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13 だって見えたんだもん。

「こちらハンマーヘッド2、<通路>からの飛来物を確認!」


 当然ながら、現場はさらに混乱一歩手前の緊張感の中、配置に着いていた隊員たち全てに次々と指示が下されていた。

 UH-60ブラックホークを操る工藤一等陸尉が、間髪入れずに機体を旋回させながら報告する。


『<通路>対策本部より<ゲート・キーパーズ>全隊へ。ただちに緊急体勢に入れ。これは訓練ではない。繰り返す。これは訓練ではない!』

『CCPよりガーゴイル隊。先日の打ち合わせ通りにアンノンを都心から出すな。高度を上げてあらゆる対策を取れるようにしろ。訓練してる暇はどうやらなかったが、君たちの腕を信じているぞ』


 連携上の理由から、CCPと上空のイーグルとの通信もこちらに聞こえるように設定されている。イーグル・ドライバーの返答が即座に来た。


『ガーゴイル1、了解』

『ツー』

『飛行中のOH-1は高度を取って状況の記録を開始せよ。コブラを2機上げて迎撃態勢を取れ! ブラックホーク、ハンマーヘッド2! 状況を説明してくれ』

「ハンマーヘッド2、了解! これからアンノンを追走する。ガンナー、激しく動くぜ、準備はいいか!」

『ロックンロール!』


 ドアガンナーであり、友人でもある瀬崎二等陸尉の勢いのいい返答。固定されたM2重機関銃を構えて、万が一の場合に備えているはずだ。


 鈍重に見えて意外なほど小回りの利くUH-60Jが、風を切り裂くローター音と共に加速。

 今し方通路を駆け抜けていった物体に猛然と追い縋った。

 すぐさまキャノピィ越しに、飛行している物体が見え、それが大きくなってくる。


「いいぞ、前のドラゴンより速度はない! アンノンの詳細は――うっ?」

『どうした、ハンマーヘッド2』

「これは……人間?」



   *   *   *



<通路>対策本部、つまり<ゲート・キーパーズ>司令部に詰める面々は、ブラックホークのパイロットが呟いたそのひと言に顔を見合わせた。


「人間だと?」

「あっちの世界にもいたということか」

「いや、今はどうでもいい。とにかく、どうやって対策する?」


 思わず話し込みそうになる幹部達を抑えるようにして、<ゲート・キーパーズ>地上班の総指揮を執る六角三等陸将がマイクを掴む。


「撃つかどうかは後で決める。とりあえず詳細を教えてくれ、ハンマーヘッド2」


 御歳50、皺の刻まれた顔は、PKOの最前線で部下の命を預かってきた者にしかない渋みと責任感が見て取れる。その落ち着いた声音に冷静さを取り戻したヘリパイから、改めて報告。


『――人間です。何かこう、棒のようなものに跨って、黒いマントと黒い服、黒い帽子を着けています。あ、今こっちをちらっと見ました。髪は金髪。我々と同じ、人間に見えます。それと……女のようです!』

「……むう」


 さすがに完全に人間と断定されると、判断に困る。あまつさえ女。古武士然とした風貌に似合うのか似合わないのか、女に手を挙げたことが一度もない六角三将は、顎に手を当てる。


 考えたのは数秒。決断はすぐだった。


「――分かった。ハンマーヘッド2はそのままアンノンを追跡せよ」

『了解! それと、――あ、見えた!』

「何がだ?」

『ち、ドロワーズかよ! 白です!』


 無視して、高々度で観測しているOH-1ニンジャのパイロットに通信。


「ステイシス1、対象の速度を割り出せるか?」

『こちらステイシス1、既に計測済みです。およそ80ノット。前のドラゴンより遅いようです』

「よし」


 司令部に置かれた液晶パネルには、<通路>を中心とした東京の地図。そこに担当官が手早く数値を入力すると、アンノンの進路予測が、到着時間ごとに分けておおまかに表示された。

 タッチパネルも兼ねているそれに指で触れながら、六部陸将は続けて展開中のAH-1コブラの部隊に命じる。


「クアドロ隊、これから指定する座標に急行せよ。待機し、アンノンが通過しようとしたら進路妨害を行え。ただし武器の使用は許可できない」

『クアドロ1、了解』

『クアドロ2、了解』

「三方で囲む。動きを止めないようなら捕獲用に用意したネットを使え」

『はっはあ、女の子相手にそれは出来ればやりたくないですな!』


 返信を聞きつつも、コブラを示す光点が移動を開始したのを見て、さらに矢継ぎ早に指示を出す。


「ハンマーヘッド2は指定座標までアンノンを追跡しろ! まっすぐだ。そうすればポイントまで一直線だ!」

『ハンマーヘッド2、了解! 女の子の尻追っかけ回すのは実は得意です!』

『お前ホントに懲りろよ!』


 ガンナーらしき声が聞こえたがこれもこの際無視。


「地上部隊、ただちにポイントに急行! FVはその場で待機。装甲車も要らん。脚の速い車両のみで迎え。残りはそのまま<通路>の監視を続けろ!」

『了解!』

『こちら空自総隊司令。さっきの指示は聞こえていたと思うが報告を。旋回中のイーグルは援護に向かわせました。目的はアンノンを高空に退避させないこと。ビルの谷間に閉じこめます。それ以上のことは陸自の専門だ。お任せします』


 空自始まって以来の女傑と言われる霞空将補の声。

 六角陸将は彼女と面識があり、信頼のおける人物でもあると分かってはいたが、それでも敢えて念を押す。


「了解した。だが陸自ウチのヘリと衝突だけはせんようにしてくれ。風圧とかにも注意してもらいたい」

『了解。ただ、現在上がっている2機はもうすぐ燃料がビンゴです。百里から2機を新たに上げました。間もなく到着します。コールサインはケルベロス』

「分かった。といっても、勝負は一瞬だろうが……」


 言っている間にも、モニタ上では、3手に分かれた自衛隊のヘリが、着実にポイントに向け、アンノンを誘導している。


 ランデヴーまで、あと3分もない。

さあて、長らくお待たせしましたが新しい状況に移行します。

次の更新は少し空くかも……2週間か、そのくらい。


2-4突破! 長かった……!

人類最大の敵は、羅針盤だ。

赤城・瑞鶴が大破するほどの激戦でした。

よく頑張ったみんな! 赤城、今回ばかりは14時間まるまる風呂に浸かっていいぞ! バケツはなしだ!


あと、記念にこたつを買いました。提督執務室が艦娘のだべり場に……

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