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「恋をしないなんて可哀想」と言われ続けた私が、感情が全ての力になる異世界で、恋愛感情ゼロゆえになぜか無限魔力を得て魔王と戦うことになった話  作者: きりりんが
第1章: 無色の継承者、目覚める

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私、この世界でもやっぱり特別で違う存在みたい。

スカーレットと別れた私は、鼻歌を歌いたい気分で石畳の道を歩いていた。

胸がふわふわする。こんな感覚、この世界に来てから初めてだ。


「アキナ様? ご機嫌ですね。そんなに街が楽しかったですか?」


横で歩くティアが、少しだけ呆れたように、けれど嬉しそうに笑う。


「んー、もちろん街も楽しかったけど……それより、“友達になれるかも”って思った子に出会えたから」

「……ドレイン嬢、ですか?」

「そう。すごく優しそうだったじゃない? 同じ学年だって言ってたし、仲良くできたらいいなぁ」


ティアの表情が一瞬だけ陰った。

普段の温和な微笑みがほんの刹那、冷たい何かに変わった気がして、私は思わず首をかしげる。


「どうかした?」

「いえ……ただ、その……。アキナ様は、出会う人をすぐ信じてしまうので。それが心配なのです」


まるで姉が妹を諭すような声。

いつも以上に“守ろう”という気持ちが滲んでいた。


その時だった。空気が変わる。


風が止む。街の喧騒が遠のく。

背筋にぞわりと寒気が走った。


……え、何これ。急に寒い……。


――ドオオォォォン!!!


爆発音が街を揺らした。

商店のガラスが震え、悲鳴があがる。


「な、なに……!?」

「魔力暴走です! ほら、あの少年を!」


ティアの声が強張る。

視線の先では、少年が暴走魔力の渦に飲まれていた。

魔力は獣のように唸り、周囲を破壊しかけている。


ティアが手を伸ばすよりも早く、私は駆けだしていた。


「アキナ様!? ダメです、危険すぎます!」


止める声が聞こえた気がしたが、足は止まらなかった。


苦しそうな表情。泣き叫ぶ声。

助けたい――それだけだった。


しかし、近づくほどに魔力の暴風は激しくなる。

肌が刺すように痛い。


「大丈夫! 私が……絶対に助けるから! 落ち着いて!」


叫んだ瞬間。


胸の奥がざわりと波を立てた。


――そして、声が響いた。


微弱波(パリッダ・アウラ)


透明な光が足元から立ち昇り、少年を包みこんだ。

光は柔らかく、あたたかく、冬の陽だまりのようだった。


「な、なんだ……魔力が……消えて……」

「嘘だろ、暴走が止まっていく……!」


暴れていた魔力が、すーっと静まっていく。

少年は涙を流しながら、私の手を掴んだ。


「ありがとう……お姉ちゃん……」

「よかった……無事で……」


そこへティアが追いつく。

その顔色は蒼白で、目は信じられないものを見るように震えていた。


「アキナ様……今の……アキナ様が?」

「え、あれって……私?」

「透明の光……そんな……あり得ません。あれは……“無色属性”の……」


ティアは唇を噛みしめると、私の手を強く握った。


「アキナ様。今すぐ王城に戻ります。危険です……あなたが……」


“知られてはいけない”


そのニュアンスがはっきりと感じ取れた。


***


王城の門前には王女直属魔術師団が待ち構えていた。

まるで私を捕えるかのように、鋭い視線が向く。


「先ほどの現象……無色属性の適性を確認してもよろしいか?」


「レイヴン団長! アキナ様はまだ正式な検査も……!」


ティアが声を荒げる姿は珍しかった。

私を庇うように一歩前に出て、まるで敵から守るように立ちはだかる。


「アキナ様に乱暴は許しません。王女殿下にも報告しますよ」


レイヴンは肩をすくめたが、その目は真剣だ。

魔術師団に案内され、記録水晶の解析結果を見せられる。


そこに映るデータは――


“アキナに近づくほど、感情魔力がゼロに収束する”


「領域型……しかも、完全な感情抑制……」

「バカな……伝承にしかないはずだ……」


ざわめく魔術師たち。


私はただ、震えていた。

そんな私に、ティアはそっと手を重ねた。


「アキナ様。怖がらなくていいのです。私は……何があっても味方です」


その声音は優しくて、強かった。

“守る”という想いが、まっすぐ伝わってきた。


***


一方そのころ、魔術学園。


スカーレット・ドレインは静かに学園長室の扉を開いた。

昼間の可愛らしい笑みは欠片もない。


「……見つけましたわ。“無色”の力を持つ子を」


学園長は、渋い顔で頷く。


「予定より早かったな」

「ええ。でもあの子は……“鍵”ですわ。この世界を変えるための」


その瞳は紅玉のように妖しく輝き、

まるで人間のものとは思えないほど深い闇を宿していた。


「“あの方”も動きだすでしょうね」

「だろう。スカーレット、引き続き監視を」

「ええ、喜んで」


スカーレットはにっこり微笑んだ。

その笑みは、人を惑わせる魔性の光を帯びていた。


***


夜。

私は眠れず、窓の外を眺めている。


風が揺らす木々の隙間に――“真紅の光”が立っていた。


スカーレット。


昼間の朗らかな表情とは違う。

今の彼女は、まるで別人。


冷たい。

静かで、底の見えない瞳。


(……スカーレット。どうしてここに……?)


その視線はまっすぐに、王城の私の部屋を見つめていた。


まるで――「あなたを迎えに来た」と言わんばかりに。


私はまだ知らない。


私の力が、

スカーレットの“目的”と、

ティアの“本気の保護”と、

そして――世界の運命そのものを揺らすことを。

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