火曜日の彼氏
柚猫に案内されたお店は、おしゃれなガーリックが漂う素敵なお店だった。
「いらっしゃいませ」
と、爽やかな店員さんがお出迎えしてくれた。
かと思えば、
「ヨッス」
と、柚猫と気軽にハイタッチをした。
…
まさか、この爽やか男性が水曜日の彼氏…なんじゃ?
と、ガン見しているとやっぱり柚猫から
「水曜日の彼氏だよー」
って紹介された。
そしてオレは、柚猫の幼馴染ですと返した。
爽やか男性は、オレにペコリとお辞儀をして、営業スマイルで
「どうぞ、ごゆっくり」
と、席へ案内してくれた。
…
いや、気まずっ‼︎
オレは、なんでノコノコと好きな幼馴染の彼氏見たい放題ツアーに参戦してしまったのだろう…。
別の店を提案するべきだった…。
てかね、彼氏二人みたけど…みなさん清楚系イケメンなんだよなぁ。
でも、違うタイプっぽい。
なぜ彼たちは、六股彼女と付き合ってるんだろ…
謎なんだけど⁉︎
水曜日の彼氏がいるので、なんか…落ち着かないけど、美味しそうなメニューをみて心を落ち着かせ、ガーリック風味の空気を吸い込んで、深呼吸した。
運ばれてきたお水は、ワイングラスに入ったレモン水だった。
おしゃれだなぁ。
なんかもう…お店も彼氏もおしゃれすぎるんよ。
ほんと…なんでなん⁉︎
てかさぁ、水曜日の彼氏くんよ‼︎
今から柚猫は、日曜日の彼氏とお泊まりなんよ⁉︎
いいんか⁇
そこら辺わかってんのかな⁉︎
どこまで貴方、共有しておるん?
…
てさ…
オレには…関係ないよね。
柚猫と一緒にいるのに…
一番そばにいるのに、遠い存在なオレ。
同じテーブルにいるのに、まるでカラダだけがそこに置かれていて、本人の心はお店の隅っこに追いやられた感…
「ねぇ、どれにする?」
⁉︎
柚猫の言葉に、我に返った。
よかった。
魂が隅っこから一瞬で吹っ飛んで戻ってきた。
…たぶん。
「柚猫は、どれにするか決まった?」
「わたしは、ピザにするー。チーズとニンニクマシマシで!」
え…
これから彼氏にあうのに…ニンニクマシマシなんだ?
…
「あー、美味しそうだねー」
「でしょ!カズもそれにしたら?」
…
「だな」
いいんです。オレはニンニクマシマシで‼︎
どうせ、これからなんにも予定ないしさっ‼︎
ヤケクソのやけ食いですね。
ガツガツ食いましたとも。
そして、たまにレモン水で心を浄化して柚猫と目が合う。
にっこりとオレに微笑む柚猫がまさか、六股してるなんて思えない…てか、思いたくもない。
でも、現実は…六股してるんだもんな。
実際に、二人彼氏みてるし…
日曜日の彼氏とのやりとりもみせてもらったし…
あとは、火木金だけ!って…
いや、ムリムリ…
もうお腹いっぱいなのに、これからバイキング行こう‼︎って誘われた…そんな状態だ。
いや、だれも火木金の彼氏もみる?なんて言ってきてないけどさ…。
いや、いうのは柚猫しかいないけどさ…
「美味しかったねー」
「うん…」
美味しかったよ?でも…なんか、心から食を楽しむことができなかった…。
だって、ご飯前に好きな人の彼氏を二人も知ってしまったもんだからさ。
まぁ、一人は文のやりとりだけなんだけどさ…
でも、その文章がなかなかパンチ効いてたもんだからさ…
せっかくの柚猫とのランチ…
もっと、美味しさも楽しさも堪能したかったぜ…。
オレが堪能したのは、絶望…
そんなの堪能したくなかったよ。
でも、絶望をしっかりと堪能してしまったオレに、柚猫は…
「これからわたしの部屋でゲームしない?」
と、何食わぬ顔で誘ってきた。
…
それは、ムリだ‼︎
密室で二人きりなんて…
それはムリすぎる…。
うっかりオレが暴走しかねない。
てか、早く彼氏のところへ行ってやればいいのに…
まさか、焦らし系女子なのか⁉︎
柚猫は、恋の駆け引きがめっちゃプロ級なんじゃ…
オレの知らぬ間に、柚猫が…
こんなに、恋愛上級者になっていたなんて…
「あ、ごめん。彼氏から連絡きた」
…
ほら、日曜日の彼氏が痺れ切らして待ってるんじゃんか。
そりゃそうだよ。
週一しか会えないんだもんさ。
「いいよ、彼氏待ってるんだろ。じゃあな」
オレが気をつかって帰ろうとすると、柚猫は
「待ってないよ?それに連絡きたの火曜日の彼氏だったし」
なんていうんです。
⁉︎
「え…火曜日の彼氏って火曜日しか連絡とらないんじゃないの?」
「あー、臨機応変って感じ。メインは火曜日だけど、花の水あげといてーとか、たまに急用ならその都度対応なの」
…
なんか、ややこしくなりそうだけど…
えっ⁉︎てか、火曜日の彼氏と同棲してないよね?
ね?
続く。




