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私の平穏はどこにある!?   作者: 崎坂 ヤヒト
三章
34/45

嵐の前の静けさ(フラグとも言う)

ブックマーク180!

また増えてる! 更新してない期間に増えてるのを見ると感激です。

ありがとうございます。

それと申し訳ありません。

今回師匠さん出ません。次回こそは出しますのでなにとぞご容赦を!m(__)m

※メリル視点

スライムたちを放った私は、ウルフ達とモフモフしていた。

うん。あんた何やってるの!? と突っ込んでくれて構わない。

いや、だって気持ちいいんだよ? ほんと。

何匹ものウルフが集まって、柔らかい毛布に包まれているような心地よさ。

ミーアはこの中でお昼寝するのが大好きらしいけど、なんとなく気持ちが分かる。


「あー、癒される」

「じゃろう、じゃろう? じゃから」

「ダーメ」


今私はウルフ達をだしにお願いをされていた。

そのお願いというのが。


「ぬ~。頼むのじゃ~。もう一個作ってほしいのじゃ~!」


プリン。

スライムを放った後は完全に暇だったために作って二人で食べたのだ。

もちろん冷凍など様々な工程が必要なため、正規の方法ではなく【調理術】を使ってのものだ。

【調理術】は一瞬光りを放った後、作業工程をすっ飛ばした料理が現れる。

きっとミーアには突然目の前におやつが現れたように見えたことだろう。

当然だが、ミーアはプリンを食べたことがない。

そのため初めて食べたプリンに病みつきになってしまい、「もう一個。もう一個」とせがんでくるのだ。

しかし。


「駄目なものは駄目。もう一回おかわりしたでしょ。それに本当ならおやつは一日一回までだからね」


そう。彼女はもう一回おかわりをしてしまったのだ。

私は望んだものを欲しいだけ与えるほど甘くはない。

一回目のおかわりだって何度もお願いされて仕方なく作ったのだから。


「うぬぬぬぅ~」


ミーアは唸りながら目じりに涙をためる。

む? これはもしかして。


「わぁ~ん。欲しいのじゃ~! もう一個食べたいのじゃ~!」


出た。

小さい子特有の『泣きおねだり』。

私も昔、まだお母さんが一緒にいてくれた時にやった記憶がある。

ちなみにネアの時にはやってないよ。ネアは性格からしておねだりとか体罰で返してきそうだったし。

これにほだされちゃう大人って多いんだよね~。

親は逆に怒って怒鳴りつけたりするんだけど。かく言う私の親もそれだった。

でもこういう時の正しい対処はどっちでもなくて。


「はいはい。それはまた明日ね。心配しなくてもまた作ってあげるから」


なでなで、と頭を撫でてあげて優しい声で言う。

それにミーアはまだ「ぐすぐす」としてはいるが叫ぶことはやめた。


「うー。今すぐ食べたいのじゃ~」

「へぇ。それじゃあ明日の分は無しでいいのかな?」

「ぬぅ? あした?」

「そっ。明日。プリンだってただで作れるわけじゃないんだよ。材料が必要で、それがなくなったら作れなくなっちゃうの。だから今すぐ作ってもいいけど明日の分はなしね。ミーアは明日もきっとプリンを食べたくなっちゃうと思うけど、その時またこうして駄々っ子になっちゃうのかな~? 私駄々っ子の相手嫌だなぁ。嫌いになって『ミーアには絶対プリン作ってあげない』ってなっちゃうかも」

「なっ」


ミーアはそれを聞くと青い顔になった。

そして私に力いっぱい抱き付いてくる。


「嫌じゃ! また明日も食べたいのじゃ! メリルに嫌われたくないのじゃ~!」

(よしよし)


私はミーアのその慌てた様子に内心でほくそ笑んだ。


「じゃあ今日は我慢する? それなら明日も作ってあげるよ」

「うぬ。我慢するのじゃ。じゃから明日も絶対、絶対に作ってほしいのじゃ」


やー、子供ってちょろいね。

言ってることはさっきと同じなのにミーアの顔は全然違ってるし。

ついでにプリン効果で上下関係がほぼ逆転してしまっているのだが気付いているだろうか?

さっきまでのミーアは私の言うことを聞いているようでいて『仕方ないから従ってやるのじゃ。感謝するのじゃ』みたいなポーズだったのに対し、今は何としても私にしがみつこうと必死になっているのだ。

これでミーアが私に付いて来ないということはまずなくなった。

この子を引き入れてしまえばワイバーンも付いてきて襲われる心配もほとんどなくなるのだ。

え? 私が何の打算もなく小さい子の面倒見る訳ないじゃん。

あ、ごめんやっぱ嘘。たった今それに気づいただけです。最初からそうしようなんて考えてませんでしたよ? そりゃ最初はワイバーンにパクリされる前にこの子どうやって説得しようとか考えましたけどね! でも今の状況は打算じゃないよ! 偶然だから! だから黒いとか言わないで。ほんっとごめんなさい!

………誰に謝ってるんだろう私。


まあ、そんな私のことは置いといて。

問題のスライムはというと。


――――――全ての反応がロストしました。


「ノオオオオオオオオオオオオ!」

「ぬあっ! ど、どうしたのじゃメリル?」


やられたぁ! 全部やられたぁ!

そりゃ戦闘力ないに等しいって自分で言いましたけども。


「一匹くらい帰って来てもいいじゃん…」


これではスライムたちがどの辺でやられたのかも分からないじゃない。


「もう一回探索に出す? でも帰ってこなかったらなぁ…」

「なんじゃ? もしやあの青いのがやられたのか」


はい。その通りです。

やっぱり楽は出来そうにないみたい。


「うーぬ。変じゃのぅ」

「え、何が?」

「あの青いのは見た目が魔物そのものじゃ。この森の魔物たちは共食いはせんように言いつけてたはずなのじゃ。じゃから何か別の何者かにやられたとしか考えられん」


ふむ。もしかしたら私と同じく吹っ飛ばされた誰かが魔物と勘違いしたのかも。

それならどっちにしろ私自身は安全に散策が出来そうだね。

ミーアがいてくれれば魔物に襲われるという危険もないみたいだし。

だったら。


「一緒に探しに行こうか。なんか私の仲間もいるみたいだし。魔物はミーアが担当してくれれば安全に散策できると思うし」

「ほ、本当か!? それは助かるのじゃ。クロロは森を自由に歩けんし、ウルフだけじゃと戦闘が大変だったのじゃ」

「あー。それでずっとここにいたんだ。でも他の魔物を呼べばよかったんじゃないの?」

「む…むぅ。それは無理じゃ」

「なんで?」

「魔物にも個性はあるのじゃ。じゃからすべての魔物がわしに懐いてくれるわけではないのじゃ。一応はわしの言うことを聞いてくれる者もおるし、襲ってはこないのじゃが。わしを守ってくれるかというとそうではないのじゃ。このウルフ達は特別じゃな」


なるほどねぇ。まあテイマーって言っても敵が全部味方に付いてたら敵がいなくなっちゃうし、そういうものなのかもしれない。


「じゃあクロロはどうなの?」

「うむ。クロロはもともとわしと交流のあった竜の谷の生まれじゃからな。父様が捕まえてくる前からわしのことは知ってたはずじゃし、抵抗もほぼなかったのじゃ。それに一体に集中すればわしにテイム出来ない魔物はいないのじゃ!

………一週間くらいはかかると思うがの」


テイマーの裏事情をありがとう。

なるほど。やっぱり簡単じゃないんだね。

その後。私たちは言葉を交わしながらスライムたちが消えていった方角へと片っ端から回ってみることにした。

けれど一人じゃないからか、不思議と恐怖はない。

危険回避が確立しているからかな? 安全万歳


※カーダ視点


「うぉいやっ!」


冗談から振り下ろされる渾身の斬撃が猿のような見た目をした魔物を真っ二つにする。

しかし。


キィーキキ

キッキー

キーキキキ


俺を取り囲むように陣取ったそいつらは、まるで影分身でもしているみたく、一方向へと回る。

おいおい、ふざけんなよ。また増えてやがるぞ。


「剣の消耗がやべえんだが。これ持つのか?」

「むしろここまでずっと戦い続けでスタミナの方が限界に達してないのが奇跡に思うところでござるよ。カーダ殿の体力は師匠並みでござるな」

「やっぱりお前の師匠も化け物の類かよ!」


カーダの周囲には、既に三十体ほどの魔物の死体が転がっていた。

それらはオーガにゴブリンと、ファンタジーでよく見かけるものも含まれている。……弱かったけどな。

どういう訳かこの世界。ドラゴンやワイバーンみたく伝説級や、最強種とか呼ばれる奴ら以外のよく知られる魔物は軒並み弱いみたいなのだ。

一応腕は太いが、あれはほとんど脂肪だった。

腕が全然振れてねえし、とにかく遅い。

楽に両断出来た。

だが。そいつらがいたのも最初だけだ。

その後は本当に地獄だった。

どいつもこいつも強えのなんの。全部相手するこっちの身にもなりやがれってんだ。


だが、弱音を吐いてはいられねえんだ。


早くしないとメリルが危ない。

リックの傷はすぐに治療しないとやばいものだった。

メリルもそうなっている可能性は高い。もし、無事でいたとしても子の魔物たちをメリルが相手にできるとは思えない。

あいつは戦えない訳じゃないがソロには向いていないんだ。

ポーションも防御も回復も。全てサポートとして使ってこそその真価を発揮する。俺はメリルの攻撃魔法のしょぼさを知っている。他の戦闘スキルだって素人に毛が生えただけのものしか持ってはいない。


「俺が助けるんだ! おおおおおおおおおお!」

「…………」


※凛視点

凛はこの時、密かにカーダを「カッコいいでござる」と思っていた。と同時に。

(不憫でござる)


凛は師匠ほどではないが気配感知に結構敏感だ。ついでに他者の魔力も感知ができる。そしてその魔力感知は気配感知よりも得意だった。

故に。

(その者は既に無事。不思議な魔力でござるが、さっきから下級の魔法ばかり使っているでござる)


下級魔法は生活魔法である。

そのため戦闘中などでは絶対に使われることはない。つまり今、メリルは安全だということだ。

だが、それを今カーダに教えてもいいのだが、今教えると集中が切れてしまいそうだったので控えている。

しかし、その必死な、それでいてお姫様を助ける騎士のような真剣な顔を見ると。


「せっしゃ。ちょっと笑いそうでござる」

「なんでだよっ!」


それは言えない。絶対に言ってはならんのでござる。

ぷふっ。

口に出さぬよう。凛は心の中で笑った。

(あ、師匠の気配がするでござる。……が、起きてないでござるな)


師匠の気配はメリルとそんなに離れてはいなかった。

(これは……まずいかもしれないでござる)



※一方のメリル

(迷ったあああああああああ!)

現在再び遭難中


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