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「恋をしないなんて可哀想」と言われ続けた私が、感情が全ての力になる異世界で、恋愛感情ゼロゆえになぜか無限魔力を得て魔王と戦うことになった話  作者: きりりんが
第10章: 無色の継承者、絶望を越えて

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眠る勇者と、動き出す世界

白い天蓋越しに差し込む光は、柔らかく、穏やかだった。


王都中央医療院の一室。

戦場の血と魔力とは無縁の、静かな場所。


ベッドの上で、アキナは眠っている。


深く、穏やかに。


呼吸は安定していて、苦しむ様子はどこにもない。


「……まだ、起きないね」


ミナが小さく呟く。


返事はない。ただ、窓の外で鳥がチュンっと鳴いた。


「医師の話じゃ、目覚めない理由は“拒絶”じゃないそうだ」


ダークは腕を組んだまま言う。


深淵中和(ヴァクウム・エモリス)の反動で、意識が自分から沈みに行ってる。守るための眠りだってさ」


「本人らしいな……」


ルーカスが苦笑する。


「全部抱え込んで、それでも折れない代わりに、倒れる」


ティントはベッド脇に立ったまま、一言も発しない。


視線はアキナの顔から離れず、感情を表に出すこともなかった。


その沈黙を、スカーレットが破る。



「魔王からの書簡は、王議会でも正式に受理されましたわ」


「同盟、って形になるの?」


「表向きは“不可侵協定”。ですが実質は――共犯ですわね」


その言葉に、誰も否定しなかった。


魔王は生きている。

魔王軍も健在だ。


それでも世界は、一度“終わらなかった”。


それは紛れもなく、ここに眠る少女の選択の結果だった。


「……起きたら、何て言うかな」


ミナが呟く。


「きっと、『おはよう』だよ」


オーディンが答える。


「何事もなかったみたいにさ」


誰かが笑い、誰かが泣きそうになる。


世界はまだ壊れていない。


だが、静かに――確実に、形を変え始めていた。




眠る勇者を中心に。

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