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「恋をしないなんて可哀想」と言われ続けた私が、感情が全ての力になる異世界で、恋愛感情ゼロゆえになぜか無限魔力を得て魔王と戦うことになった話  作者: きりりんが
第1章: 無色の継承者、目覚める

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彼女にこんなに早く出会うなんて聞いてません!

馬車に揺られて15分。窓の外が一気に開けたかと思えば、そこはアーディン王国の心臓部――王都の商人街だった。


「わぁ……!すごい!ティア、見て、あっちもこっちも人だらけ!」


人の熱気で空気が震えるようだ。日本とは違う活気に、思わず胸が躍る。


「迷子になったら困りますので、手をつないでいてくださいね、アキナ様」

「ちょっ、子ども扱いやめてよ!……でも、知らない土地だし、ちょっと心強いかも」

「路地裏に入ると一気に治安が悪くなりますからね。アキナ様は危なっかしいので」


はいそこ、余計な一言。イエローカードだよ、ティア。


でも――こうやって心配してくれる存在がいるのって、嬉しい。


「着きましたよ。仕立て屋です」


ティアに呼ばれて顔を上げる。目の前には高級感あふれる店構え。扉も磨き込まれていて、なんだか近づくだけでドキドキする。


「こ、ここで……?」

「はい。さ、行きましょう」


恐る恐る扉を開くと、すぐさま店主がにこやかな笑みで迎えてくれた。


「ティア様、お久しゅうございます」

「ラークさん、こちらがアキナ様です」


丁寧なお辞儀。物腰は柔らかいけど、長年の職人の自信がその目に宿っている……気がする。

――いや、私社会人経験とかないんだけどね?ここ来るまでそこら辺にいる女子高校生だったし。


話はとんとん拍子に進み、私はラナルータというスラッとした女性に採寸室へ通された。


ラナルータの手際は、まるで芸術。メジャーが舞ってるみたいだ。


「ラナルータさん、ここで何年働いてるんですか?」


気づけば、聞いていた。


「私ですか?まだ三年ですけれど」

「もうそんなに!すごいですね」

「ふふ、まだまだです」


照れながらも嬉しそうな顔が、なんだか胸に染みた。

……こういう“普通の会話”って、本当にいい。


採寸を終えてティアの元へ戻ると、彼女はじとーっとした目を向けてくる。


「アキナ様?顔がにこにこしてますけど、何かありました?」

「ううん!ティア以外の人と話せて嬉しくて」

「そう……ですか。なら、また街に来ましょうね」


その言い方がまるで姉みたいで、ふと日本の家族を思い出し、胸がきゅっとなる。


そんな余韻も束の間、


「アキナ様、生地をお選びください」


ラークの声で現実に引き戻された。


「軽くて丈夫なのがいいです!」

「かしこまりました。こちらの栗色など、髪色にも合いましょう」

「素敵!じゃあそれで……あと、このワインレッドも!」


買い物は順調に進み、本屋、文具店、杖職人の店まで巡り――


ぐぅぅぅぅ。


「……あ」

「お昼も過ぎましたし、そろそろ食事にしましょうか。シチューなどいかがでしょう?」

「シチュー!?行く!!」


テンション爆上がりで歩き出した、そのとき。


―――ドン!


「痛っ……!」


誰かとぶつかった。見上げると――


淡いピンクの髪。宝石みたいに輝く緋色の瞳。

同い年くらいの女の子が、気遣わしげに手を差し伸べていた。


「ごめんなさい。お怪我はありませんか?」


その声が、驚くほど甘くて軽やかで、心の奥にすっと入ってきた。


「こ、こちらこそ……前を見てなくて。えっと……」


言いかけて、息を呑む。


「……綺麗」

「え?」

「ごめんなさい!瞳がすごくきれいで。私はアキナ、あなたは……?」

「私はスカーレット・ドレインですわ。よろしくお願いします、アキナ様」


完璧なお嬢様スマイル。何これ、ヒロイン?いや、女神様?


「スカーレットで構いませんわ。同じ学年のようですし」


「え?なんでわかるの?」

「その本、魔術学園の教科書ですよね?」


あ、やばい。顔が熱い。


「学園が始まったら、仲良くしてくださいね。では失礼しますわ」


スカーレットは軽やかに人の波へと消えていった。


――後に“緋色の魔術師”と呼ばれる少女との出会い。


その重大さを、このときの私はまだ知らない。

ただ、“初めてできた友達”に胸をときめかせていた。

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