No.1 楠虫財産殺人事件 part1
既に梅雨入りしている6月中旬。
日本。南部の中心にある町【南刃町】。
ここ、南刃町にある
日本総合スーパー【スーパーあさはら】の
従業員入口のちょっと奥の大体あそこら辺にある
【黒一探偵事務所】は、未だかつて無い
最悪の事態に陥っていた。
侵略者―――いや、略奪者というべきであろうか。
奴らは突然現れ、我々の大切なものを奪っていった。
もう許せない――これ以上やらせるわけにはいかない―ー―。
そう意気込みを入れ この危機に悠々と立ち向かうのは
黒一探偵事務所の所長【黒一南厶】こと【甘川弘記】。
黒い帽子と黒い服。
その長い後ろ髪は
2つの髪ゴムで留められており
納豆を入れる藁苞のようになっている。
体格は小柄で、お世辞にも背が高いとは言えない。
現在24歳でこの道6年目の彼は
今まで様々な事件を解決し
真実を見抜いてきた。
ちなみに普段は
ここ、スーパーあさはらの従業員として働いている。
そっちが本業で探偵は副業といった感じだ。
そんな彼だが……今回は
特別参ってるようだ。
「くそぅ……どんどん湧いて出てくるなぁ……」
弘記の足元やその周りには
無数の【それ】の死体で溢れていた。
だが、殺っても殺っても出てくるので
苦戦を強いられている。
(大本をたたくしかないのか……?)
そう考えて既に3日目になるものの
一向に大本へはたどり着けない。
そもそも大本なんているのだろうか?
……いない気がする。
チクッ
「あ!またやられた!!」
考え事をしている間に
攻撃を受けてしまったようで
手の甲に赤い斑点が出来ていた。
「くそ!!この薄汚い虫けらどもがーー!!!」
虫ーーーそうーーー虫だーーー。
その虫は人間が生きるために
必要不可欠な【血】を養分としている。
これまでの戦いで何度も吸われ、奪われた。
僕の身体を見てやってほしい。
今は長袖を着ているので分からないが
1日目は半袖だったので
たくさん刺された……痒かった。
2日目も油断して半袖を着ていたので
たくさん刺された……すごく痒かった。
水疱瘡でもないのに
身体中を赤い斑点だらけにされてしまった……。
(この【蚊】という虫けらどもは
本当に頭にくる………!!!)
沸き上がる怒りに身体を震わせながら
弘記は懐から殺虫スプレーを出し
近くを飛んでいた標的に勢いよく噴射した。
プシュー……。
見事に命中!!!標的は床に落下した。
「まだだ!こいつらは一撃浴びせただけじゃ死なない!」
弘記は素早く敵の目の前でしゃがみ込み
「うおおおおおおおおおぉぉぉぉおお!!!!」
プシュー……。
動かなくなるまで、ちびちびとスプレーを噴射し続けた。
「よし!また1匹片付けた
これで……えーと……何匹だっけ?」
初めの方はしっかりカウントしていたのだが
3日間に及ぶ激戦により、もう何匹殺ったか覚えてない
(ーーーーー!!)
後方から殺気を感じた。数はーーー5匹。
その5匹は綺麗なV字型の陣形でこちらに攻め寄せてくる。
(V………勝利のVictoryを……表しているとでもいうのか……!)
V字は余裕の表れなのだろう
数では圧倒的に敵側が勝っている。
「確かに数では分が悪いーーーけど、これならどうかな!」
弘記はどこからか、もう1つスプレーを取り出した。
「二刀流だ。こいつで締め上げてやるッ」
奴らはV字を保ったまま突撃し
吸血してくるに違いない。
まずは相手の陣形を崩すために
殺虫剤を自分の周りに撒く。
だがその時にそれを吸い込んでしまい、咳き込んだ。
「ゲホ……ゲホ……くそぅ………これは諸刃の剣だな……」
意味はよく分かってないが
何となくこの慣用句を使ってみた。
そして、すぐそこまで迫ってきてるであろう敵に
目を向けてみると
さっきまでV字型だった陣形が!!
………V字型のままだった………。
「効いてない!?自爆しただけかよ!!」
咄嗟に回避行動をとる。
バック転×2からのバック宙返り。
普段こんな動きは出来ないのだが
人間という生き物は危機的状況になると
進化する生き物らしい。
敵との距離が確保できたのを確認すると
スプレーを前に突き出し、再び戦闘体勢に入る。
「ああ……小さくて可愛い女の子に
頭を撫でられながら死にたい………」
危機的状況だからか
思わぬところで
内に秘めていた想いを吐露してしまった……。
が、それは気にせず
相も変わらずV字型の陣形を維持している敵に
スプレーを放った。
V字型の陣形が崩れ、敵が散り散りになった。
「よし………固まっていなければ、どうということはないッ」
どう考えても固まってくれてる方が
殺りやすいのだが……そんな思考は無かった。
「よし。先ずはお前から殺っていく!」
プシュー……。
一番近くを飛んでいた敵に
2つのスプレーを華麗に振り回し
必殺の一撃を浴びせた。
「さすが二刀流!!威力も2倍だな!!!」
いや、決してそんなことは無いが
床に倒れ伏せている敵を見て
気持ちが高ぶっているようだ。
「まだ4匹もいるのか……このままじゃ埒があかない」
一気に片付けるには
奴らの懐にまで飛び込む必要がある。
(出来るか………僕に………?)
少し考え……………てる暇も無く
敵がこちらに攻めて来た。
「ええいッ!迷わず進め!やれば出来るさ!!」
そう意を決して敵の懐に飛び込んだ。
そして目一杯スプレーを振り回す。
「そこ!そこ!そこ!そこ!そこォー!!!」
プシュー……プシュー……プシュー……プシュ~~~……。
所々刺されてしまったが
何とか敵を壊滅させることに成功した。
「はあ……はあ………あー……しんどい………」
(ーーーーーー!!!!)
この感覚はーーー。
(奴だ…………奴が来る……………!!!)
次の瞬間
黒い閃光のようなものが
目の前を通り過ぎた。
(ーーーーーッ!!!)
辛うじて避けることに成功
そして透かさず距離をとった。
「お前との勝負も今日で3日目だからな
さすがに見切れるようにはなったよ」
そう吐き捨て身構える。
この敵は今まで戦ってきた奴らとは違う。
具体的に言うと
こいつの口吻は通常の蚊の【0.3㎜長い】
1日目でこいつと戦った時に
ちょっと気になったものだから
罠を張って生け捕りにし
わざわざ計った。そのあと逃げられたけど……。
再び攻撃を仕掛ける黒い閃光。
その攻撃を華麗に避け続ける弘記。
そこから反撃するチャンスを窺っていた。
しかしーーー。
(ぐっ………!?)
攻撃を回避している最中
背中に突然痒みが襲う。
激しい運動に古傷が
痒み出したのだ…………!!
(背中かゆ!!こんな状態じゃ……
奴の攻撃は避けられないッ!)
この隙を突いて
黒い閃光が弘記の肩を貫く。
「ぐがッ!!……そういや……こいつ……服の繊維すら
突き抜けてくるんだよな………」
肩から痒みを感じる。
(あの一瞬で吸血を行うなんて
やはりこれが0.3㎜の差……なのか……?)
恐らく関係ないと
頭の中で結論を出し
反撃の手段を考える。
現状は最悪だ。
古傷と肩が痒いため
奴の攻撃を満足に避けることが出来ない。
さっさと掻いてしまえばこの痒みは治まるだろう。
しかし、1度掻けば負のスパイラル。
痒みは一時的に治まるだけで
また痒くなる。
後はそれの繰り返し。
最終的には血が滲み出るまで掻き続けるのだ。
『悔しくても、掻いてはいけません』
そんな聖人っぽい台詞を吐いたのは
弘記の助手である【江西結子】だ。
生まれつきの茶色い髪に
腰ぐらいまであるロングヘアー。
いつもアホ毛が立っている。
そして最も注目するべき点は彼女のスタイル。
何もしていないくせに
【ボン、キュッ、ボン!!】なのだ。
今年で彼女と組んで5年目になるが
助手として採用した理由の9割がそれだった。
しかし、彼女は中々頭のネジが外れている人間で
日々いろんな発明や実験を繰り返している。
しかもこの事務所の地下室で。
今回の件も
元々彼女が蚊の幼虫である【ボウフラ】を
養殖していたのが原因だった。
普段はごく普通の大学生として
生活しているみたいだが
講義が終わると
すぐ事務所の方にやって来る。
(あの子………やっぱり友達いないんじゃ…………)
そんなことを考えている間
黒い閃光の動きが微妙に変化するのを感じた。
(そろそろ何か仕掛けてくるか……?)
あまりゆとりはないようだ。
ーーー攻めるかーーー逃げるしかない。
…………逃げるか?
逃げてまた体勢を立て直し
今度はあの【最終兵器】を使って
虫けらどもを一掃すれば………。
例の【最終兵器】は今
結子が買いに出掛けているのだが
うちのお店には在庫が無かったから
別のお店に向かっている。
まだかかるかもしれない。
それまで身が持つかどうか………。
………いや、攻めよう。
『必ず買って戻って来ます!!!』そう彼女は言ってた。
まるでこれから戦場に赴く兵士のように。
(………あれ?けど実際、戦ってるのって
僕だよな………まぁいいか)
ーーー信じるんだーーー
彼女が戻って来るまで
ここで時間を稼ぐんだ!!!
激しい痒みに身体が悲鳴をあげている。
そんな身体に鞭を打ち
黒い閃光と正面をきる。
「おまえはこの黒一南厶が直々にぶちのめしてやる」
そう言い終えると
2本のスプレーを構える。
「行くぜ オイ!!」
一気に踏み込み、奴の懐に飛び込んだ。
そしてスプレーを前に突きだし
「オラオラオラオラオラオラオラオラオーーー!!!」
黒い閃光に向かって放つ。
その姿はまるで
高速でパンチのラッシュを叩き込んでいるかのようだ。
「オラオラオラオラオラオラオラオラオーーー!!!」
だが、その攻撃は全て避けられている。
「オラオラオラオラオ………オラ……オ……?」
パンチのラッシュが止んだ。
何が起こったというのか。
(…スプレーが……殺虫剤が切れた………。)
あ、死んだ
そう確信した瞬間だった。
黒い閃光が畳み掛けるように
こちらに攻撃してくる。
ブゥン!ブゥン!ブゥン!ブゥン!ブゥン!
弘記のありとあらゆる箇所を吸血していくーーー。
「のぉぉぉぉぉォォォおおぉおおォおおォォォん!!!」
弘記が情けない悲鳴をあげるーーー。
そしてーーー。
バタンッ
床に倒れ込んだ。
目の前が段々暗くなっていく。
その目の先には黒い閃光と敵の大群。
増援も呼ばれたのか。
(くそ………もう……ここまでなんだな……)
さっきまで感じていた激しい痒みも
意識が遠退いていくにつれ
無くなっていった。
時間稼ぎすら出来ないなんて
なんて情けないやつなのだろうか。
そんな自己嫌悪に駆られたままーーー。
弘記の生命はーーー。
終わりを向かえてーーー。
次の瞬間、黄色い極太レーザーが
黒い閃光とその他大勢を焼き殺した。
(ええええぇぇぇぇえええーーー!!!??)
あまりの衝撃に
死の淵から復活してしまった。
(いったい………なんなん!!!?)
「いやー、お待たせしましたー」
女性の声。
親しみが感じられる。
(そうだ……僕はこの声の主を待っていたんだ……!!)
「結子ちゃん!!!」
声の主の名を呼ぶ。
「あー、弘記さん
遅くなってすみま………くっさ!!!
何でこの部屋こんなに殺虫剤の臭いが
充満してるんですか!!」
部屋の中は
今まで弘記が撒いた
殺虫剤によって
かなりもくもくしていた。
そして臭いも酷い。
「それは、戦場の跡だからさ」
「うー……まぁ私が遅れたのが悪いんですしね……。
すみませんでした。本当に。
【これ】がどこのお店にも置いて無くて
隣町まで行ってきたんです」
結子は長方形の白い紙袋を持っていた。
何故か袋の片面が無造作に破かれている。
紙袋から発している【ある匂い】から
察するに………移動しながら
セットしたのだろう。
ちなみに【これ】とは
僕が結子ちゃんに買いに行かせた
【最終兵器】のことだ。
その【最終兵器】とはーーーー。
「全くどこにも
売ってなかったんですよ?【蚊取り線香】」
蚊取り線香ーーー。
部屋に置いておくだけで
あの忌々しい虫けらどもを
意図も容易く一掃できる。
そして匂いも良い。
まさしく最終兵器の名に相応しい代物だーーー。
(そういえば、さっきの極太レーザーは
蚊取り線香か………?
また結子ちゃんが変なものに改造して………
とにかく、今はお礼を言おう)
「お疲れさま。結子ちゃんのお陰で
あの虫けらどもも全滅したよ。ありがとう」
「いえいえ。それほどでもあります。
あ、この袋破けてますけど
急がないといけないと思って
移動しながらセットしたんです。
私ってけっこう器用ですよね?」
「いや、袋破いてる時点で器用さアピールに
なってないからね?」
「だって、線香入れにくかったんですもん」
「じゃあせめて袋から出して
それからセットすれば良かったじゃん」
「袋から出さなくてもセット出来るって
証明したかったんです」
「誰のための証明だよッ」
「私です」
「はぁ………」
「まあ 弘記さんには到底真似できない
芸当ですよね」
(誰が真似するかバカ野郎………)
まぁ……予想通りだった。
取り敢えず結子から紙袋を受け取って
中身を確認した。
「ん?………おっ!これブタさん型じゃん!」
蚊取り線香はブタさん型だった。
口の部分が大きく開いており
そこから線香を入れるようになっている。
上の部分も開いており
そこから線香の煙が
上空に向かって伸びていた。
「可愛いですよね。
一目見てこれに決めちゃいましたよー」
『確かに可愛い』と相づちをうち
紙袋から出し、蚊取り線香をもっとよく見てみた。
しかし、弘記が考えていたような
改造が施されてるようには見えなかった。
(あれ……おかしいな……ちょっと聞いてみるか……)
「あ、そうだ。
さっき、僕が瀕死だった時
黄色い極太レーザーを
見たんだけど。」
「レーザーですか?」
「うん。レーザー。
それがあの虫けらどもを蹴散らしたんだけど
また君は一般商品を変なものに改造したんだね?」
この子なら、レーザーを造るなんて容易いはずだ。
今までのヘンテコな発明の数々を見れば分かる。
「変なものって何ですか!
芸術ですよ!芸術!!
それに、蚊取り線香に改造なんてしてませんよ」
結子は少しムキになって答える。
「えっ、そうなの?」
はっ!となり
辺りを見てみたが、確かに事務所のどこにも
レーザーによる焼けた後や穴などはなかった。
てっきり結子が
また何か変なものに改造したのかと
思っていたが……。
(僕が見たものは
ただの幻覚だったのか………?)
「あ、けどこの蚊取り線香は
かなり速効性の高いものらしいですから
たぶん、その速効性が弘記さんの頭の中で
レーザーのように描写されたんだと思います」
「あーなるほど」
やっぱり幻覚だったか。
「しかし……この蚊取り線香からレーザーですか……
いい案ですね!!
この子の口から『ドォォォォォン!!!』って
レーザー発射させてみたいです!!」
結子は目を輝かせている。
「ねぇ、仮にそのブタさんを改造するとしたら
名前はどうする?」
「名前ですか?
うーん……ブタさんの形をしているので
【ピッグ・レイ】ですね!」
「ピッグ・レイ………」
「どうですか?ピッグ・レイ!
何か感じるものとかあります?」
「え、うーん…何というか……
光と豚が混ざりあって混豚となり……
それによって広がる肉しみの光……みたいな?」
「バカにしてます?」
「うん」
結子は少し、むすっとした顔をする。
「えーー。いいじゃないですかピッグ・レイ。
ね、あなたもそう思いますよね?」
結子はブタさん型の蚊取り線香に同意を求める。
しかし、何かしゃべるわけでもなく
線香の煙が揺らめくだけであった。
「ほら、この子も『ピッグ・レイがいい!!』って
言ってますよ?」
「いや何も言ってないじゃない!
線香の煙が
たらたら揺らめいてるだけじゃない!」
「ちゃんと言ってますよ
バカの弘記さんには聞こえないんですッ」
「今バカって言ったな!?
他人のことを何の前触れもなくバカって言ったな!?」
「だって弘記さん
バーカじゃないですか」
「バーカじゃないし!九九の段言えるし!」
「それ算数ですよ
小学校2年生の」
「ぐっ………ぼ……ボケただけさ!
嫌だなーそういうの本気にされるとー」
「じゃあ、七八?」
「……………56!
ほら!ちゃんと言えたでしょ?」
「じゃあ、八七?」
「へ?えっと………八六……48だから………
えー………56!っていうかこれ
さっきと同じ答えじゃん!!」
「そりゃそうですよ。入れ換えただけですから」
「ぐぅ………意地悪」
「それはお互い様です」
「いやだって、ピッグ・レイはないよ
さすがにさ!」
「弘記さんはイメージが足りないんです。
もっと想像してください。
でっかい宇宙コロニー級のブタさんが
口から極太レーザーを発射するんですよ?
ロマン砲ってレベルじゃありません!」
どうやら
結子の頭の中では
広大な宇宙が広がっているらしい。
会話についていくには
こちらの頭の中も宇宙世紀にしなければ。
「でも、決戦兵器をブタさん型にする必要あるの?」
「何を言ってるんですか!
普段は家畜として扱っているブタさんに
自分の全てを根絶やしにされるんですよ!?
これ以上にない屈辱を
相手に与えることが出来るじゃないですか!」
「性格わる!!そんなこと考えてたの!?」
「戦争は非情です。
坊やのままでは
生き残れませんよ?ーーー坊や」
「ぐぬぬ……僕より歳が4つも下のくせに……!!」
その時ーーー事務所の扉が開かれたーーー。
「おーいたいた。
弘記ちゃん。依頼人だよ………ってくっさ!!!」
そう言葉を発したのは
このスーパーあさはらの店長
【河内正勇】である。
乱れた髪と無精髭は
とても清潔感があるとは言えない。
しかし、人柄の良さが彼の取り柄で
ここで働いている従業員は皆 彼を慕っている。
「あ、河内さん。すいません。依頼人の方
通してもらっていいですか?」
「おーけー。じゃあ少し待っててね。
あと……たまには換気するんだよ?」
そう言うと河内は事務所を後にした。
あの様子だと
普段から換気すらしてない
小汚い連中だと思われたかもしれない。
河内は蚊の襲撃のことを知らないのだから。
(………後で弁明しとかないと)
「依頼人ですか。お金持ってるといいですね」
結子がいつもの調子で弘記に言葉をかける。
「そうだねー。最近事務所の経営きつきつだし……」
弘記もいつもの調子で言葉を返し
依頼人を待つことにした。
part2へ続く……。