久しぶりの学校、やっぱり友達っていいね。
窓から朝日が差し込み、小鳥の声がまぶたの裏をくすぐる。
「ん〜……まだ寝てたいよぉ……」
自分でもびっくりするほど腑抜けた声が出た。
けど現実は無慈悲だ。
もう一度寝返りを打とうとした瞬間、寮全体のアラームが爆音で鳴り響いた。
「アキナ様、おはようございます。今日も見事にお寝坊ですね」
「ティアぁ……おはよう……同室でほんと助かった……」
「光栄です。ほら、起きてください。朝食ですよ」
「むり……でも行く……」
私は体を引きずるように起こし、大きく伸びをした。
鏡の前に座れば、すでに準備バッチリのティアが手際よく髪を梳いて結ってくれる。
その間に私は軽く化粧を整えた。
「今日からいよいよ、部活見学とか交流会とか始まるのよね」
「えぇ。昨日の歓迎パーティー、本当に豪華でしたね」
「ねっ。ごはんもケーキも最高だったし……スカーレットの代表挨拶、ビシッとしててかっこよかったなぁ」
「正直、あそこまでやるとは思いませんでした」
「あら、そんなこと言って。これから同級生なんだから仲良くしなきゃ」
「私は従者ですので。授業には同行しませんよ」
え、待って……
つまり一人ぼっちってこと……?
うそ、寂しい……ティアがいないだけでこんなに心細くなるなんて。
コンコン。
「アキナさん? おはようございます。入ってもよろしい?」
「あっ、スカーレット、おはよ! もちろん! もう食堂行くとこなの」
「でしたら三人で行きましょう? 朝は賑やかな方が楽しいですもの」
「行こ行こ! ね、ティア!」
「アキナ様がお望みなら」
「決まりですわね! では参りましょう、お二人とも!」
食堂はパンとスープ、スクランブルエッグの香りで満たされていた。
「くん……いい匂い……早く食べて教室行こ。時間ないし」
「はい、アキナ様」
朝食を平らげ、三人で教室へ向かった。
すでに何人か着席している中、一人の男子が勢いよく走り寄ってきた。
「姉さん! おはよう!」
「おはよう、オーディン。こちらはアキナ様とスカーレット・ドレイン嬢よ」
「ご機嫌よう、グーデリアン小男爵。スカーレットとお呼びくださいな」
「おはよう。アキナだよ。気軽に呼んで」
「じゃ、アキナ。スカーレット」
「オーディン、アキナ様のこと頼むよ。私は授業に出られないから」
「わかったって、姉さん」
ティアは席を離れてしまったけど、教室はあちこちで会話が飛び交い、活気に満ちている。
ああ、学校って感じ……。ティア、私が不安になるのわかってて送り出してくれたのかな。
「アキナ、友達紹介する。こいつがダーク。仕立て屋ラークの息子」
「初めまして、アキナ嬢、ドレイン嬢。ダーク・コンフィグです」
「堅い! アキナでいいし、敬語なしで! ね、スカーレット!」
「えぇもちろん。お友達でしょう?」
「じゃ、僕のことも“ダーク”って呼んで」
ガラガラッ。
一瞬でおしゃべりが止まり、全員が席に戻った。
背の高い、美しい女性教師が入ってくる。
「皆さん、入学おめでとう。このクラス担任兼、魔術学担当のエレノア・クリスティーです」
……お、美しい……。
「さて、一週間はクラス交流会や部活見学をしてもらう。部活は必ず一つ参加するように。では解散」
部活か……どこが人気なんだろ。
「アキナさん! ぜひ一緒の部活入りましょう!」
「スカーレット……! 一人だと不安だったから嬉しい」
「もちろん。オーディン様とダーク様も一緒にいかが?」
「お、いいぜ。ダーク、どうする?」
「レディたちが望むなら喜んで」
「じゃあ決まりね!」
四人で部活紹介エリアへ向かう。
新入生でごった返し、先輩たちがあちこちで勧誘していた。
「剣術部〜! 剣術部はどうだ〜! 男女歓迎だぞ〜!」
剣術……こっちの剣道みたいな?
ぼんやり見ていたら、
「なぁ、行ってみね? アキナも好きそうだし」
オーディンに現実へ引き戻される。
「レディたちが問題ないなら僕は」
「アキナさんは?」
「行きたい!」
「よっしゃ、決まりだな」
四人で声をかけていた先輩へ向かう。
「いらっしゃい。興味ある?」
「はい!」
「じゃ、模擬演習あるから来てみて? 面白いよ」
「行きます!」
「私はミナ。ミナ・カンザス。で、あそこにいるデカいのが双子の兄ルーカス。あそこで寝てるのがティント・コンフィグ。全員ファーストネームでいいからね」
「オーディン!」
「ダークです。姉がお世話になってます。」
「スカーレットよ」
「アキナです!」
「あぁ、君がコンフィグ弟か。よしよし、みんなよろしくね!」
──これが後の勇者パーティーの出会いである。




