5 すんなりいかない九回裏
その後の八回裏の鉄壁高校の攻撃も碇は三者凡退に抑え、
九回表の張高の攻撃を、立ち直った押道が三者凡退に抑えた。
そして迎えた九回裏。
スコアは五対四で張高が一点のリード。
ここで鉄壁高校を〇点に抑えれば俺達の勝利。
が、そう簡単に事は運ばす、
先頭打者の六番鳥山がショートへの内安打で出塁すると、
次の七番鎌石がセンター前へのポテンヒット。
次の八番夕張がキッチリ送りバントを決めて、
状況はワンナウト二、三塁。
外野の頭を抜かれたら逆転サヨナラ負けというピンチになってしもうた。
今日の碇の調子ならこのまま最後まで行けると思うたけど、
相手も碇の速い球に対応するため、
コンパクトなスイングでしっかり当てにきている。
さすがは毎年ベスト一六以上に残る実力校。
そう簡単に勝たせてはくれへんか。
泣いても笑っても、ここが最大の山場や。
俺はベンチの遠川監督を見て指示を仰ぐ。
監督の指示は、
内野も外野も絶対に三塁ランナーをホームに返さない為の前進守備。
この試合も延長がないので二塁ランナーを返さなければ負けにはならんけど、
それではこの試合を勝ちきる事はでけへん。
厳しい大阪大会を勝ち抜く勝負根性を鍛える為にも、
ここは強気で一点を守りに行くという事やな。
俺は張高の守備陣に前進守備のサインを送る。
何が何でもこの一点を守り切るんや。




