7 えげつない粘り
そして反撃ののろしを上げる六回の張高の攻撃が始まった!
ペコッ。
先頭バッターの山下先輩は、ポテポテのショートゴロに倒れました。
ポシャッ。
次の手古山先輩は、何もできずにキャッチャーフライに終わりました。
・・・・・・ドンマイドンマイ!
野球はツーアウトからや!
次のバッターはセカンドの赤島先輩やけど、
ここで遠川監督がベンチから出て、代打小暮と告げた。
小暮はヘルメットをかぶってバットを持ち、
ゆっくりと打席に向かって行く。
そんな小暮に俺は声をかけた。
「小暮ぇっ!とにかく粘って、何としてでも塁に出ろよぉっ!」
すると小暮は立ち止まって振り返り、不敵な笑みを浮かべてこう言った。
「ああ、相手がうんざりするほど粘って塁に出てやるよ」
そして右の打席に入る小暮。
その言葉通り、小暮はその打席で粘りに粘った。
フルカウントになってからの外角のチェンジアップをファールにし、
次の内角のカーブもファールにし、ストレートもファールにして、
一ヶ崎のありとあらゆるコースのあらゆる球種を全てファールにした。
かれこれこの打席だけで十球以上は投げさせている。
文字通りもう投げる所がないという状態や。
鹿島さんのデータよると、一ヶ崎は一試合を完投する事はほとんどなく、
大体六回か七回でリリーフの押道に交代する。
おそらくこの試合もそうなんやろうけど、
スタミナが残り少ない所でこれだけ粘られて、一ヶ崎も相当消耗している事やろう。
そしてそこからさらに三球粘ってからの十五球目。
「ボール!フォアボール!」
粘り強く投げ込んでいた一ヶ崎がついに根負けし、
小暮がフォーアボールで一塁に出た。
これはヒットを打たれて出塁されるより、体力的にも精神的にも応えたはずや。
さすがは粘り強いバッティングが持ち味の小暮。
敵に回すととてつもなく厄介やけど、味方に居るとこれほど心強い奴は居ない。




