プロローグ
初めての投稿です。
大分つたない部分はあると思われますが楽しんでもらえたら幸いです。
ここはどこだろう?
そこはよく分からない真っ白な空間だった。
少年は考える。
俺は夢を見ているのだと。
だってそこには何もないのだ。
物も人も動物だってないのだ。
そこで少年は、あれ? と思う。
ひょっとして、と首を下に向けようとしたらその首がないことに気付いた。
―――自分すらないのか?
『かわいそうに』
『まだこんなに小さいのに』
『つらいよね』
ふと、そんな女性の声が降ってきた。
何?
少年はその声の正体を必死に探した。
一体どこから聞こえてきたのか。
―――誰?
『私は神です』
―――神様?
『はい。そうですよ』
―――話せるのか?
『ええ。とはいえ、あなたには口はもうありませんが』
―――ふーん
『あなたはまだ小さいから、理解が及んでいるかは分かりません。ですがこれだけは言っておかねばなりません。あなたは死んだのですよ』
―――死んだ?
『言葉だけでは理解できませんか? ではお見せしましょう』
神様がそう言うと、突然視界が変わった。
そこには人が見えた。
血がいっぱい出ていて、倒れて動かない人が三人。
一人はまだ子供、十歳くらいの少年だった。
そしてその少年が自分だと気付くのにそんなに時間はいらなかった。
―――え?
そこにはお父さんとお母さんもいる。
なんでか皆車の中で体中から血を流して動かない。
―――なにこれ?
そこはどこかの道路だった。
交通事故ってやつだろうか?
でもちょっと変だった。
なんで車はひっくり返っているのだろうか?
しかも車の前側はつぶれてしまっていた。
『かわいそうに』
神様は最初と同じ言葉をまた言った。
『あなたはご両親の自殺に巻き込まれたのですよ』
―――自殺? 自分で死ぬ悪いことだろ。なんでしたんだ?
『あなたの知識ではそうでしょうね。ですが実際にそうした例は多くあるのですよ』
―――どうゆうことだよ
『あなたにはまだ、説明しても理解の及ばぬこと、ですかね。それでは本題です。
まだ幼くして死んでしまい、また自分の意志ではなかった。この条件を満たしたあなたにはチャンスがあります。違う世界で生きる権利を与えましょう」
―――はあ?
『あなたには元の体はもうありません。それにあなたの世界では、もう一度生を与えるのは記憶を消さなくては難しいのです』
―――さっきから何言ってるんだよ。俺が死んだとか、よくわかんないし。明日はカズとゲームするんだ。だからこんな夢さっさと覚めろよ。
神にはその言葉は、今までの話をまるで理解してないようにみえて、実際には理解していて、ただ逃げようとしているように思えた。
『それは友達ですね。ですが残念です』
そして神は無慈悲に告げる。少年がこれ以上逃げないように、現実から目をそらさないように。
『あなたの体をもうありません。もう毎日のように学校に行って友達と遊んだり、家でゲームしたり、親と一緒に過ごすことも、もうできないのですよ』
―――嘘だ!
『うそではありません』
―――嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ! 俺は騙されないぞ!
『聞き分けてください。あなたは…………死んだのです』
―――うそだああああああああああああ!
少年は叫びあがった。
きっと体があったら暴れて泣きわめいていたことだろう。
神はその様子を見て、決めてしまった。
『あなたには救いが必要なようですね』
そこに、女神が降臨した。
巨大な翼を一杯に開いて、大きな腕が少年を包み込んだ。
『さあ、今度こそ、幸せな人生を歩みましょう』
こうして少年は、別の世界で生きることとなった。