8月だけの、片思い ⑦
ご覧いただきありがとうございます。
本作は、実話をもとに再構成した「叩き上げ公務員」の半生を描くサクセスストーリーです。
学歴もコネもなく、定時制高校からスタートした主人公。
決して順風満帆ではなかった彼が、どのような葛藤や壁を乗り越え、霞ヶ関の本省、そして幹部へと駆け上がっていったのか。
実際の官僚機構や他省庁でのリアルな泥臭さ、そして人生後半での新たな挑戦までを丁寧に描いていきます。
働くすべての人、そして逆境から這い上がりたい人に届く作品になれば幸いです。
ぜひ最後までお付き合いください!
8月下旬、約束通り4人での食事会が開かれた。
「この4人が出会ってから、まだ1ヶ月くらいなんやよなぁ」
グラスを傾けながら、吉田が懐かしそうに切り出した。
「広くん、あの時なんでチラシを持って、私たちのところに来たの?」
望月が尋ねると、吉田はニヤリと笑った。
「ほら、川野くんが、毎日、敦っちゃんのところにアイス買いに行ってただろ? 最初はなんで、毎日コンビニなんやろと思って尾行してみたらさ。敦ちゃんと楽しそうに喋ってるのを見て『これは……!』と思ったんよ」
「あ、それなら私も!」と望月が続く。
「川野くんが来た日で、敦っちゃんが休みの時があってね。『今日、いつものお姉さんお休みだよ』って教えたら、顔を真っ赤にして俯いちゃってさ。私も『これは……!』って察したのよ」
不意のネタばらしに浩一が赤面していると、敦子が優しく微笑んだ。
「私はね、毎日アイスを買いに来てくれる可愛い男の子がいるなぁと思って、時々、おまけしてあげてたの。でも……たまに来ない日があると、なんだか少し寂しくなったりして。『私、これは……』って思ってたところに、吉田さんがチラシを持って来てくれたんだよ」
「あれっ……僕の気持ち、みんなにバレバレだったんですか!?」
素で驚く浩一を見て、3人はお腹を抱えて爆笑した。
「でもさ、川野くんは、やるなぁと思ったけど、俺も同じ手で望っちぃと仲良くなれるわけないやん? だから川野くんをダシにしてチラシ持っていったんよ。……しかし、夏休みなんてあっという間やなぁ」
「大学生、いいなぁ……」
「川野くんも、この夏休みは大学生みたいなもんやったで。俺や敦っちゃん、望っちぃみたいな大学生に囲まれて、対等に話をしてさ」
「本当、楽しかったなぁ〜」
「これから会えなくなっても、細かいことは忘れても……俺たちと過ごした夏休みのことは、きっと忘れへんと思うよ」
「はい!」
温かい笑顔と楽しい時間を胸にしっかりと仕舞い込み、浩一は前を向いて歩き出した。
バイトの契約最終日まで、あと3日。
ご覧いただきありがとうございました。
4人の笑顔が弾けた最高の食事会。
「細かいいことは忘れても、この夏休みのことは忘れない」という吉田先輩の言葉通り、15歳の浩一にとって一生モノの思い出となった素晴らしい一夜でした。
楽しかった時間のあとに訪れる、カウントダウンの切なさ。
終わりゆく8月と浩一の決意を、ぜひ次回も温かく見守っていただけますと幸いです!




