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14 異世界航空戦史

ひたすら説明回。

 見れば、ちょうど騎竜用の装具のデモンストレーションをしているところだった。群がっている異世界人が着ているのは、軍服よりややゆったりとした印象の詰め襟。ベトナムの民族衣装アオザイのように裾が長く、袖も広い。日本のオフィスだと書類やドアに引っ掛けそうなものだが、どうなのだろうか。


 彼らの視線の先にいるのは一頭ずつの軽飛竜ラーマローキ重飛竜ウルローキ。それぞれ異世界、竜騎国の種だが、その体にそれぞれ別の種類のボディアーマーを身につけている。地球製だ。


 飛竜が大きく分けて二種、軽飛竜と重飛竜が運用されているのは前にも述べた通りだ。

 だがこれが採用された歴史的経緯は些か複雑なものがある。


 そもそも最初の頃、運用されていたのは人懐こく臆病な軽飛竜だ。


 主な任務は偵察。

 敵を遙かな上空から俯瞰して、その布陣を事前に確認するという行為は、当然だが相当昔から実行されていた行為だ。それこそ邪神竜出現以前からの歴史がある。

 もちろん、どこの国も直ちに倣った。あらゆる国に棲息する軽飛竜が人の手で飼い慣らされ、その当時から交流のあった天竜と大小さまざまな摩擦はあったものの、概ね順調に認可されていった。


 それも事情が変わる。

 偵察行為は重要な軍事行動だが、地球人類と同じく異世界の国家もまた、既存の価値だけでは満足出来なくなり、竜族にそれ以上の価値を求めるようになる。


 最初は軽飛竜に石塊を持たせ、敵陣に放り込むことから始まった。


 やがて積載量ペイロードに不満を抱いた一部の人間が、軽飛竜より扱いの難しい重飛竜を飼い慣らすことを考案。竜息ブレスを使えることもその決断を後押しするファクタだっただろう。

 よって、重飛竜は最初から戦闘を目的として人族に管理され始めた形となる。


 こうして異世界初の航空支援が開始されたわけだが、効果は絶大で、やはりこれも多数の国家によって模倣される。


 軽飛竜の偵察行動にしても、どれだけ秘密裏に軍隊を展開しても、上空からひと目で看破されてしまうことに焦れたとある国家が、当然行き着くであろう行為に及んだのだ。


 即ち飛竜の撃墜。


 最初は地対空であったらしい。

 単なる弓では竜を仕留めるのは難しいため、専用の毒が開発された。これが竜毒である。最初は、飛翔のためにごく薄い鱗しか持たない軽飛竜が次々と犠牲になり、疑問に思った各国がその存在を知るのに、そう長い時間は掛からなかった。


 すぐに重飛竜向けのバリスタが開発される。

 何しろ竜毒の毒性は際限なく高められ、触れただけでも人間の皮膚が爛れるようなものまで使用されていたのだ。

 銃器が発達しなかったのには、もちろん魔導の存在もあるが、この竜毒を最大限扱うためには弓が最適であったことと、射程の問題が挙げられる。


 あとは人類史によく似た軍事的いたちごっこの始まりである。


 重飛竜は防護を固めると、地対空攻撃で撃墜が不可能だと判断し、軽飛竜に弓矢を持たせての空対空攻撃が開始された。


 それを阻止するために直掩の軽飛竜が生まれ、ここで竜騎ドラグーンという兵種が誕生する。


 重飛竜にも護衛用の武具を備えた兵士を乗せるようになり、様々な空戦技術が編み出される。


 だがこれらの蛮行は程なくして天竜グレート・ドラゴン達の知るところとなる。

 彼らは激怒し、全ての竜種の戦闘目的の従軍の禁止を示唆した。


 生ける伝説たる彼らに叱責され、人類はエスカレートしつつあった軍事利用を一旦は縮退させざるを得なかった。


 ここで立ち止まる理性があるあたり、地球より未来があるのかもな、と玲音は思わずにはいられない。


 しかし軍拡競争はどこの国でもなくならず、航空戦力を天竜の怒りを買わずに充実させるべく、空戦魔導士が生まれ――


 そこで、邪神竜災害が発生したというわけだ。


 以降の歴史において、異世界人類の戦争史はそのまま対邪神竜戦闘に集約され、対人戦闘というのは驚くほどに発達していない。

 地球人類から見て異世界が遅れた文明に見えてしまうのは、その辺りが原因と言える。


 もっとも、全てが地球に比べて遅れているのかと言えば、そんなことは全くないのだが。


 ともあれ、そういった諸々の事情により、竜族の装備というのは限られていた。何しろ人類と邪神竜では火力が全く違う。竜息ブレスの威力はちょっとした火砲なのだ。生半可な装備では防ぎきれない。

 かといって上に乗っている人間が防御魔法を張ろうにも、弾速に反応出来なかったり、常時展開型は魔力の消耗が激しすぎたり、そもそも飛竜は背中の上で魔導を展開されるのを嫌がったりで、実を言えば飛竜と魔導の相性はかなり悪い。


 さて、そこで地球の登場である。


 今、飛竜たちに着せられているのは、人間が着用するボディアーマーを竜族用に仕立てたものだ。


 積載量の低い軽飛竜には、そこまでの重装備を施すことが出来ないため、レベル2~3のボディアーマーを任務に合わせて着用している。邪神竜相手にはほぼ効果のない装備だが、そもそも今は軽飛竜を直接戦闘に投入することがないため、わずかたりとも生存率を上げるためである。銃様のもので撃たれる危険性は低く、竜息を受ければそもそも耐えられないため、爪や牙で捕らえられた時に備えて防刃素材を多用している。また、尻尾による打撃、落下時の衝撃をわずかでも緩和するため、衝撃に反応してそれを吸収する緩衝材を使用。重量制限のせいでかなり開発には苦労したらしい。


 一方で重飛竜。こちらはかなり物々しい。元々かなりの強度の鱗を備えていることもあり、もう少し装甲を足せば邪神竜の竜息にも耐えられるのではないかという意見もあり、用途の許す限りのアーマーを身につけている。基本的には軽飛竜と同じく緩衝材なのだが、その上でアーマーの強度はレベル3以上。さらに消防士が使う耐熱装備を重ねて、熱衝撃波である竜息に対抗している。さすがに翼をやられてはどうしようもないのだが、どうやっても翼を多う鎧は開発できなかった。その姿は元々大きな重飛竜の姿がさらに膨れ上がり、まさに“兵器”といった様相だ。さらに特筆すべきは――


「うわあ」


 玲音は引いた。

 何だか余計な金属製のハーネスが付いているなと思って目を凝らしてみたら、そこから伸びる突起の形状には見覚えがあり、


「武装ランチャーじゃん、あれ」


 明らかに『何か』を吊すために作られた構造に、これ公表していいの? と他人事じゃないので心配になる。


「まあ、日本じゃな、ほら」

「持てないからね……コブラで十分なんだけど」


 自衛隊における最強の攻撃機F-2は生産ラインが閉じているため、異世界に持ち込むにはコストと整備の両面であまりにもリスクが大きすぎると、早々に結論が出されている。

 結局のところ、異世界という未知の空で使う航空機に求められるものは、どれだけ壊してもすぐ修理できること、エンジン・パワーで大概のことをやれてしまうこと、この二つなのだ。


 なお、C-1は使用されているが、これは短距離離着陸性能の高さと、戦闘には使用しないという二つの特殊な条件が加味されたための選択である。


「ああ、公表したってことは」

「そういうことだろ。諦めな」

「わたしの知らないところでこんなの進めてたのか、あの人……」

「あの人というか、日本政府な」


 護衛の自衛官が半目になってフォローするのに、玲音も似たような顔で同意する。


 飛竜は軽重両方とも、タクティカルベストが合一されており、騎乗した兵士が武器などの装備を出し入れしやすくなっている。


 実を言えば対邪神竜戦において、地球との〈空門ゲート〉が開くまでは重飛竜の活躍の場は少なく、陸戦型邪神竜に対する航空支援程度のものだった。

 だが現在においては寧ろ、重飛竜に期待される役割のほうが大きくなっている。


 まあ、これも要するに、その一環。


 最後に軽飛竜には鉄帽テッパチを被せる。知った時玲音は流石に酷いと思ったのだが、軽飛竜の狩り方(さすがにとうの昔に廃れているが書籍によると)の基本は、餌を出して寄ってきて、小さい頭を突き出したところを鈍器でかち割るというものだったのだ。それを踏まえて軽飛竜にはヘルメットを被せることにしている。重飛竜はカドが大きすぎて、被せる意味がないと判断された。


 そんなわけで、「竜族の近代化改修」のプロモーションが行われていたわけである。


「こういうの見てると戦争してるんだなーって気分になるわ……」

「だな。あとまあ兵員輸送としての重飛竜にはかなり期待が大きいぞ。あのサイズで静粛性と着陸性能に優れた生物ってのは重宝する」

「その割には速い」

「そうだな。音速は出せないが、支援して離脱するには十分な速度だ」

「COIN機みたいなもんか」


 何故攻撃ヘリではいけないのかと言えば、要するにまあ、政治の話だろう。今のところは有耶無耶に誤魔化しているが、そのうちケチがつく可能性は大いにあるのだから、そうなる前に竜騎国に能力を持たせてしまえばいいのだ。


 例えばそう。


「例えば戦争が深刻化して、多国籍連合軍を結成しなければならなくなった場合、竜騎国側がある程度の主導権を握ることの出来る力を持っていなくては、日本が何もかも面倒を見ることになる、か」

「それとまあ、当然、日本が何でもかんでもやらされることへの懸念はある。そのうち、竜騎国の口車に乗せられて、他国への侵略にそれと知らずに関与させられる可能性だってゼロじゃない。同盟国同士の軍事バランスが著しく偏っていることは、どちらにとってもいいことじゃないんだ」


 玲音はいち自衛官である。玲音には政治がわからぬ。

 だが弱小国を一方的に守らなければならない国家の労力は、自衛隊という立場上、否が応でも実感せざるを得ないものではあった。


「そういうこと。いずれ竜騎国は銃を欲するだろうな。その時どうするかは知らんが。だが地上戦力は徐々に充実させているぞ。――ほら、来た」


 示された方向を見ると、一際大きな歓声が上がる。

JOJO第四部……!


すいません完全に昨日の更新忘れてました。

アポ取れなくてこれ取れなかったらマジやべえってなってたのを何とか取れたんで気が抜けて……

思わずかのか半瓶飲んで泥酔してしまいました。

酒弱いのにね。

あ、はい。気をつけます。


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