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飴ちゃん何で？《一部分修正しました》

俺のマンションについて、恋と二人で、タクシーを降りた。

「飴ちゃん」

そう言われた声の方を俺は見つめる。

「飴ちゃんの部屋どこ？先に行ってる」

恋は、その声の主に気を遣って話す。

「703。これ、家の鍵だから」

「わかった」

鍵を渡すと恋は、先に部屋に上がって行った。

恋がいなくなるのを見届けて、すぐに、パーカーの帽子を目深に被った男が、俺に近づいて来る。

「飴ちゃん、何で？」

近づいてきた男からは、酒と煙草のニオイが漂っていて臭い。

「ちょっと話そうか」

俺は、男を近くの公園に連れて行く。

公園内の自動販売機で、コーヒーを二つ買って男に一つ差し出した。

「はい」

コーヒーを渡すと男は、パーカーの帽子をゆっくりとおろした。

男の頬を涙が濡らし、キラキラと反射している。

「飴ちゃん、まだ俺と別れて一日しか経ってないのに女出来たの？あーー、それとも最初からいた感じ？彼女可愛い子だったな。俺にアンアン言わせながらあっちにもアンアン言わせてた感じ？」

俺は、美麗を見つめていた。

綺麗な顔をしていながらよくそんな下品な言葉を話すと感心する。

「すごい、言い方するな」

俺の言葉に、美麗は俺を睨み付ける。

「何が言いたいんだ？」

俺は、少し苛立ってコーヒーを飲む。

「帰ってくるのわかっててわざとやってんだろ？」

美麗は、俺の胸ぐらを掴んでくる。

「酔ってんのか？酔っぱらいはすぐに手を出す」

俺は、美麗の手を掴んで退ける。

「あんたに抱かれたら、みんなあんたの虜になるよね。そんだけ立派なものとテクニックあるってわかって、俺を抱いたんだよね？」

美麗は、俺の下半身に触《ふ》れようとする。

「触《さわ》るな。最初に抱いてくれと言ってきたのは美麗《おまえ》だろ」

俺は、美麗の顔を睨み付けながら言う。

本当は、今すぐ美麗を抱きしめてやりたくて……。

本当は、美麗の涙を拭ってやりたくて……。

俺の人生を幸せに咲かせたのは、紛れもなくこの美麗《おとこ》なのがわかっている。

だけど、俺はその気持ちがバレないように取り繕うのに必死だった。

「飴ちゃんは、抱いてって言われたら簡単に誰でも抱くの？」

美麗は、悲しそうに眉を寄せて俺に尋ねてくる。

「抱くよ。男でも、女でも、何だって」

「何でだよ。俺を愛してるから抱いてたんじゃないのかよ」

「お前も、氷室《あいつ》に相手にされないから俺を利用してただけだろ？」　　

「違うよ。俺は、あのアプリの声優さんが大好きだったんだよ」

美麗の目から涙がポタポタと落ちる。

「その人が、飴ちゃんだってかー子さんが教えてくれて。俺、ずっと会いたくて」

「おべっかも、そこまで出来たらたいしたもんだな。俳優なんだから、嘘でも泣けるよな」

俺は、わざと冷ややかに笑って言った。

美麗は、知らないだろうけど……。

俺は、演技が上手いんだ。

(この声を担当してなかったら、雨宮君に決めてたよ。自然に演技できて本当に素晴らしいよ)

沢山のオーディションを受ける度に、褒められてきたんだ。

「飴ちゃん、酷いよ」

美麗は、俺を抱き締めてくる。

「悪いけど、俺、彼女に男《こっち》もいけるって気づかれたくないんだわ。結婚したいぐらい真剣なわけ。大人だから、わかるよな？」

「飴ちゃん、何でそんな事言うの？」

美麗は、泣きながら俺から離れる。

「話しそれだけなら、帰るよ。今から、朝までさ」

「抱くんだ。俺にしたみたいに、あの子を愛して。アンアン言わせて中に出して、子供《ガキ》作るんだろうよ？」

さっきから、美麗は卑猥な言葉ばかりを言ってくる。

俺は、そんな美麗にこいつは何を言ってる？って目を向けた。

「卑猥な言い方するな。よく、そんな綺麗な顔で、次から次へと下品な言葉が思いつく」

馬鹿にしたように、呆れたように、俺は鼻でフッと笑う。

「当たり前だ。あんたを前にしたら、こんな言葉が次々出てくる。俺の中に出せよ。あんたのいれろよ」

美麗は、俺への苛立ちが我慢出来ないのか、また俺の胸ぐらを掴んでくる。

「だせー真似してんなよ。たった5年、俺を玩具《もの》にできたからって調子に乗ってんじゃねーーよ。お前の中に出したところで子供《ガキ》なんかできねーーだろ？帰って、氷室《あいつ》でも想像しながら一人でしろよ。じゃあな」

俺は、美麗の手を振り払う。

「飴ちゃん。何で…」

膝から崩れ落ちた美麗を見ながら、俺は公園を去る。

下品で最低な男《やろう》は、俺だよ。

美麗、俺を嫌いになってお前はどんどん上にいけ。

お前は、俺の大好きな先輩になれる要素がある。

だから、頑張れ。

俺は、ずっとずっとお前を応援してるから……。

俺は泣きながら、歩き出す。