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37.さくら開花前線

【詩】です。好き嫌いがあるでしょうから、苦手な方はご注意ください。お読みにならなくとも支障はありません。春になると【桜】をモチーフにした歌が色々と出ますよね。それらに触発されるようにして書いたものです。

これも起こりうる一つの未来形態として。


キミを見送る季節は春がいい

華やいだ軽やかな風に紛れ

感傷に浸る暇さえ

きっと無くしてくれるから


降り注ぐ日差しは、とても眩しくて

白く滲んだキミの背中を綺麗に溶かして

ささやかなわだかまりさえも

昇華させてくれるだろう


忘れたはずの切なさを

微笑んだ口元に残した


最後に一言、口を開こうとして

音に出す前に 薄紅色の笑いの中に掻き消えていった


キミに伝えたかったこと

喉まで出かかっていた言葉は

きっと、散りゆく桜だけが知っている



柔らかに浮かび上がる薄紅色の花びら

天高く吸い上げられて

粉雪のように舞い落ちる


毎年のように繰り返される景色なのに

その度に胸が締め付けられるのは何故だろう




キミの笑う声がするりと腕をすり抜けて

残像が淀む光の柱に立ち上る


穏やかに見えた刻限も

湧き上がる大きな嵐の中に在り

冷たい雨に打たれて

いよいよ美しさを増す


溢れんばかりの胎動は、荒ぶる神の如く

結んでいた腰紐を解いてゆく


花散る色は薄紅

淡い雫が涙を流す


弥生の空は晴れやかに 

霞む空遠く

密やかな哀しみは切なくて

その気持ちはだれのもの

その想いはだれのもの




静寂に浮かび上がる薄紅色の花びら

時を告げる風に乗って

淡雪のように舞い上がる

毎年のように繰り返される景色なのに

その度に胸が苦しくなるのは何故だろう



伸ばした手を巻き戻すように

全ては振り出しに戻って


キミの瞳に映っていたのは

懐かしさという名の記憶

あしたのキミにはもう必要ない



ここで冬の衣を脱ぎ捨てて

キミは軽やかに飛び立つ


同じくらい軽やかに

その背中に手を振って

手元に残ったキミの温もりを

そっと抱きしめる


やがて消えゆく体温は

追憶に封をするだろう



想い出に浮かび上がる薄紅色の花びら

濾過された記憶に

ハラリハラリと降り注ぐ

変わらない穏やかで懐かしい景色に

今年もまた

古びた傷跡が胸を突く 



【桜】には切ない思い出が似合う。そんな個人的感想の基に書いたものです。こういう終わり方もあるだろうなということで。

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