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09 対竜戦闘03

 スロットル最大。


 空気を翼がつかむ感触。


 途端、イーグルが機敏になる。

 操縦桿から伝わる空の手応えが濃密になる。


 わずかな風の変化が、フライ・バイ・ワイアを通じて手のひらに伝わる。


 ほんのかすかに操縦桿を傾け、予測進路に機首を向ける。


 加速。


 燃料を確認。

 十分いける。

 問題は何体撃墜できるかだ。


 E-2Cから入電。


『ミサイル命中。二体の撃墜を確認。だがステルスで隠れた可能性もある。目視するまで油断するな』

「了解」


 ここだ。


 スロットルを押し込む。

 美也機が同様についてくるのを確認し、二機のイーグルは異世界の空を切り裂いて飛ぶ。


「タリホ」


 程なくして蒼穹に黒点を二つ確認。

 他に影がないかをざっと見てとり、いないと判断。


「定石で行く。あとはアドリブ」


 美也に一方的に告げて、自機はまっすぐに敵機に突撃。

 自機のレーダでロックオン。察知した邪神竜が頭を下げて高度を落とそうとする。


 最近、邪神竜の行動が的確になってきた。


 そう感じながらも、一発目のミサイルを発射。

 現在、自衛隊〈ゲートキーパー・リーダーズ〉で主に使用される空対空ミサイルは、セミアクティブ・ホーミング方式である。これは邪神竜が戦闘機のようなノズルを有していないために誘導がしづらいこと、完全なアクティブ・ホーミングだとミサイルのレーダ波を解析される危険性が高く、どのようなレーダ波を使用したか記録することができるセミアクティブのほうが何かと都合がよかったからでもある。


 その代わり、デメリットもある。

 当然ながらレーダを発射母体から照射し続ける必要があるため、E-2Cのような強力な管制機の支援がない場合は、イーグルが空戦機動を行いながら行う必要がある。F-35のような高度なレーダを持たないため、機体正面に敵機を捉えておかねばならない。これは大きな制約となる。そして多数の目標に対しては処理が追いつかないこともある。


 それでもなおこの形式のミサイルを使っている理由としては、高価な最新鋭の撃ちっぱなしミサイルは、最終決戦まで温存しておきたいという思惑がある。


 恐らく邪神竜成体の活性化の折りには、今までとは比べものにならない数の標的を相手取ることになる。その際に一気呵成の殲滅を狙いたいがために、敵から解析されることを恐れて使うのを控えているという事情がある。


 だが自衛隊が一番気に入っているのは……



 値段だ(比較的安い)。



 アクティブ・ホーミング・ミサイルというのは非常に高価なのだ。


「高価なものがないなら安いものを使いこなせばいいじゃない、司令官!」という自衛隊の気質はやはり空自でも変わることはなく、セミアクティブならではの「事前に発射後してから手動で照準を合わせてロックオン(通称:置きミサイル)」などの割と意味の分からない攻撃方法を次々と隊員たちが編み出し実践しており、上層部も「割とこれでいけるんじゃない?」と思ってしまっているのである。


 実際のところ、結果から見ると最新兵器の導入を遅らせてしまっている遠因にはなっているのだが、現場では結局「安くて信頼性の高い」兵器こそが好まれる。そこ、M4の話をしたら正座な。


 そんなわけで玲音はミサイルを一発リリース。

 回避のために高度を一気に下げ、腹下に潜り込もうとする邪神竜を追ってスプリットS。


 高度を十分に保っておいたおかげで、高度優位のまま背後を取れた。そのままもう一発のミサイルを発射。


 邪神竜、翼を畳むようにしてレーダの索敵から逃れようとする。


 その背に重なるレティクルが時折ぶれる。

 邪神竜の体が時折、レーダ波を無効化しているためだ。


 一発目、わずかに逸れて、邪神竜をオーヴァ・シュート。

 だが二発目も同じ偶然は起きない。


 二発目が命中。爆音を響かせて邪神竜が大きくバランスを崩す。


『グラム1、回避、スターボード!』


 玲音、すぐさま翼を立ててカーヴ。


 ちらりと背後を確認すれば、思った通り、邪神竜の二匹目が食いつこうとしていた。口元に注意。竜息ブレスの兆候はまだないと見て、一瞬だけ目を外して一匹目を視認。


 ちょうどぼろくずのようになって地面に叩きつけられるところが見えた。

 いかに邪神竜とはいえ、あの高度、あの速度、そしてミサイルを食らった直後では、絶対に助からないし、助かったとしても飛べない。


 玲音はすぐに切り替える。

 二匹目をひき剥がすべく、スロットルを一瞬絞り、旋回。


 翼がしなりそうなほどの鋭いターン。


 一瞬高度を下げてからの急旋回。


 ローGヨーヨー。


 邪神竜は構わずついてくる。


 そりゃあそうか、と玲音は加速で鈍りつつある思考で、そうごちる。


 相手はあの変態戦闘機F-16よりも高度な旋回性能を持つのだ。重たいイーグルの小手先の旋回技では振り切れない。

 かといってまっすぐ飛べば、竜息の餌食になる。


 だが今の一瞬の攻防で十分だった。


 バックミラー越し、邪神竜の背後に、イーグルがすとんと収まるように現れた。


 そのままミサイル発射。

 玲音を追うことに夢中になっていた邪神竜はミサイルをもろに食らい、落下していく。


「サンキュー、グラム2」

『いいってことよ』


 言いながらも、玲音は旋回をやめない。

 訝しむ美也の声。


「どうしたの?」

『さっき地上にいた奴がいない』

「あ」

特にネタがない。

E-3すげえ苦戦したんですけど、敷波を支援艦隊旗艦にしたら、一発クリア。

さすが俺の嫁。

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