添い寝友達《一部分修正しました》
俺は、703号室の部屋のドアを開ける。それに気づいた恋が、俺に声をかける。
「飴ちゃん、お帰りーー」
恋は、カップラーメンを作っていた。
「腹減ったのか？」
「うん、美味しそうで。もらっちゃった。駄目だった？」
「食べていいよ」
「ありがと、飴ちゃん」
俺は、笑いながら恋を見つめる。
ピリ辛の味噌ラーメンの匂い、美麗が好きなやつ。
俺は、これが苦手だ。
それ食った口で、美麗は俺にキスすんだよな。
「飴ちゃん、泣いてんの？」
「みたいだな」
俺は、涙を拭う。
インスタントのコーヒーをいれて、俺は恋の前に座る。
「いただきます」
ニコニコ顔で、恋はラーメンを食べ始めた。
この匂いを嗅ぐの五日ぶりぐらいか……懐かしいな。
「これ、飴ちゃんが好きなんじゃないんだね」
ズルズルとラーメンをすすりながら恋が話してくる。
「ああ。わかるのか？」
俺の言葉に恋は頷きながら、「うん。だって飴ちゃん泣いてるから」と言う。
「そうだな。泣いてるな」
俺は、コーヒーを飲む。
「あっ！さっきいたのって、美麗君でしょ？」
恋は、俺を見つめる。
「ああ、わかったか」
「わかるよ！パーカー目深に被るの、紗綾もよくやるから」
「そっか」
ラーメンを食べながら、恋も泣き出す。
「目一杯、傷つけてあげた？」
「ああ」
「じゃあ、また来たら私を利用していいよ。キスぐらいならできると思うから」
恋は、グーサインを出した。
「もう、来ないだろ？」
「来るよ。彼は、明日も来る」
「紗綾ちゃんが、そうだったのか？」
「そうだよ。二週間は、きたよ」
「どうやって、別れた？」
「日替わりで、ソフレとノンケだよ」
恋は、寂しそうに笑う。
「いい加減、諦めてくれなかったから…。最後のやり方は、最悪だったよ。家に忘れ物あるから、取りに来てって嘘ついて。引っ掻けた女の子とやってるの見せつけたら、途中で帰ってた」
泣いた恋の涙が、ラーメンに吸い込まれていった。
「俺もそこまでするのか……」
俺の言葉に恋は、悲しそうな顔をやめて話す。
「だったら、京君にしなよ」
「あの、店員さんか」
「京君はね、そう言うのわかってくれるタイプでね。ちゃんとやってくれるよ」
「その時は、お願いしてみるよ」
俺は、笑った。
「飴ちゃんと、私ってよく似てると思わない？」
恋の言葉に俺は、「似てるな」と言って笑った。
「やっぱりね」小さく言ってから、すぐに恋は話し出した。
「でもね、紗綾。私が、傷つけた日からめちゃくちゃ人気が上がったんだよ。憂いを帯びてて最高とか闇落ちかんがすごくて萌えるとか病んでる感がエロくて草とか書かれてたの！エゴサしたから知ってる」
恋は、嬉しそうに笑い出した。
「嬉しいのか？紗綾ちゃんに人気がでたら…」
「うん。昔、私、女優さんなりたかったの」
「うん」
「でもね、所属事務所に女と別れて傷つくらなくならないと仕事はやれないって言われて…。人生終わったと思ったら、ママに拾われたの。その時付き合ってた彼女がDVやばくてね。今なら、あんな女駄目だってわかるんだけど…。当時は、愛だと思ってたのよ。親に捨てられた私からしたら年上で可愛がってくれて優しいお姉さんに思ったんだ」
恋は食べ終わったラーメンを流しに持っていった。
「飴ちゃんだから、見せたげるよ」
恋は、シャツを脱ぎ捨てて下着姿になった。
「見て！これじゃ何の仕事も受けれないって」
胸にある刃物でつけられた傷。
お腹にある煙草を押し当てられた痕。
太ももにある火傷の痕。
「酷いな！痛かっただろ？」
恋は、その言葉に首を横に振った。
「薬飲まされてたから痛みはなかったのよ。これが…」
手を横に振って笑って、恋は服を着た。
「紗綾が、所属してたの私と同じとこでさ。第二の朝倉真知子を私で作り出そうとしてたんだ。7年ぶりの悲願らしいよ。私で出来なかったから、紗綾に人生かけてるって言われた」
「俺と同じだな」
「やっぱり、飴ちゃんと私似てるね」
「ああ、似てる」
恋は、俺の腕に腕を絡ませてきて、水を飲んでる。
「飴ちゃん、美麗君とことん傷つけて羽ばたかせてあげなよ」
「ああ、わかってる」
「社長が喜ぶでしょ？」
「そうだな」
「歯磨きしていい？」
「ああ」
鞄から歯磨きを取ると、恋は洗面所に行った。
「先に寝てるよ」
戻ってきた恋は、俺のベッドに横になった。
俺も、コーヒーをさげて歯磨きをして恋の隣に寝た。
「飴ちゃん、それでも私、辛いよ。死にたくなる」
「わかるよ」
俺は、恋を強く抱き締める。
恋もそれに答えるように強く抱き締めてきた。
添い寝友達か……。
これで、あってるのか？
わからないけれど、昨日よりは心が穏やかな気がした。
＊この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません＊
