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私の平穏はどこにある!?   作者: 崎坂 ヤヒト
二章
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船上にて②

とりあえず言っておきたいことがあります。


私は冒険する気がありません!


冒険したきゃ勝手にしてなさいよ! 私を巻き込むな!

私は船の自室に一人籠り、地図を見ていた。

船の地図ではなく、港町【クリック】のものだ。

私達の目的地である。

とりあえずそこで冒険者ギルドに行き、身分証を発行してもらわなければならないことになっている。

当然だが、私たちは身分を証明できるものは何も持ってない。

天使たちに養ってもらいはしたが彼女らは保護者ではないのだ。

そのため一応冒険者という身分になっておかなければならない。

冒険者は十二歳を越えているなら誰でもなることができ、犯罪を犯さなければ冒険者ギルドが身元保証の代わりをしてくれる。

親がいない孤児は、基本まず冒険者になる。

まあ、ランク毎に決まった税金を取られるらしいけど。

冒険者って依頼をこなして一攫千金を狙える職業だけど、その分危険が多いんだよね。

死んでも冒険者ギルドは何の補償もしてくれないし、どんな依頼を受けるかも自己責任。


要はあなたは今日から冒険者です~。依頼をこなして適当に生きてください~。

あ、でも生きているうちは税金貰いますよ~。どっかの誰か分からない状態から救ってあげたんだからいいですよね~。あ、でも死んでもこちらからは何も出ませんのでそこら辺ご理解ください。


と。こんな感じである。

冒険者になって身元保証を受けないと、いろいろ困るのだ。

例えば宿に泊まる時。


『ああ? 身分証がない? 悪いが、んなよく分からん奴を止めることは怖くてできねえな』


と、宿屋からつまみ出される危険だってあるのだ。

身分証は大事だ。


「問題は私が戦闘なんて必要がないならしたくないってことなんだよね」


私は町の地図を見つつ逃亡経路を考える。


「まず冒険者ギルドで身分証を発行。ここまでは絶対一緒にいないとね。後で待ち伏せされてたら終わりだし」


だったらそこからの逃亡経路を考える。

冒険者ギルドはその性質上、規模が大きい。

道も大通りに面したところに建っている。


「人ごみに紛れれば大丈夫かな? というよりも口で断れるならそっちの方が早いんだけど…」


聞き入れては……くれないだろうなぁ。

特にカーダ。

あいつはとことん冒険がしたいんだ。

そのために私がサポートに打って付けなのだろう。

カーダは完全近接型だし。

私は魔法が使えて、おまけに弓も多少は出来る。

【ポーション】の【調合】も魅力があるのだろうが……。


「嫌だなぁ」


また魔物に囲まれたりしたら。今度はネアがそばにいない訳だし。絶対生きられる保証なんてないのだ。

そんなリスクを、私は負いたくない。

ネアが私にくれた知識は、私が生きるためのものだ。

私が必死に学んだのは、私がよりよい生活をするためのものだ。

あのバカ二人に引きずられる生活なんて、絶対ごめんである。

よーし。逃げるぞっ!


私は必死に逃亡計画を立てた。




※カーダ視点

いい気分だ。

俺は風に当たりながら、すがすがしい気持ちで流れる海を見つめた。

俺は冒険者になる。

そんで英雄とか呼ばれるんだ。

笑いたい奴は笑え。俺は本気だ。

島では、もうボスでさえ俺一人で楽勝になっていた。

俺の担当の天使ラグマは、俺にとにかく戦う力をくれた。

魔法が使えないことで一時は嘆いたが、魔法は他の仲間に任せればいい。

俺、魔法なくても強いし。


(あと、可愛い女の子は外せないよなあ)


カーダにとって、メリルはドストライクだ。

まだちょっと幼さは残ってるけど、白くてきれいな顔。つり目で気の強さを感じさせるのもいい。


(黒髪ロング最高っ!)


二年で、メリルの髪は腰近くまで伸びていた。


「やっぱ日本人っぽいのがいいよなぁ。いや日本人だけどさ」


異世界だからきっと、日本みたいにみんな黒髪黒目ではないのだろうと思う。

今を逃せばもう出会えないかもしれない。

あと、あいつのスキル見たけど、あれはすげえ。

メリルのスキル構成は、いわば生活面のオールカバー状態。パーティーに一人いるだけで絶対違うはずだ。

カーダは自分が戦闘しかできないことを知っていた。

でもそれは、メリルに世話してもらえれば何の問題もない。

彼女も俺の強さを知れば絶対惚れるはずだ。

そうなったら、あとはもうウハウハだ。

可愛い彼女に、冒険ライフ。理想の生活が今、目の前に待っているのだ。


さあ、俺の理想。早く港に突きやがれ!




※リック視点

起きたら鋼板にいた。

二人はどっか行ってしまったみたいだ。

残念。メリルちゃんにはいろいろ聞きたいことがあったのに。

体質診たいし、ちょっと()を脱いで欲しかっただけなんだけどなぁ。

背後から殴ったのはきっとカーダだね。


「はぁ~」


とりあえずメリルちゃんには謝りたいから探してみようかな。

僕は【スキル】で【索敵】を使う。

魔法を命中させるために、天使様にお願いして教えてもらった【スキル】だ。

僕は彼女の部屋を知らないし、これで探すしかない。

幸い、この船は大きいけど乗客は少ない。

きっとすぐに見つかるはずだ。


………………………え?


「これはっ」


僕は急いで駆け出した。

ついでにとんでもないものが引っかかってしまった。

急いで二人にも知らせないと。

まさか。


(魔物が出るなんて聞いてないよっ!)


船の前方に、巨大な魔物の反応があった。


ようやくファンタジーっぽくなってきたかな?

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