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08 対竜戦闘02

「DC、基地のレーダにはまだ捉えられていない?」

『反応なし。最近、パターンE(邪神竜のこと)の反応が途切れるケースがかなり多い』

「了解。レーダによる走査を行いつつ、目視にて索敵。バステト、あんたは上、私は下」

『ツー』


 玲音、操縦桿を倒して背面に入れる。


 眼下に広がる最外壁領。といっても深部の山林とは違い、ここはやや外周にあたり、ややもすると人里に近い位置に存在する。自衛隊はこの近辺にも部隊を駐屯させ、あらゆる場所に迅速に地上部隊を展開することが可能になっている。なんだかんだと戦闘機を繰り出したところで、最終的に最も頼りになる兵科は歩兵なのだ。


 やや荒い印象のある平野が、逆しまになった視界に映る。キャノピィに手を突いてバランスをとりつつ、警戒。


 飛行機の背面飛行には限界時間がある。燃料タンクというのは基本、正姿勢で飛ぶことを前提に設計されている。

 玲音、再びエルロン・ロール。正立に戻してから、タイミングを計って再び反転。これを繰り返す。しんどいといえばしんどい作業だが、こればかりは致し方ない。もちろん、その間もレーダが地上・上空をくまなく走査している。美也も目を皿にしているはずだ。


「異常なし。引き続き捜索」


 飛行機の怖いところは、パイロットが失神した場合、そのまま墜落してしまうということと、失神している時、僚機が気づかなければ、そのまま墜落してしまうという点だ。特に背面飛行はやりすぎればレッドアウトの危険性があるため、玲音はこのようにしてたびたび報告を記録し、自分に異常がないことをアピールする。もちろん、何度か背面に入れたら安全性を考慮して、役割を美也とスイッチする。

 アナログだが、邪神竜は時折レーダ波を吸収して、探知できないということがある。そのため目視索敵の重要性が非常に高くなっているのだ。赤外線探知でも、ひどく体温が低いため、地形によっては見つけにくいことがあるのだという。


(天然のステルス兵器・・・)


 玲音が抱くのはそんな感想だ。

 否、そもそも生物と呼ぶには、あまりにも戦闘に特化しすぎてはいないか? 異世界の飛竜ですら、日常生活のために多くの飛行に不要な機能を抱えているというのに。


 何か奇妙というべきか、気持ちの悪いモノを感じずにはいられない。


 という考えごとをしている間にも、世界は動き続けている。


 何度めかのローリングを経て、荒野に黒点を発見。玲音は通信機に叫ぶ。


「タリホ。地上に邪神竜らしきものを確認した」


 一瞬で上空をパス。機体を直角以上に傾けて視界から逃さないようにしつつ、カーヴ。


『位置情報を送れ』

「了解。規定通り、友軍が到着するまで、上空から監視する」


 補足しておくと自衛隊は軍隊ではない(戒め)。


 陸自の先行ヘリが到達するまではイーグルが偵察の代わりをしなければならない。見逃すわけにはいかないからだ。幸い燃料にはまだ余裕がある。

 二機のF-15は緩やかな八の字を描いて飛行を継続する。これならば、旋回によって高度が落ちてもすぐに取り戻せるのだ。


 玲音は絶えず、空と大地に目を走らせる。邪神竜と思しき影は地上に降り立ったまま動かない。休んでいるのだろうか?


 シルエットからして間違いはないはずだが、近づいての確認は危険を伴う。低空で対空攻撃を受けるなんて、全くぞっとしない。まして今、玲音のイーグルには何も対地武装がないのだ。


『陸上型にも最近、対空攻撃をしてくる奴がいるよね。散弾みたいなの』

「動きに十分気をつけて」

『ツー。……でもそんなこと気にしてる場合じゃなさそう』


 美也がどこかうきうきした声で報告。同時に、玲音機のコクピットにもアラームが響く。


『アンノンをジュディ(レーダで確認)』

「こっちでも確認。……くそっ、間が悪いというより」

『これ自体が罠? まあいいや』

「グラム1よりDC。レーダにアンノンを確認。数4。近辺に友軍のフライトプランはある?」

『答えはノーだ。空中管制機も確認した。陸自ヘリの到着まで、あと八分。持ちこたえられるか?』


 玲音は舌打ち。四対二。初撃次第だが、外れれば不利になる。


「大丈夫。むしろ制空権を確保するまで遅らせたほうがいい。地上の監視目標はまだ移動中。進路に変更なし」

『……よし、霞司令から許可が降りた。交戦を許可する』


 待ってましたと、玲音、スロットルをミリタリーに押し上げる。


「グラム隊、これより対竜戦闘に入る」


 Gスーツが急に体を締め付ける。


 全身の血流にアドレナリンが行き渡るのを感じる。


 体の中のスイッチが次々と戦闘用に切り替わっていく。


 さながら、今のイーグルの速度のように。


『こちら空中管制機アロンダイト。アンノンを確認。これをエネミーと呼称する。データリンク確認。ミサイルを発射状態にセットしておけ』

「グラム1了解。グラム2、最初だけ管制機のデータリンクでミサイル。そのあとは連携して敵を叩く。当たろうが外れようが」

『ツー』


 イーグル2機、機種上げ、高度上昇。

 空中戦において最も重要なファクタが高度である以上、定石だ。


 機首を巡らせて敵方向に。遙かな稜線。まだ敵機は見えない。

 玲音はそれを確認してからループに入れる。上昇の頂点でロール。正立に。飽くまでここまでは基本に忠実に動く。


 邪神竜との戦闘における基本は、ミサイルによる飽和攻撃だ。だがというべきか、だからというべきか、邪神竜が対策を立ててきたのは初撃の防御というまっとうな手段。不完全ではあるものの、確実に成果が上がっている。それに対抗する手段もまた必要になってくるだろう。どうしても対応が遅いが、それはいつものことだし……


 玲音、ミサイル・シーカーをオープン。アロンダイトからのデータリンクで、レーダに邪神竜を示す光点が浮かぶ。それは時折揺らぐように点滅を起こす。


 邪神竜の体表は可視光を含めた電磁波を吸収してしまう性質を持っている。しかもそれは不定で、絶えず変化を繰り返しているのだ。そんな生物はどこにもいない。

 しかし意図的に行われているわけでは、どうやらないらしい。それも今のところはという注釈はつく。


 何が起きるのか予想がつかない。

 軍事とはそういうものだ。


 ましてやそれが異世界であるならばなおさら。


 ミサイル発射のキューが浮かぶ。


 玲音はミサイル・レリーズを押し込む。


 まだ見えぬ敵に向けて、四発のミサイルが次々とファイア。


 蒼穹に噴射煙を曳きながら疾駆していく。


 玲音、結果を見るより早く、機首上げ、さらに高度を上げる。


「グラム2、着弾を確認と同時にエンゲージ、私は正面から行く。サポートを頼む」

『ツー。やってやろう』

ユニオンでジーナたんにとっつき!

見て見て僕のラベージパイク!

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