3 この物語で一番大事な所
そう。しかも優しくて可愛くて俺の幼なじみのマネージャー。
まあつまるところ伊予美の事や。
プロローグでも言うたかもしれんけど、
俺は伊予美の一言がキッカケで野球を始め、
伊予美に振り向いてもらう為に甲子園を目指して日々頑張っている。
でもできる事なら、伊予美を俺の居るチームのマネージャーとして、
甲子園に連れて行きたい。
そして甲子園のベンチに入って、俺の事を応援して欲しい。
その為には伊予美にこの野球部のマネージャーになってもらわんとあかんのやけど、
俺がこの部に入って約一カ月経つ中、
俺は未だに、そのお願いを伊予美本人にできないでいた。
だって、何か恥ずかしいんやもん!
君を甲子園に連れて行きたいからウチのマネージャーになってくださいなんて、
恥ずかしくてとても言えないやないの!
いや、別にマネージャーになってくださいとだけ言えば済む話なんやろけど、
それが何より難しいんや!
野球の試合でトリプルプレーを完成させるくらい難しいんや!
ちなみに、現在この野球部のマネージャー的な仕事はどうしているのかと言うと、
顧問の下積タケル先生が積極的にそれを担ってくれている。
「皆練習お疲れ様!はい、これタオル♪」
と言って、練習を終えた俺達に真っ白に洗濯されたタオルを渡してくれたり、
「家でレモンの蜂蜜漬けを作って来たんだ。これを食べて放課後の練習も頑張ってね!」
と言って、自作のレモンの蜂蜜漬けを配ってくれたり、
「汚れたユニフォームは僕が預かるよ!ピカピカに洗濯しておくからね!」
と言って、俺達のユニフォームの洗濯までしてくれたりと、
本業のマネージャーに負けず劣らずの働きぶりを見せてくれている。
この人は野球の指導に関しては素人やけど、
この部を思う気持ちは誰にも負けない。
おまけにゾッコン片思い中の相手である遠川さんがウチの監督になってくれて、
こうして毎日会える事もあり、下積先生は俄然張り切ってくれているのやった。
まあその熱意と働きは大変ありがたいのやけども、それは違うんや!
そういう事は、やっぱり可愛い女の子にやって欲しいんや!
要するに伊予美にやって欲しいんや!
とにかく、このままではラチがあかん。
遠川監督も、キャプテンを始めとした先輩達も、
このマネージャー問題を何とも思ってないみたいやし、碇と小暮もそうやろう。
っていうか、伊予美にマネージャーになって欲しいのは、
俺の超個人的な都合やからな。
ここはやはり、俺自身が行動を起こすしかないか・・・・・・。