これを食べるのじゃ
おじいさんは私が巨大化したことについて知っているようだった。
そのことを聞こうと口を開いた瞬間、パッと手を出された。
「何も言わなくても分かる。私にはイルカが宿っているからな。」
何を言っているのだヤブ医者は。
「何を言ってるのだヤブ医者は、か。まぁ理解が追いつかないのも無理はない。
だが事実じゃ。お主の中には鯛が宿っておる。
お主は鯛を食べたことによってDNAが結合し、その影響が巨大化という形で現れておるのじゃ。
信じるかは君次第じゃがな。」
信じるも信じないも、
心を読まれ、体も大きくなっている以上、信じる他ない。
「ぼくはどうやったら元に戻れますか?」
「単刀直入に言おう。わさびを食べると元に戻る。」
そんなことで?っと思ったのを読んだのか、
口早におじいさんが語る。
「お寿司や刺身についているわさびは、本来DNAと結びつかないための添え物だったんじゃ。
ツーンとくる辛さは、さかなDNAを除ける刺激ということじゃ。」
そう言われると納得してしまう。
「母なる海という言葉通り、人間もかつては海のせいであり、それゆえに馴染んでしまう。
だが安心せい。さいわいお主はまだ治るぞ。」
意味のわからない世界観の中で”治る”という言葉を聞いて一気に涙が出た。
緊張が一気に溶け出し、力が入らなかった。
「食べます。食べます。わわび食べます。」
よかった。これでいつもの日常にもど・・・。
どん。
目の前には皿に盛られた大量のわさびが置かれた。
しかも根っこのままのなまわさび。
小崎は再び混乱しながら聞く。
「これ食べるんですか?」
「さすがにそのままはしんどいから、特性巨大おろし金を持ってきたぞ。
これでするするっといってくれい。」
言葉が出なかったが、
大海原へ飛び込む気持ちで勢いよく口にかき込んだ。
2時間後。そこには綺麗な皿とよくわからないことをうめいている小崎の姿があった。
おじいさんは笑いながら
「ほっほっほ、大したもんじゃ。普通の人は2週間にかけて食べるのにそれを2時間で平らげるとは。」
いますぐ完食しなくってよかったのか。それを先に早く言ってくれ。
言葉にせずともイルカの力で伝わっていてくれ。
そう思いながら気絶するように寝てしまった。