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07 事件は現場で起きてるんです。

ほんとは名古屋のほうが、細かく建物壊れる描写が出来て面白いんでしょうけどね……

 玲音にしてみれば、さんざん苦労して海に追い出したアンノンをまた陸に戻せと言われたら、最初からそうしろと叫びたくもなるが、作戦概要を説明されれば納得もするし、何より命令だから従うしかない。


「でも、どうやって転進させます? こいつ、ロックオンしても分かんないんですよ?」

『ちょっと待て、ロックオン出来るのか、そいつ』

「え? ええ、まあ。熱源探知式ミサイルは無理ですけど、99式誘導弾アクティブ・レーダー・ホーミングなら、ロックオン出来るみたいです」

『分かった、貴重なデータだ』

『あー、ちなみにだな、その、アンノンの排泄物は機体にかかったか?』

「かかってたら今頃ぶっ殺してますよこのトカゲ」

『そうか……排泄物から摂れるデータは非常に多いんだが』

「マジ勘弁してください」

『とりあえず海自・海保に現場海域への出動要請をした。排泄物の回収はそっちに任せて、自分の任務に集中してくれ』

「うわあ、海自、ウ○コ拾いに行かされるのかー」


 とんだ貧乏くじである。


「空自で良かったわ」

『こちらCCP。老婆心だが、女の子があんまりウ○コ○ンコ言わないほうがいいぞ』

「こちらワイバーン。ご忠告感謝しまーす。で、どうします。転進させるなら、威嚇射撃の許可が欲しいんですけど」

『総隊司令? ――了解。付近の漁船は全て退去完了しているとのことだ。ただし海上保安庁と海上自衛隊が出てくる。その前であれば、威嚇射撃を許可する』

「ワイバーン、コピー」


 玲音が操縦桿を軽く傾け、フットペダルを押し込むと、フライ・バイ・ワイア・システムがその命令を各翼に正確に伝達。

 くるりと華麗なエルロン・ロールを打って、F-15はドラゴンのやや上後方に占位した。

 ぺろり、と唇を舐めて、

 にやり、と口を歪める。


「バステト、悪いけどアンノン(ドラゴン)の下後方に移ってくれる? 前にいられると恐くて撃てないよ」

『私に構わず撃てー。と言いたいところだけど、ツー。……何する気?』


 さすが、長年の相棒は勘が良い。

 玲音は笑って答えた。


「ただの威嚇射撃よ」


 操縦桿のスイッチを操作。

 サーキット・ブレーカーをオン。

 IFF起動。

 万が一の同士討ちを嫌って、ドグファイト・モードは切っておく。

 RDY GUN

 モードをLCOSに設定。

 HUDにピパーが表示され、それは今、ドラゴンの背中を照準している。


「ワイバーン1よりCCP。これより威嚇射撃を開始する。ワイバーン2、状況を動かすな」

『CCP了解』

『ツー』


 鷲巣玲音は自他ともに認める優秀なイーグル・ドライバーであり、こと機関砲射撃に関しては、空戦機動(ACM)中にも当てられるほど、腕がいい。

 バックミラーで背後を確認。この辺は坂井三郎さかい・さぶろう氏の大空のサムライを愛読している影響が大きい。


 続いて照準。

 ゆっくりと機体位置を調整して、ドラゴンの真横につける。

 ドラゴンと目が遭った。

 その縦に裂けた光彩に、確かな知性の色を見た、と、一瞬玲音は思った。

 が、それを振り払って通信スイッチを入れる。


「ワイバーン1、警告射撃を実施する」


 ドラゴンがこちらを見ているのを確認。

 軽く手を振る。親指と小指を立てたあのサインだ。

 ガン・コントロール・スイッチを押す。

 モーターが唸り、ストレーキに設置されたM61A1機関砲が吠え、火線がドラゴンの眼前の虚空を切り裂いた。

 1秒だけ連射し、今のがこの機体から発射されたことをアピール。

 ドラゴンの目が、目に見えて開かれるのが分かる。


「ワイバーン1よりCCP。威嚇射撃を実施した。対象は驚いた様子だが、進路に変化なし。再度、威嚇射撃の許可を求む」

『CCP了解。威嚇射撃を許可する』


 続いて大きくバレルロール。

 操縦桿を傾けながら、慎重に高度計とドラゴンの位置を見比べ、ぐるりとローリング。

 すると、すぽりとドラゴンの後ろ上方に収まる。

 相手の低速にもだいぶ慣れてきた。ゆらゆらと機体をシザーズさせたり、時に横滑り飛行をするなどすれば、オーヴァ・シュートすることなく追随できる。


 十分距離を取って背後に回った。

 玲音はピパー……即ち機首方向を慎重に調整しながら、ゆっくりとドラゴンとの距離を詰めていく。

 威嚇射撃は、本来なら横に並んで発射することで“当たってしまう”リスクを下げるのがセオリィだが、


(バルカンを生まれて初めて見る奴が、その危険性を理解できるとは思えないしね)


 それが玲音の“悪巧み”だ。


 これが何なのかをはっきり分からせてやる。

 日本の上空を無断で飛べば、手痛いしっぺ返しを食らうことを思い知らせてやる。

 普段は様々な政治的思惑や自衛隊法の縛りでなかなか出来ない(それもまたおかしな話だが)が、今回はあまりにもイレギュラーな事態だ。言い訳はいくらでも利く。


 ピパーがドラゴンの左翼を捉えたタイミングで、報告を入れる。


「ワイバーン1、2度目の警告射撃を開始する」


 息を止める。

 集中する。


 操縦桿を押して、機首を5度下げる。

 ドラゴンの後ろ上方からのし掛かる態勢。

 速度で優位なイーグルが、徐々に距離を詰める。

 同時に、照準であるピパーも少しずつズレていく。――ドラゴンの前方に。

 わずかに、ほんのわずかに、ピパーがドラゴンの左翼より前の空間を照準した。


 その瞬間、スイッチを押す。


 空を切り裂いた砲弾が、翼のすぐ横を通過する。

 音速を超える砲弾だから、当たらなくても叩かれたような衝撃はあるだろう。


 だが……それだけでは温い。


 時間差によって、砲弾の何発目かが、遅れて照準した地点に届いた。

 翼の前縁。

 その、ほんの僅かな部分を、砲弾が擦過したのだ。


 バランスを崩すドラゴン。

 ぱっと一瞬だけ赤いものが見えた。

 ひやり、とするが、次の瞬間、ローリングして飛行し直したドラゴンが、慌てたようにジグザグに飛び始めたのを見て、ほっとすると同時にほくそ笑む。


『うわっ』

『どうした、ワイバーン2!』

『あー、いえ、何です、その、血がキャノピィに掛かっただけです。飛行には支障なし』


ナイス、相棒。


内心そう思うが、さすがにわざと当てましたと音声記録に残すとマズイので黙っている。

代わりにCCPの管制官が慌てたように、


『ワイバーン1、威嚇射撃を当てたのか!?』

「あー、こちらワイバーン1。一度目の警告よりギリギリ掠めるように撃ちましたが、アンノンがイレギュラーな加速を行ったため、僅かに砲弾が掠めた模様。飛行に影響はなさそうです」


報告しながら大きく旋回。

ドラゴンの進路をF-15の機体で遮るように飛ぶと、ドラゴンは前よりもずっと早いタイミングで旋回、回避。

そこを挟み込むように、バステトの機体が進路妨害。


――それだけの行為で、ドラゴンは玲音たちの望む方向、即ち東京に向けて進路を変更してくれた。


「でもその代わり、素直になりましたよ、こいつ」

『お前、わざとやったのか?』


 総隊司令の低い女声が聞こえた。

 ばらてーら、と思いつつも、口調だけはそらっとぼけて、



「まさか。平和と民主主義を愛する自衛隊が、そんな危険なことするわけないじゃないですかあ」

明けましておめでとう御座います。

年末年始はリアル修羅場ってたので、更新できず申し訳ありませんでした。

あと、彼らの登場は次回以降ですね、すいません、思った以上に(ry

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