元気がない
柚猫の彼氏の彼女は、どう思っているのだろう…。
幼馴染の彼氏の彼女って…早口言葉かよ。
子どもの頃に、親戚の叔父さんが両親にとってどういう関係かきいてこんがらがった記憶と似たようなものがある。
お父さんのお母さんが産んだお父さんの兄弟だよ?くらいの意味不だ。
…
意味不明のオンパレードで、頭の中がどうにかなってしまいそうです。
そんな、狂いそうなオレの携帯が鳴ったのは、その次の日だった。
着信をみると、オレの母親からだった。
どうやら、柚猫の母親が病に倒れたとの連絡だった。でも、大したことはないみたいだけど、一応連絡しておくねと。
柚猫の母親には、オレもずいぶんとお世話になったもんだ。
なので、今日仕事終わりに柚猫の母親の病院へと向かうことにした。
柚猫の母親は、確かクッキーが大好物だった。
なので、お見舞いに持って行くことにした。
夕方病院へと向かうと、病室の廊下に柚猫と父親がいた。
「柚猫おじさん、お久しぶりです」
青白い顔の柚猫父がパッと顔を上げた。
「あぁ、カズくん…。わざわざ来てくれたんだね、ありがとう。ほら柚猫、カズくんが来てくれたよ?」
柚猫は、軽く頷くだけでこちらを見ずに、ずっと床の方をみているみたいだった。
柚猫とおじさんの二人が廊下にいて、病室が少し慌しかった。
もしかして…急変したんじゃ。
パッと柚猫の方に目を向けると、柚猫の手がわずかに震えているようだった。
柚猫…
オレは、ちょっと席を外しますねと柚猫父にいい、自動販売機で飲み物を三本購入した。
柚猫父には、ホットコーヒーを。
柚猫には、ホット柚ティー。
蓋を開けて、柚猫に渡した。
そうでもしないと、柚猫は頭が痛くなるから。
なぜだ?って?
フタを自力であけると頭痛がするのか?って?
柚猫は、頭痛持ちで水分がカラダから足りなくなると、体調が悪くなるのだ。
たぶんオレが来る前に…泣いていたんだろう。
目元をみれば、すぐにわかる。
オレは水分補給とかしか、してあげられることはないけど…
でも、できる限り柚猫と柚猫父の側に寄り添った。
何を話すわけでもないけど、同じ空間で二人を見守った。
なにかあれば、すぐにサポートできるように。
少しすると、病室から看護師さんとお医者さんが出てきた。
「もう、処置も終わり落ち着きましたので、しばらくしたら目を覚ますと思いますよ」
と、にっこりしてくださった。
「ありがとうございます」
と、柚猫父がお礼を述べて病室へ入っていった。
「柚猫、立てる?おかあさん、もう大丈夫だって。部屋入ろうか」
柚猫は、おもむろに立ち上がり部屋へと向かった。
いつもの元気が全くない…。
そして病室へと入るなり、
「お母さん‼︎お母さん‼︎」
と、母親を揺さぶった。
「ちょっ、柚猫‼︎落ち着きなさい。」
柚猫が、いきなり寝ている母親を揺さぶったもんだから、柚猫父は大慌てで柚猫をとめていた。
「柚猫…おかあさん眠ってるだけだから、大丈夫だよ。もうすぐ目覚ますから」
オレは、柚猫が安心するようになるべく笑顔で微笑みかけた。
すると柚猫は、少しホッとした表情で椅子にストンと腰を下ろした。
しばらくすると、本当に柚猫母が目を覚ました。
少し話せるようになった柚猫母だけど、今日はゆっくり休んだほうがいいねってことで、オレがこのまま柚猫を送りとどけることになった。
帰り道に、柚猫が大好きなお寿司屋さんに寄った。
柚猫は、あまり食欲がないみたいだったので、オレが持ち帰りのパックに柚猫の好きなお寿司と、ミニケーキと団子を詰めて持たせた。
もしかしたら、柚猫の住んでいるアパートに彼氏が来ているかもしれないけど、でもそんなことをいっている場合では、ない!
フラフラの柚猫を、きちんと送りとどけなければだ。
幸い、柚猫の部屋の電気も消えていて誰もいないみたいだった。
「柚猫、明日もおかあさんのお見舞い行くの?」
オレの質問に柚猫は、頷いた。
そして、
「ありがとう」
と、力なくいい部屋に入っていった。
柚猫は、おかあさん大好きっ子だから、よっぽど辛かったのだろう。
オレもできる限り、柚猫の母親のお見舞いに行こうと決めた。
あ…クッキー渡すの忘れて…なかった。
オレも少し、気が動転しているみたいだ。
今日は、早く寝て脳を活性化させて、明日は、バリバリ仕事をこなそう。
そして、明日また仕事終わりに柚猫母の病院へ行こう。
続く。




