平穏のち
2.
「あー‥‥」
初配信を終えて、丸一日
私は絶賛、ソファに寝転がり黄昏れ中だ
というのも、私が勤めている『箱』であるsolar system galaxy live。略して(?)サンライには初配信でホラゲーをやるという悪しき伝統があるからだ
私は怖いものは絶対に無理だと言ったのに伝統だからと無理矢理、セッティングされてしまったのである。そのおかげで昨夜はよく眠れず(そもそも昨日だってよく眠れなかったのに)こうして二日酔いのごとくのびているというわけである
おのれ、マネージャー、愚弟。許すまじ
まぁ、愚弟もなんやかんや言って強制参加させてやったのでざまあ見ろと言う気持ちとクソがと言う気持ちは半々である
いつか絶対、マネージャーも道連れにしてやる
ホラゲーの恐怖を味わうといいのだ。はっはっは
ゑ?
悲劇の元凶となった0期生は恨まないのかって?
あー、どうだろーなー
わかんねーわー。会ったことねーし
パイセンも勝手に伝統にされっちゃって戸惑ってんじゃないの?
マ、会ってから考えますわ。うん(やさぐれモード)
ピロン
と思ってたら、通知
暇だったので秒でスマホを手に取る
ん? 通知? こんな時間に? 誰からだろ‥‥‥‥
『奏山 宙』
は?
「え? 悲劇の元凶ォ~~~~!!」
・・・・・・・
姉がお空のどこかで絶叫していたころ
「あ?」
なんか雪菜が叫んだ声みたいなんが聞こえたな
幻聴かな。でもマジだったらウケる。
昨夜はやってくれたからなァ~
今思い出しても、ムカムカイライラするわあ。勝手に巻き込むんじゃねえよッ!!
フン ざまあ味噌カツ
「あ、‥‥味噌カツ食いてえ」
口に出したら更に食べたくなった
お腹空いたなー
昨日はよく寝れなかったから、寝坊したし、そのせいで遅刻ギリギリになったしで、ツイてねえわ‥‥
その点、あれは今日、休みらしい。くそ
良いよなー、大学生は
オレも早く大学生になりてー。受験めんどいけど
「漣。‥‥‥漣」
「‥‥‥」
‥‥次の配信、どーすっかなー
まだゲームの配信、続いてるんだけどそろそろ飽きてきた
でも、あれと違ってよくアイデアを練ってるオレはあれに比べたら、超偉いよなー
あいつは指示待ち人間だし、めんどくさがり屋だし、バカでアホだし。大学生だし
その点、オレはしっかり手に職を付けてバッチリ稼いでいる偉すぎる高校生
趣味を職に出来る優秀な奴だ
あれとは違う
「漣ッ!!」
「! うあぁいッ!!」
なんぞ、ボーっとしていたら先生がよんでいたらしい
‥‥くすくす笑われてらー
誰か教えてくれたっていいじゃないか!!
心の中で悶々としていると、よまれたのかギンと先生ににらまれた
こえー
「あー、すんません。ボーっとしてました」
「‥‥いいだろう」
やった、見逃してくれるみたい。ラッキー
「代わりにこの問題解いてみろ」
「‥‥‥」 スン
と、思ってた時がオレにもありました
つか、代わりにって何だよ! 代わりにって!!
「返事」
「‥‥うっす」
また、くすくすと周りから笑い声が漏れる
くそー!!
皆してオレを笑い者にしやがってー。いいぜ!? 存分に笑えよ、オラ!
その分、オレが笑い返してやらぁ~!
「フフン!」
自信満々で答えを黒板に書く
「‥‥問題が違う」
「‥‥‥」
「もういい。席に戻れ」
どうやら、盛大に問題が間違っていたらしい
トボトボ、席に戻る
そしてまた笑いに包まれ、机に突っ伏す
おーおー、存分に笑いやがれクソッ
あー、ダメだこりゃ、今日は特段についてねえ
せめて、味噌カツ定食、食って帰ろう。うんそうしよ
「(南無南無‥‥)」
秋人は一度も祈ったことなどないお空に今日が良い日でありますように‥‥‥いや、今日が駄目ならせめて明日は‥‥と祈るのであった
家に帰ったら、爆弾が待ち構えているとも露知らず
「漣くんってかっこいいのに、あれだよねー」
「わかるー。せっかくイケメンなのにー」
「うんうん。あれだよねー」
「そー。ちょっとバカっぽいって言うか」
「あれで全部台無し」
「えー、私はあれが良いけどなー」
「「え、ウソ!」」
っていう議論が学校で日々繰り広げられているとかいないとか