メリーゴーランド
とりあえず、カフェに行くことにした。
金曜日の彼氏がいないところで。
だって…彼氏いたら色々聞きにくいもんね。
で、クリスマスはどうしてるのか聞いてみた。
そしたら、クリスマスの週に曜日ごとに楽しむって教えてくれた。
…
なるほどー。
でさ、そもそもなんでそんなこと始めたのか知りたいじゃん?
だから、直球で聞いてみたんよ。
そしたら、まさかのビジネスアンド非孤独死ってこたえが返ってきました。
わからんなぁ…。
今日は、どんどん質問攻めしてやろうと意気込んでいると、柚猫の携帯がなった。
出ていいよって促すと、柚猫が電話にでたんだけど…
トラブル発生したから会社戻らないとってことだった。
それじゃ仕方ないねってことで、解散した。
…
一人カフェに残されて、ホットコーヒーを啜った。
柚猫の仕事って…そもそもなんだっけ?
彼氏に集中しすぎて、なんの仕事してるかなんて、すっぽ抜けていた。
その日の夜に、仕事大丈夫だった?って連絡してみたら、スタンプ一個でグッ!みたいな大丈夫的なやつが送られてきた。
…
そう…ね。
オレは、彼氏にすらなれないただの幼馴染だし…。
…
今度は、いつ柚猫に会えるんだろうな…。
大好きな幼馴染が大人になったら、まさかのこんなことになるなんてな…。
今までは、ずーっと彼氏いなかった柚猫。
そもそも彼氏なんていらないって、ずっと頑なに言っていたのに…。
いったいどんな心境の変化があったのだろう。
柚猫に、いったい何が…
休みの日、オレはあてもなくトボトボと散歩した。
というか…
なんか家にいるとずっと柚猫のこと考えちゃうから、気分転換に出てきたっていう感じだ。
今までは、行き交うカップルが普通の恋人だと思い込んでいた。
しかし…柚猫みたいに、何人もと交際している人もいるのかもしれない。
そう思うと、なんか…
人間不信になりそうだ。
「あれっ?幼馴染さんじゃないっすか?」
声の方を振り向くと、そこには知らない男性…
幼馴染…
?
この人…どっかで…
⁉︎
「あっ‼︎柚猫のっ⁉︎」
「そうっす!」
…
ずいぶんこの前とイメージが違うが…この男性は、柚猫の月曜日の彼氏だ。
で…
で、です…
隣の女性…は…
「こちら、ボクの彼女です」
「こんにちは〜」
「あ、こんにちは…」
にっこり微笑ましく挨拶する彼女さん…
…
え、この人は…彼氏にもう一人彼女がいることを知って…いるのだろうか⁉︎
それは、まさか直接きくわけにはいかない…。
そりゃ、当たり前だけどさ…
そっか…。
やっぱり柚猫とは、お互い自由的な感じか…
そうだよね…。
縛りあわない関係ってことか。
でも、この彼女も他に彼氏が…?
と言いますか、今ってそんな感じなんか⁉︎
オレが知らないだけで、今の男女交際って自由だったりするん⁉︎
んんんっ⁉︎
一瞬で、脳内が高速メリーゴーランドになったよね。
だれかとめてーっ‼︎
脳内メリーゴーランドとめてーっ‼︎
ウギャーっ‼︎って大声で走り去りたい‼︎
現実逃避の森に駆け込みたいっ‼︎
転生したいっ‼︎
それとも、しゃがみ込んで頭抱えてギャーっ‼︎って叫び散らかして散々散らかして、大の字で転がって、またギャーっ‼︎って叫びたい‼︎
「じゃあ、ボクたちはこの辺で」
オレが脳内で狂っていると、彼氏も彼女同様、にっこりオレに微笑んだ。
…
オレも一応…にっこり返ししたよ?
一応ね。
でもさ…たぶんめっちゃ、表情がひきつってたよね…。
柚猫…
オレは…
柚猫と楽しくメリーゴーランドという名の時を過ごしたいです。
…
今…柚猫は、柚猫で楽しくメリーゴーランドに乗ってるのかな…。
オレが勝手にそのメリーゴーランドは、危ないよって、思い込んで引きずり下ろそうとしちゃってるのかな…。
このまま…柚猫が楽しいなら、オレは日曜日のお父さんみたいに、柚猫がメリーゴーランドで楽しそうにしているのを、ビデオカメラでおさめて…ずっとずっと、そのビデオカメラで何回も再生して、微笑ましいなぁって見返せばいいん?
ただ…微笑ましく…ってのは、ムリ‼︎
やっぱり、おかしいって‼︎
柚猫の彼氏と彼女を見送りながらオレは閃いた。
あ、そうだ。
オレの頭も爆発しそうだから、散髪に行ってさっぱりしようと!
まずは、脳内で解決できないので外から攻める作戦だ。
ここは…オシャレに美容室へ行こう。
シャンプーしてもらって、身も心もあらってもらうんだ。
美容室さんに、すべて泡ごと水に流してもらおっと。
続く。




