト》」


発生させるのは白い霧。

目くらまし兼ジャミング魔法だ。

【水】の魔法は防御と回復に優れた魔法だ。

代わりに攻撃力は低いが、防御には何パターンかの魔法が存在する。

例をあげるなら、面での攻撃に強く、強度で言えば一番高い《アクアフィールド》

それを小型にして、変形及び移動させられる《ウォーターフィールド》なんかがあげられる。

まあ、これらは物理の話。今回使った《ウォーターミスト》は魔法をジャミングする効果を持った魔法用の防御魔法だ。

まあ、完全に防げるわけじゃないんだけどね。

白い霧の中で、わずかに空気の揺れが起きた。

(きたっ)


それはまっすぐ私に向かって飛んでくる。が、さっきよりもスピードが遅い。

私は横にバックステップを踏んでかわす。

《ソニックブーム》は背後にあった木に激突。するも、軽くえぐれるだけにとどまった。

これが《ウォーター・ミスト》の能力、威力低下だ。白い霧が触れた魔法は問答無用でその効果を弱体化させられる(【水属性】だけは魔力の種類が同じなので別)。敵味方問わずなために仲間がいるとなかなか取れない戦法である。

でも。


「そこっ」


麻痺属性の乗った矢を、斬撃が飛んできた方角へと飛ばす。

ボキッという音だけが返ってくる。

折られたな……。

なんとなくわかっていたけど、どうやらあっちは気配とか空気の流れが分かってるみたいだ。

これまた厄介な。

こっちは見えない刃を、霧を使ってようやく認識しているというのに。


最悪……【あれ】使うことになりそう。


私は念のためにナイフを腰に差しておいた。

ついでに、飴のようなものが入った瓶も。


「全く……なんで私がガチバトルしなきゃならないかなぁ!!」


私の叫びは、放った矢がボキリと折られる音と重なった。


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