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「恋をしないなんて可哀想」と言われ続けた私が、感情が全ての力になる異世界で、恋愛感情ゼロゆえになぜか無限魔力を得て魔王と戦うことになった話  作者: きりりんが
第9章:無色の継承者、友のもとへ

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全員集合。

騒ぎを聞きつけたのだろう。

足音が重なり、視界の端に見慣れた顔が増えていく。


「アキナ様、大丈夫ですか?」


ティアの声に、返事をしようとして――できなかった。

泣きすぎて喉が詰まり、息が上手く通らない。

ただ、小さく頷くだけで精一杯だった。


「うんうん、大丈夫ならいいよ、アキナ」


そう言って、ミナが場を整えるように立ち上がる。


「ティント、男子たち呼んで先にコミュニティールームに集まってて?色々みんなで話す必要があると思う」

「わかった。先に行ってる。ティア、行こう」

「あ、はい」


2人が去ったあと、ミナは静かに私たちの前に座り込んだ。

何も言わず、ただそっと腕を回してくれる。


その腕が、ぎゅっと包み込む。


言葉はいらなかった。

温度で、圧で、伝わってくる。


――ここにいていい。

――もう、どこにも行かせない。


胸の奥に、じんわりと染み込む感覚。


ああ……愛されてる。


それは、単なる友情じゃない。

戦場を越え、痛みを共有し、何度も背中を預けてきた相棒だからこその感情。


私はこの世界で、

血の繋がりとは違う――自分の家族を作ったんだ。

誇らしく思うと同時に、この家族を、何が何でも守ると心に誓う。


やがて涙も引き、呼吸も落ち着いてくる。

私とミナとスカーレットは、ゆっくり立ち上がり、コミュニティールームへ向かった。


扉を開けると、

そこには男子メンバーだけでなく、ヴァイス教官、ローレンツ宮廷魔術師、そしてルダス博士の姿もあった。


「途中で会ってな。我々も同席しても構わないか?」


最初に口を開いたのはヴァイス教官だった。

私は無言で頷く。


当然だ。

ここにいる全員が、これまでの困難を一緒に越えてきた。

居なかったら私...、いや、私たち全員六将軍相手に倒されていただろう。


「まず……私から、皆さんに言いたいことがあります」


スカーレットが1歩前に出る。


「本当に……ごめんなさい」


勢いよく頭を下げるスカーレット。

空気は重たいけれど、誰も彼女を責めなかった。

ここにいる全員が、彼女の置かれていた状況をちゃんと理解している。


沈黙を破ったのは、ルーカスだった。


「俺はさ」


少し視線を逸らしながら、続ける。


「お前が何か抱えてるってのは、正直、気づいてた。だからこそ先輩として、ちゃんと手を差し伸べられなくて悪かったよ」


「私も……ごめんね、スカーレット」


ミナが続く。


「最初、あなたが何か隠してるって思って……信用できないなんて、距離を置いた。あなたはこんなにもいい子なのに」

「ルーカス様……ミナ……」


「それに、僕たちもだよ」


ダークが静かに言う。


「一番近くにいたのに、気づけなかった。ごめん」

「ダーク様も……」


一通り、謝罪が巡ったところで。


「……もういいか?」


ヴァイス教官の低い声が、空気を引き締めた。


「今後の話だ」


――今後。


その一言で、場の温度が変わる。


「最後の魔王戦は、正直に言って消耗戦になる」


言い切る教官に、ルダス博士が頷いて続ける。


「こやつの言う通りだ。そしてな……一番しんどいのは、アキナくん。君だろう」


わかっている。

私の魔法がなければ、魔王は変わらない。

誰も救えない。


「魔力以上にきついのは、心だ。君たちは……境遇が似すぎている」


「そうですよ、アキナさん」


ローレンツ宮廷魔術師も口を開く。


「あなたは強い。それは私も知っています。ですが……心は、別です」


心配の色が、2人の目に滲んでいる。


私は1歩前に出た。


「ルダス博士。さっきの王女様の話……答え、わかりました」


「ほう。聞こうか」

「はい。あの6人だったからです。心を通わせて、王女様も“友達”で“仲間”だって思ってたから」


博士は満足そうに微笑んだ。


「それが分かっているなら、大丈夫だ。……だが、気を付けなさい」

「はい」


ふと周囲を見る。


何が何だか分かっていない顔の、オーディンとルーカス。

察して任せろと言わんばかりの、ダークとティア。

無言で寄り添う、ミナとスカーレット。

少し離れた場所から、全体を包むように立つティント。


――この人たちがいる。


このみんながいれば、私は大丈夫だ。

何があっても、生きて帰ってこられる。


そのまま、全員で夕食を取った。

生暖かい空気に包まれた、穏やかな時間。


食器を片付けていると、ティントがふいに聞いてくる。


「ねぇ、アキナってさ。元の世界では、どんな子だったの?」


「え?」

「ほら……前の世界での話。友達とかさ」


「……長くなるけど、いい?」

「もちろん。全部聞きたい」


私は話した。

魔法のない世界のこと。家族のこと。

親友のノンちゃんのこと。

そして――いじめられていたことも。


「ふーん……どの世界も、似たり寄ったりだね」

「……そうかもね」


そこへ、洗い場からティアが顔を出す。


「アキナ様。魔王戦の作戦会議をしましょう」

「うん、今行く」


私は駆け足でコミュニティールームに戻った。


「で……作戦なんだけど」


一つ一つ、丁寧に説明していく。


――ただし、

たった一つの情報を除いて。


これを伝えたら、きっと全員が反対する。

だから今は、伏せる。


それでも。


この作戦で行くと、私は決めていた。

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