アダムとイヴ
「大好き」
「うん」
「大好きだよ」
「うん」
「・・・死ぬほど好き」
「だろうね」
「ついでに、殺したいくらい好き」
「不覚にも、一瞬くらいは殺されていいかなって思うよ」
「やった。一瞬殺させて」
「まぁ無理だとして」
「僕は君が大好き。色々な意味で食べたいんだけど」
「意味を一つに絞るなら考えたげる」
「決めかねる」
「じゃあおあずけだね」
「君は僕のこと好き?」
「どうでもいいくせに」
「どうでもいいよ。僕が君のこと好きでいればそれでいい」
「好きって言ったら?」
「えろい意味で食べる」
「嫌いって言ったら?」
「食べる意味で食べる」
「どちらにしても愉快ではあるなぁ」
「じゃあどっちもって選択肢は」
「生み出してごらんよ、シナリオを」
「どうぞ、今晩の夕食です」
「きゃー鶏肉のそぼろよーってこれまさか」
「君のペットの鶏・「おばーちゃん」だよ」
「やっぱり。酷いことするね。あれ、これって赤ずきんちゃんルートか」
「これならどっちの意味でもイケるでしょ」
「狼は死ぬんだよ」
「いいんじゃない、それこそ一瞬君を殺す、そして僕は死ぬ」
「おぉ、確かにいいアイデアではあるね、少しは見直した」
「ということでそれを食べたられっつえろいこと」
「ざんねーん赤ずきんちゃん最強でした、狼は張り倒されました、エンド」
「えーなんだそれー」
「緊急措置をとらせていただいた」
「そういうところ、かわいいから好き」
「光栄。ところでさぁ、さっきから疑問に思うことが」
「何?」
「なんで会話文しかないわけ」
「状況の説明とか認識すんのショートカット。すぐに君の声が聞きたくて」
「愛されてるなぁ」
「ちなみに今の状況を口頭で説明しとくと、僕は今大胆に君に押し倒されてのど元にナイフつきたてられてる」
「そうです、その通りです」
「おかしいな、なんで赤ずきんに殺されそうになってんだ狼」
「いやいや実は私ハンターなのよ」
「大好きだよ、どっちにせよ君は君だから」
「ばか」
「ばかでも君が大好き、君のためならばかにもなる」
「ホントばか。殺しちゃうよ?」
「その前に質問に答えて。僕のこと好き?」
「どうでしょう」
「嬉しそうだね、何だか」
「世界が愛しくて」
「じゃあ質問を一旦変える。どうして僕を殺すの?」
「嬉しくて。嬉しくて、八方塞なのが分かってて」
「それで?」
「私があなたを殺しても、誰も何も言わない」
「だめだ、やっぱり死ぬわけにはいかない」
「え?」
「君が、ガチのマジで一人ぼっちになっちゃうよ」
「いいよそんなの。どうせ皆死ぬときは一人なんだから」
「そんなに絶望しないで、僕とえろいことしよう」
「殺す」
「えろいことという言い方が悪かったか、未来を切り開こう」
「無理だって」
「無理じゃない」
「だってもう」
「嘘みたいだろ?てことは僕らがまた創めることも嘘みたいだけどできるはずだ」
「なんで」
「君をひとりにさせたくない、だって僕は君が大好きで、大切で」
「泣かないでよ・・・」
「寂しい、僕が寂しい、だから二人で」
「二人で」
「そう、二人で」
「創めよう」
「嘘みたいに」
「で、さっきの質問なんだけど。僕のこと」
「私のこと、好き?」
「大好き、だけど。答えて」
「未来を切り開いてからじゃだめ?」
「もちろん。形勢逆転だね」
「ばか」